千年待った騎士に跪かれた地味な私、実は聖女の生まれ変わりだったので溺愛されることになりました
「お迎えに上がりました、我が主」
——は?
大学の正門前。夕暮れの茜色に染まるキャンパスで、私は目の前の光景が理解できずに固まっていた。
銀色の髪が風に揺れる。まるで月光を紡いだような、この世のものとは思えない美しさ。身長は百九十センチを優に超えているだろう。黒いコートに身を包んだその男性は、私の前に跪いていた。
片膝をついて。まるで、中世の騎士のように。
「あ、あの……」
周囲の視線が痛い。いや、痛いなんてものじゃない。
「ねえ、あれ誰?」「やばくない?超イケメン」「え、柊さん?あの地味な子に?」
ひそひそ話が耳に刺さる。そう、私は柊咲良。学内で「存在感がない」「話したことあったっけ?」と言われる、どこにでもいる——いや、いてもいなくても変わらない、そんな女子大生だ。
「お顔を上げてください、我が主。千年……千年待ちました」
その声が震えていることに気づいて、心臓が跳ねた。
彼が顔を上げる。深い紫紺の瞳が、まっすぐに私を捉えた。
——泣いている。
この、彫刻のように完璧な美貌の男性が。頬を伝う涙を拭おうともせず、ただ私を見つめている。
「やっと……やっとお会いできた」
「あ、あの、人違いじゃ」
「違いません」
遮られた。静かな、けれど絶対的な確信を持った声で。
「貴女です。貴女だけです。この千年間、私が探し続けたのは」
千年?
頭がついていかない。でも、彼の瞳があまりにも真剣で、あまりにも切なくて——なぜか、胸の奥がきゅっと痛んだ。
知らない人のはずなのに。
「私の名はレオンハルト・ヴァイスハイト。貴女に仕える騎士です」
ざわめきが大きくなる。スマホを向ける音がする。明日には学内中の噂になっているだろう。
逃げたい。消えてしまいたい。いつもの私なら、そう思うはずなのに。
「……どうして、私なんですか」
気づけば、そう問いかけていた。
彼は——レオンハルトは、その問いに、花が綻ぶように微笑んだ。冷たい美貌が一瞬で蕩けるように柔らかくなる。
「貴女以外に、誰がいるというのですか」
その言葉が、私の心の奥深く、誰にも触れられたことのない場所に、そっと触れた。
——ああ、この人は、本気だ。
理屈ではなく、直感で理解した。
そして同時に、こうも思った。
こんな私を「主」と呼ぶこの人は、きっと何かを間違えている、と。
***
「……なぜ、私のアパートにいるんですか」
翌朝。六畳一間の狭い部屋で、私は頭を抱えていた。
「お傍を離れるわけにはいきません」
当然のように答えるレオンハルトは、床に正座していた。あの長身を折り曲げて、まるで家来が主君に仕えるように。
「いや、でも、これは……色々と問題が……」
「問題?」
小首を傾げる仕草すら美しい。というか、この人、本当に人間なのだろうか。昨夜、仕方なく泊めてしまったのだけれど(だって行く場所がないと言うから)、一晩経っても夢じゃなかった。
「貴女は聖女セラフィーナの生まれ変わりです。千年前、魔王を封じるために命を捧げた、世界で最も尊い方の」
聖女。魔王。
……漫画の読みすぎじゃないだろうか、この人。
「信じられないのは当然です。ですが、証拠はあります」
「証拠?」
「……失礼します」
そう言って、彼の指が私の鎖骨に伸びた。
「ひゃっ!?」
反射的に後ずさる。でも彼は追ってこず、ただ私の右の鎖骨あたりを指差していた。
「そこに、月のような痣があるはずです」
心臓が止まりそうになった。
「……なんで、知って」
「聖女の証です。千年前も、同じ場所にありました」
誰にも見せたことがない。親にも、姉にも。右の鎖骨にある、淡い月の形の痣。
ずっと不思議に思っていた。生まれつきあるそれが、なぜか「隠さなければならない」気がして。
