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千年待った騎士に跪かれた地味な私、実は聖女の生まれ変わりだったので溺愛されることになりました

作者: uta
掲載日:2026/05/15

「お迎えに上がりました、我が主」


——は?


大学の正門前。夕暮れの茜色に染まるキャンパスで、私は目の前の光景が理解できずに固まっていた。


銀色の髪が風に揺れる。まるで月光を紡いだような、この世のものとは思えない美しさ。身長は百九十センチを優に超えているだろう。黒いコートに身を包んだその男性は、私の前に跪いていた。


片膝をついて。まるで、中世の騎士のように。


「あ、あの……」


周囲の視線が痛い。いや、痛いなんてものじゃない。


「ねえ、あれ誰?」「やばくない?超イケメン」「え、柊さん?あの地味な子に?」


ひそひそ話が耳に刺さる。そう、私は柊咲良。学内で「存在感がない」「話したことあったっけ?」と言われる、どこにでもいる——いや、いてもいなくても変わらない、そんな女子大生だ。


「お顔を上げてください、我が主。千年……千年待ちました」


その声が震えていることに気づいて、心臓が跳ねた。


彼が顔を上げる。深い紫紺の瞳が、まっすぐに私を捉えた。


——泣いている。


この、彫刻のように完璧な美貌の男性が。頬を伝う涙を拭おうともせず、ただ私を見つめている。


「やっと……やっとお会いできた」


「あ、あの、人違いじゃ」


「違いません」


遮られた。静かな、けれど絶対的な確信を持った声で。


「貴女です。貴女だけです。この千年間、私が探し続けたのは」


千年?


頭がついていかない。でも、彼の瞳があまりにも真剣で、あまりにも切なくて——なぜか、胸の奥がきゅっと痛んだ。


知らない人のはずなのに。


「私の名はレオンハルト・ヴァイスハイト。貴女に仕える騎士です」


ざわめきが大きくなる。スマホを向ける音がする。明日には学内中の噂になっているだろう。


逃げたい。消えてしまいたい。いつもの私なら、そう思うはずなのに。


「……どうして、私なんですか」


気づけば、そう問いかけていた。


彼は——レオンハルトは、その問いに、花が綻ぶように微笑んだ。冷たい美貌が一瞬で蕩けるように柔らかくなる。


「貴女以外に、誰がいるというのですか」


その言葉が、私の心の奥深く、誰にも触れられたことのない場所に、そっと触れた。


——ああ、この人は、本気だ。


理屈ではなく、直感で理解した。


そして同時に、こうも思った。


こんな私を「主」と呼ぶこの人は、きっと何かを間違えている、と。



***



「……なぜ、私のアパートにいるんですか」


翌朝。六畳一間の狭い部屋で、私は頭を抱えていた。


「お傍を離れるわけにはいきません」


当然のように答えるレオンハルトは、床に正座していた。あの長身を折り曲げて、まるで家来が主君に仕えるように。


「いや、でも、これは……色々と問題が……」


「問題?」


小首を傾げる仕草すら美しい。というか、この人、本当に人間なのだろうか。昨夜、仕方なく泊めてしまったのだけれど(だって行く場所がないと言うから)、一晩経っても夢じゃなかった。


「貴女は聖女セラフィーナの生まれ変わりです。千年前、魔王を封じるために命を捧げた、世界で最も尊い方の」


聖女。魔王。


……漫画の読みすぎじゃないだろうか、この人。


「信じられないのは当然です。ですが、証拠はあります」


「証拠?」


「……失礼します」


そう言って、彼の指が私の鎖骨に伸びた。


「ひゃっ!?」


反射的に後ずさる。でも彼は追ってこず、ただ私の右の鎖骨あたりを指差していた。


「そこに、月のような痣があるはずです」


心臓が止まりそうになった。


「……なんで、知って」


「聖女の証です。千年前も、同じ場所にありました」


誰にも見せたことがない。親にも、姉にも。右の鎖骨にある、淡い月の形の痣。


ずっと不思議に思っていた。生まれつきあるそれが、なぜか「隠さなければならない」気がして。


「私は貴女を守れなかった」


突然、彼の声が震えた。


「千年前、貴女が命を捧げる時、私は傍にいながら何もできなかった」


紫紺の瞳が、苦痛に歪む。千年分の後悔を、たった今味わっているような表情。


「だから誓ったのです。必ず貴女を見つけ出し、今度こそ守り抜くと。そのために、不死の呪いを受け入れた」


不死。


千年。


そのために。


「……私なんかのために、そんな長い時間を」


口をついて出た言葉に、彼が目を見開いた。


「『私なんか』?」


「え、いや、だって、私は……本当に何の取り柄もなくて、地味で、姉みたいに優秀じゃなくて」


「咲良様」


名前を呼ばれて、言葉が止まる。


初めて聞く声音だった。怒りではない。悲しみでもない。何か、もっと深くて、強い感情。


「貴女を『私なんか』と言う者がいるのですか」


「……いえ、私自身が」


「それを言わせた者がいる」


断言だった。


「……そうですね」


認めたら、なぜか涙が出そうになった。慌てて顔を背ける。


「長くはありませんでした」


「え?」


「千年は。貴女に会えるまでの、ほんの一瞬です」


振り返ると、彼は跪いていた。また、あの騎士の礼。


「貴女を傷つけた者の名を教えてください。この私が、必ず」


「いえ、そういうのは……!」


慌てて手を振る。でも、胸の奥が温かいのを感じていた。


おかしい。こんな荒唐無稽な話、信じられるわけがないのに。


——なのに、どうして私は、この人の言葉を嘘だと思えないのだろう。



***



「——へえ、咲良にそんな人が」


最悪のタイミングで、姉が来た。


日曜の昼下がり。買い物から戻ると、アパートの前に見慣れたBMWが停まっていた。嫌な予感は的中し、部屋の前には咲耶姉さんが立っていた。


完璧なヘアメイク。ハイブランドのワンピース。切れ長の目が、部屋の中の——レオンハルトを、値踏みするように見つめている。


「なかなかいい男じゃない。どこで引っかけてきたの?」


「引っかけて……ません」


「ふうん?」


姉が一歩、部屋に入る。その瞬間、レオンハルトが私の前に立った。庇うように。


「この方は?」


「……私の姉です」


「姉君ですか」


レオンハルトの声に、微かな緊張が混じった。なぜだろう。彼は姉を知らないはずなのに。


「初めまして。柊咲耶です」


姉が手を差し出す。社交的な笑顔。でも、その目は笑っていない。


レオンハルトはその手を無視した。


「……あら、失礼な人」


「失礼ですか。咲良様を傷つけた者に、礼を払う理由がありません」


空気が、凍った。


「レオンハルト!」


慌てて彼の腕を引く。でも彼は微動だにしない。


「何を言われたか知らないけど」姉の声が冷たくなる。「あなた、勘違いしてない? 私は妹を可愛がってきたの。できの悪い妹を、私が何度フォローしてきたか」


「——っ」


息が詰まる。いつもの言葉。私を押し潰す言葉。


「違います」


レオンハルトの声は、静かだった。


「貴女が咲良様にしてきたことは、支配です。愛ではない」


「……は?」


「咲良様の瞳を見ました。千年前と同じはずのその瞳が、曇っている。光を失っている」


彼が振り返る。私を見る。その紫紺の瞳に、私が映っている。


「この方は、ご自分を『私なんか』と仰いました。この世で最も尊い魂が、なぜそのような言葉を」


「咲良は昔からネガティブでね。私がいつも励ましてあげてたの」


「励まし?『あなたには無理でしょう、私がやってあげる』——これが励ましですか」