「私は貴女を守れなかった」
突然、彼の声が震えた。
「千年前、貴女が命を捧げる時、私は傍にいながら何もできなかった」
紫紺の瞳が、苦痛に歪む。千年分の後悔を、たった今味わっているような表情。
「だから誓ったのです。必ず貴女を見つけ出し、今度こそ守り抜くと。そのために、不死の呪いを受け入れた」
不死。
千年。
そのために。
「……私なんかのために、そんな長い時間を」
口をついて出た言葉に、彼が目を見開いた。
「『私なんか』?」
「え、いや、だって、私は……本当に何の取り柄もなくて、地味で、姉みたいに優秀じゃなくて」
「咲良様」
名前を呼ばれて、言葉が止まる。
初めて聞く声音だった。怒りではない。悲しみでもない。何か、もっと深くて、強い感情。
「貴女を『私なんか』と言う者がいるのですか」
「……いえ、私自身が」
「それを言わせた者がいる」
断言だった。
「……そうですね」
認めたら、なぜか涙が出そうになった。慌てて顔を背ける。
「長くはありませんでした」
「え?」
「千年は。貴女に会えるまでの、ほんの一瞬です」
振り返ると、彼は跪いていた。また、あの騎士の礼。
「貴女を傷つけた者の名を教えてください。この私が、必ず」
「いえ、そういうのは……!」
慌てて手を振る。でも、胸の奥が温かいのを感じていた。
おかしい。こんな荒唐無稽な話、信じられるわけがないのに。
——なのに、どうして私は、この人の言葉を嘘だと思えないのだろう。
***
「——へえ、咲良にそんな人が」
最悪のタイミングで、姉が来た。
日曜の昼下がり。買い物から戻ると、アパートの前に見慣れたBMWが停まっていた。嫌な予感は的中し、部屋の前には咲耶姉さんが立っていた。
完璧なヘアメイク。ハイブランドのワンピース。切れ長の目が、部屋の中の——レオンハルトを、値踏みするように見つめている。
「なかなかいい男じゃない。どこで引っかけてきたの?」
「引っかけて……ません」
「ふうん?」
姉が一歩、部屋に入る。その瞬間、レオンハルトが私の前に立った。庇うように。
「この方は?」
「……私の姉です」
「姉君ですか」
レオンハルトの声に、微かな緊張が混じった。なぜだろう。彼は姉を知らないはずなのに。
「初めまして。柊咲耶です」
姉が手を差し出す。社交的な笑顔。でも、その目は笑っていない。
レオンハルトはその手を無視した。
「……あら、失礼な人」
「失礼ですか。咲良様を傷つけた者に、礼を払う理由がありません」
空気が、凍った。
「レオンハルト!」
慌てて彼の腕を引く。でも彼は微動だにしない。
「何を言われたか知らないけど」姉の声が冷たくなる。「あなた、勘違いしてない? 私は妹を可愛がってきたの。できの悪い妹を、私が何度フォローしてきたか」
「——っ」
息が詰まる。いつもの言葉。私を押し潰す言葉。
「違います」
レオンハルトの声は、静かだった。
「貴女が咲良様にしてきたことは、支配です。愛ではない」
「……は?」
「咲良様の瞳を見ました。千年前と同じはずのその瞳が、曇っている。光を失っている」
彼が振り返る。私を見る。その紫紺の瞳に、私が映っている。
「この方は、ご自分を『私なんか』と仰いました。この世で最も尊い魂が、なぜそのような言葉を」
「咲良は昔からネガティブでね。私がいつも励ましてあげてたの」
「励まし?『あなたには無理でしょう、私がやってあげる』——これが励ましですか」
なぜ知っているの。私がずっと言われ続けてきた言葉を。
「貴女の笑顔は作り物だ」
レオンハルトが、姉に一歩近づく。
「本当に妹君を愛しているなら、なぜその瞳に嫉妬が滲んでいるのですか」
「——黙りなさい」
姉の声が、初めて荒くなった。