なぜ知っているの。私がずっと言われ続けてきた言葉を。


「貴女の笑顔は作り物だ」


レオンハルトが、姉に一歩近づく。


「本当に妹君を愛しているなら、なぜその瞳に嫉妬が滲んでいるのですか」


「——黙りなさい」


姉の声が、初めて荒くなった。


「何も知らないくせに……! 私がどれだけ、咲良のせいで……」


言いかけて、姉は口を閉じた。


「……いいわ。この話は終わり」


踵を返す。でもドアの前で、振り返った。


「ねえ、咲良」


「……何」


「その人、いつかあなたに飽きるわよ」


淡々とした声。でも、その目は笑っていた。


「あなたみたいな地味な女、すぐに捨てられる。そうしたら——私が慰めてあげる。いつもみたいにね」


扉が閉まる。


静寂が落ちた。


「……咲良様」


「大丈夫、です。いつものことですから」


笑おうとした。でも、声が震えていた。


「いつもの……?」


「姉は、ああいう人で……私より優秀で、綺麗で、だから私なんかが横にいると」


「咲良様」


強く名前を呼ばれて、言葉が止まる。


気づいたら、彼が跪いていた。私の手を取って。


「貴女は、この世界で最も美しい」


「え……」


「髪の一筋、睫毛の一本に至るまで、私にとっては宝石よりも尊い。その瞳の色は、千年前と変わらず私の世界を照らす光です」


「で、でも、私は姉みたいに——」


「姉君のことは関係ない」


遮られた。


「誰と比べる必要もない。貴女は貴女だ。それだけで、私には十分すぎる」


……ああ。


涙が、止まらなかった。


ずっと言ってほしかった言葉を、この人は知っている。


「申し訳ありません。泣かせるつもりは」


「違う、の。違うの、これは……」


うまく説明できない。ただ、胸の奥で何かが溶けていくのを感じていた。ずっと凍りついていた何かが。


「……本当に、私でいいんですか?」


「貴女がいい」


即答だった。


「貴女だけがいい。千年かけて、それだけは変わらなかった」


この人を、信じてもいいのだろうか。


まだわからない。でも——


「……ありがとう、ございます」


初めて、素直にそう言えた気がした。



***



それから数週間。


私の日常は、少しずつ変わっていった。


レオンハルトは相変わらず私のアパートに住み着いて(というか、追い出せなかった)、大学にも毎日ついてくる。最初は周囲の視線が痛かったけれど、不思議と慣れていった。


「柊さん、最近なんか変わった?」


図書館の片隅で本を読んでいた私に、橘蒼真くんが話しかけてきた。


「え……そう、ですか?」


「うん。なんか、雰囲気が……明るくなった?」


橘くん。同じ学部の、いわゆる「陽キャ」。なぜか私みたいな地味な人間に、よく話しかけてくる。


「柊さんはさ、幸せになっていいんだよ」


「……え」


「誰に何言われたか知らないけど。柊さんは、愛される価値がある人だよ」


心臓が、ぎゅっとなった。


レオンハルトと、同じことを言っている。


「——咲良様」


いつの間にか、レオンハルトが図書館に入ってきていた。長身が本棚の間から現れる。


「お迎えに参りました」


「あ、はい……」


立ち上がろうとして、気づいた。レオンハルトの視線が、橘くんに向いている。


冷たい。凍てつくような眼差し。


「……この方は?」


「同じ学部の橘くんです。友達、みたいな……」


「友達」


復唱する声に、棘がある。


「彼が貴女を見る目に、親愛以上のものを感じたもので」


「は?」


「彼は、貴女に好意を抱いています」


「そんなこと——」


「私にはわかります。同じ目をしていたから」


「……レオンハルト」


「だから、あの男が嫌いです」


子どものように拗ねた声。さっきまでの威圧感が嘘のよう。


「……嫉妬、ですか」


「……そうかもしれません」


ふいに、笑いが込み上げてきた。


「ふふ……」


「咲良様?」


「すみません、なんか……嬉しくて」


「嬉しい?」


「私なんかに、嫉妬してくれるんだって」


言ってから、しまったと思った。また「私なんか」って言ってしまった。


「咲良様」


レオンハルトが足を止めた。そして、私の目をまっすぐに見た。


「『私なんか』と仰るのは、今日で最後にしてください」


「え……」


「貴女が自分を低く見るたびに、私は千年分の後悔を感じます」


「後悔……?」