「何も知らないくせに……! 私がどれだけ、咲良のせいで……」
言いかけて、姉は口を閉じた。
「……いいわ。この話は終わり」
踵を返す。でもドアの前で、振り返った。
「ねえ、咲良」
「……何」
「その人、いつかあなたに飽きるわよ」
淡々とした声。でも、その目は笑っていた。
「あなたみたいな地味な女、すぐに捨てられる。そうしたら——私が慰めてあげる。いつもみたいにね」
扉が閉まる。
静寂が落ちた。
「……咲良様」
「大丈夫、です。いつものことですから」
笑おうとした。でも、声が震えていた。
「いつもの……?」
「姉は、ああいう人で……私より優秀で、綺麗で、だから私なんかが横にいると」
「咲良様」
強く名前を呼ばれて、言葉が止まる。
気づいたら、彼が跪いていた。私の手を取って。
「貴女は、この世界で最も美しい」
「え……」
「髪の一筋、睫毛の一本に至るまで、私にとっては宝石よりも尊い。その瞳の色は、千年前と変わらず私の世界を照らす光です」
「で、でも、私は姉みたいに——」
「姉君のことは関係ない」
遮られた。
「誰と比べる必要もない。貴女は貴女だ。それだけで、私には十分すぎる」
……ああ。
涙が、止まらなかった。
ずっと言ってほしかった言葉を、この人は知っている。
「申し訳ありません。泣かせるつもりは」
「違う、の。違うの、これは……」
うまく説明できない。ただ、胸の奥で何かが溶けていくのを感じていた。ずっと凍りついていた何かが。
「……本当に、私でいいんですか?」
「貴女がいい」
即答だった。
「貴女だけがいい。千年かけて、それだけは変わらなかった」
この人を、信じてもいいのだろうか。
まだわからない。でも——
「……ありがとう、ございます」
初めて、素直にそう言えた気がした。
***
それから数週間。
私の日常は、少しずつ変わっていった。
レオンハルトは相変わらず私のアパートに住み着いて(というか、追い出せなかった)、大学にも毎日ついてくる。最初は周囲の視線が痛かったけれど、不思議と慣れていった。
「柊さん、最近なんか変わった?」
図書館の片隅で本を読んでいた私に、橘蒼真くんが話しかけてきた。
「え……そう、ですか?」
「うん。なんか、雰囲気が……明るくなった?」
橘くん。同じ学部の、いわゆる「陽キャ」。なぜか私みたいな地味な人間に、よく話しかけてくる。
「柊さんはさ、幸せになっていいんだよ」
「……え」
「誰に何言われたか知らないけど。柊さんは、愛される価値がある人だよ」
心臓が、ぎゅっとなった。
レオンハルトと、同じことを言っている。
「——咲良様」
いつの間にか、レオンハルトが図書館に入ってきていた。長身が本棚の間から現れる。
「お迎えに参りました」
「あ、はい……」
立ち上がろうとして、気づいた。レオンハルトの視線が、橘くんに向いている。
冷たい。凍てつくような眼差し。
「……この方は?」
「同じ学部の橘くんです。友達、みたいな……」
「友達」
復唱する声に、棘がある。
「彼が貴女を見る目に、親愛以上のものを感じたもので」
「は?」
「彼は、貴女に好意を抱いています」
「そんなこと——」
「私にはわかります。同じ目をしていたから」
「……レオンハルト」
「だから、あの男が嫌いです」
子どものように拗ねた声。さっきまでの威圧感が嘘のよう。
「……嫉妬、ですか」
「……そうかもしれません」
ふいに、笑いが込み上げてきた。
「ふふ……」
「咲良様?」
「すみません、なんか……嬉しくて」
「嬉しい?」
「私なんかに、嫉妬してくれるんだって」
言ってから、しまったと思った。また「私なんか」って言ってしまった。
「咲良様」
レオンハルトが足を止めた。そして、私の目をまっすぐに見た。
「『私なんか』と仰るのは、今日で最後にしてください」
「え……」
「貴女が自分を低く見るたびに、私は千年分の後悔を感じます」
「後悔……?」
「貴女が自分を愛せるように、千年前から傍にいるべきだった。そうすれば、貴女はそんな言葉を使わなかったはずだ」
「……」
「だから——今からでも、傍にいさせてください。貴女が自分を愛せるようになるまで」
その言葉が、胸に染み込んでいく。
「……努力、します」
「十分です」
彼が、微笑んだ。
ああ——この人といると、私は少しずつ変われる気がする。
***
その夜。
悪夢で目が覚めた。
誰かに手を伸ばしていた。届かなかった。その絶望だけが、胸に残っている。
「咲良様……!」
暗闘の中、声がした。レオンハルトだ。彼は床に布団を敷いて、起き上がっていた。
「大丈夫です。悪い夢を見ただけで……」
「——泣いておられる」
言われて、頬に触れる。濡れていた。
「千年前も、そうでした」
「え……?」
「貴女は——セラフィーナ様は、時折悪夢に魘されていた。そのたびに私は、傍で手を握っていた」
レオンハルトが立ち上がる。月明かりの中、銀髪が淡く光る。
「お傍に行っても?」
「……はい」
小さく頷く。彼がベッドの端に腰掛けた。そして、そっと私の手を取った。
大きな手。少しだけ、硬い。千年分の剣を握ってきた手なのだろうか。
「私は、何も覚えていないのに」
「構いません」
「前世の私を、好きなだけじゃないんですか」
「——違う」
強い声。彼が私を見た。
「千年の間、幾度も貴女の魂を探した。何度も『違う』魂に出会った。でも、今の貴女を見つけた瞬間——わかった」
「何が……」
「私が愛しているのは、セラフィーナ様ではない。貴女だ」
心臓が、跳ねた。
「前世の記憶があろうとなかろうと、関係ない。貴女という魂を、私は愛している。千年前も。今も。これからも」
「……私は、愛される価値なんて——」
「ある」
遮られた。
「貴女にはある。貴女が知らないだけで、貴女は千年前も今も、この世界で最も優しく、最も強い魂を持っている」
「強い……? 私が……?」
「人は、弱い者を踏みにじることはできる。でも、それでも誰かを想い続けることは、誰にでもできることじゃない」
彼がそっと、私の頬に触れた。涙を拭うように。
「貴女は自分を『価値がない』と言うけれど、私には見える。傷ついても、誰かを恨まない貴女の強さが」
「……」
「その強さを、私は千年前から愛していた」
涙が、また溢れた。でも今度は、悲しくて泣いているのではなかった。
「ずるい、です」
「何がでしょう」
「そんなこと言われたら……信じたくなる」
「信じてください」
彼が、微笑んだ。
「私は、貴女のために千年を生きた。この先も、貴女のためだけに生きる」
その言葉を、否定できなかった。したくなかった。
——この気持ちは、何だろう。
胸の奥で、何かが芽吹く音がした気がした。
***
ある夜、鮮明な夢を見た。
——白い法衣。手には、光る杖。
——迫りくる黒い影。魔王の姿。
——そして、背後から聞こえる声。
『セラフィーナ様……!』
『来ないで、レオンハルト』
振り返らない。振り返ったら、決意が揺らぐから。
『レオンハルト——来世で、また会いましょう』
『セラフィーナ……!』
『今度は、普通の女の子として——あなたに、愛されたい』
光が、弾けた。
***
「——っ!」
目が覚めた。体中に汗をかいていた。
「咲良様……!」
レオンハルトが、傍にいた。私の手を握っている。
「私……今……」
「夢を見ていたようです。うなされて」
「……思い出した」
「——え」
「千年前のこと。あなたと私が、どう別れたか」
声が、震えていた。
「私は——あなたを置いて、死んだんだ」
レオンハルトの目が、見開かれた。
「思い出した、のですか……」
「ごめんなさい」
「なぜ、謝るのですか」
「だって、あなたを一人にした。千年も——」
「咲良様」
レオンハルトが、私を抱きしめた。
「謝らないでください。貴女は、世界を救ったのだ」
「でも——」
「私が貴女を追いかけたのは、私の意志です。貴女のせいではない」
「レオンハルト……」
「だから——謝らないで。お願いです」
彼の声も、震えていた。
千年分の想いが、この腕の中にある。
「……私、あなたを愛してる」
口に出したのは、初めてだった。
「前世の私も、今の私も。ずっと——あなたを愛してた」
レオンハルトの体が、強張った。
「咲良……」
初めて、『様』をつけずに呼ばれた。
「私も、貴女を愛している。千年前から——ずっと」
彼の唇が、私の唇に触れた。
柔らかくて、温かくて。千年分の想いが、流れ込んでくる。
——ああ、私は愛されていい。
今、初めて、心からそう思えた。
***
——三ヶ月後。
「咲良、準備できた?」
「うん、もう少し」
姉の声に返事をしながら、鏡の前でイヤリングをつける。
今日は、姉の会社のパーティー。姉に「一緒に来て」と誘われたのだ。
三ヶ月前には、考えられなかったこと。
あの後、姉は泣きながら謝ってくれた。本当は、歪んだ家庭環境の中で、姉も苦しんでいたのだと——初めて知った。
「似合ってるよ」
姉が、微笑んだ。以前の、作り物みたいな笑顔じゃない。
「本当? ありがとう」
「レオンハルトさんも、喜ぶんじゃない?」
「も、もう……」
顔が熱くなる。
あれから、レオンハルトは「恋人」になった。正式に。
魔王が完全に消滅したことで、不死の呪いも解けたらしい。彼も、普通の人間として生きられるようになった。
***
パーティー会場。
「咲良様」
人混みの中、レオンハルトが私を見つけた。
黒いスーツを着た彼は、相変わらず人目を引く美しさだった。
「……綺麗です」
「え、あ、ありがとう……」
照れる。三ヶ月経っても、慣れない。
「踊りませんか」
「私、下手だけど……」
「構いません。貴女と踊れるなら」
手を取られ、ダンスフロアへ。
「何を考えていますか」
「……千年前のことを」
「そうですか。私も、思い出していました」
「何を?」
「千年前、貴女と踊った時のことを。あの時——言えなかった言葉を」
「言えなかった言葉……?」
「——愛しています」
心臓が、跳ねた。
「千年前は、言えなかった。身分が違うと、諦めていたから」
「……」
「でも今は、言える。何度でも」
「レオンハルト……」
「貴女を愛しています。前世の貴女も、今の貴女も——貴女という魂そのものを」
涙が、滲んだ。
「私も……愛してる」
彼が、私を引き寄せた。周りの視線なんて、関係なかった。
「これからも——傍にいてください」
「ずっと。離さない」
口づけを交わす。温かくて、幸せで。
——私は、愛されていい。
今は、心からそう思える。
「千年、待っていてくれてありがとう」
「……礼を言うのは、私の方です」
「え?」
「貴女が生きていてくれたこと。私を愛してくれたこと。すべてに——感謝しています」
「レオンハルト……」
「これからの千年——いいえ、永遠に。貴女を愛し続けます」
「大袈裟だよ……人間の寿命は、そんなに長くないのに」
「構いません」
彼が、微笑んだ。千年分の孤独を超えた、穏やかな笑顔。
「貴女と過ごす一日は、千年よりも尊い」
涙が、流れた。でも、悲しくない。嬉しくて、泣いている。
「——私も」
「咲良……」
「あなたと過ごすこれからの日々が、きっと——一番幸せ」
彼の腕の中で、そう誓った。
千年越しの再会は、二人に「永遠」をもたらした。
今度こそ——離さない。
今度こそ——幸せになる。
二人で、一緒に。
——Fin.