「貴女が自分を愛せるように、千年前から傍にいるべきだった。そうすれば、貴女はそんな言葉を使わなかったはずだ」


「……」


「だから——今からでも、傍にいさせてください。貴女が自分を愛せるようになるまで」


その言葉が、胸に染み込んでいく。


「……努力、します」


「十分です」


彼が、微笑んだ。


ああ——この人といると、私は少しずつ変われる気がする。



***



その夜。


悪夢で目が覚めた。


誰かに手を伸ばしていた。届かなかった。その絶望だけが、胸に残っている。


「咲良様……!」


暗闘の中、声がした。レオンハルトだ。彼は床に布団を敷いて、起き上がっていた。


「大丈夫です。悪い夢を見ただけで……」


「——泣いておられる」


言われて、頬に触れる。濡れていた。


「千年前も、そうでした」


「え……?」


「貴女は——セラフィーナ様は、時折悪夢に魘されていた。そのたびに私は、傍で手を握っていた」


レオンハルトが立ち上がる。月明かりの中、銀髪が淡く光る。


「お傍に行っても?」


「……はい」


小さく頷く。彼がベッドの端に腰掛けた。そして、そっと私の手を取った。


大きな手。少しだけ、硬い。千年分の剣を握ってきた手なのだろうか。


「私は、何も覚えていないのに」


「構いません」


「前世の私を、好きなだけじゃないんですか」


「——違う」


強い声。彼が私を見た。


「千年の間、幾度も貴女の魂を探した。何度も『違う』魂に出会った。でも、今の貴女を見つけた瞬間——わかった」


「何が……」


「私が愛しているのは、セラフィーナ様ではない。貴女だ」


心臓が、跳ねた。


「前世の記憶があろうとなかろうと、関係ない。貴女という魂を、私は愛している。千年前も。今も。これからも」


「……私は、愛される価値なんて——」


「ある」


遮られた。


「貴女にはある。貴女が知らないだけで、貴女は千年前も今も、この世界で最も優しく、最も強い魂を持っている」


「強い……? 私が……?」


「人は、弱い者を踏みにじることはできる。でも、それでも誰かを想い続けることは、誰にでもできることじゃない」


彼がそっと、私の頬に触れた。涙を拭うように。


「貴女は自分を『価値がない』と言うけれど、私には見える。傷ついても、誰かを恨まない貴女の強さが」


「……」


「その強さを、私は千年前から愛していた」


涙が、また溢れた。でも今度は、悲しくて泣いているのではなかった。


「ずるい、です」


「何がでしょう」


「そんなこと言われたら……信じたくなる」


「信じてください」


彼が、微笑んだ。


「私は、貴女のために千年を生きた。この先も、貴女のためだけに生きる」


その言葉を、否定できなかった。したくなかった。


——この気持ちは、何だろう。


胸の奥で、何かが芽吹く音がした気がした。



***



ある夜、鮮明な夢を見た。


——白い法衣。手には、光る杖。


——迫りくる黒い影。魔王の姿。


——そして、背後から聞こえる声。


『セラフィーナ様……!』


『来ないで、レオンハルト』


振り返らない。振り返ったら、決意が揺らぐから。


『レオンハルト——来世で、また会いましょう』


『セラフィーナ……!』


『今度は、普通の女の子として——あなたに、愛されたい』


光が、弾けた。



***



「——っ!」


目が覚めた。体中に汗をかいていた。


「咲良様……!」


レオンハルトが、傍にいた。私の手を握っている。


「私……今……」


「夢を見ていたようです。うなされて」


「……思い出した」


「——え」


「千年前のこと。あなたと私が、どう別れたか」


声が、震えていた。


「私は——あなたを置いて、死んだんだ」


レオンハルトの目が、見開かれた。


「思い出した、のですか……」


「ごめんなさい」


「なぜ、謝るのですか」


「だって、あなたを一人にした。千年も——」


「咲良様」


レオンハルトが、私を抱きしめた。


「謝らないでください。貴女は、世界を救ったのだ」


「でも——」


「私が貴女を追いかけたのは、私の意志です。貴女のせいではない」


「レオンハルト……」


「だから——謝らないで。お願いです」


彼の声も、震えていた。


千年分の想いが、この腕の中にある。


「……私、あなたを愛してる」


口に出したのは、初めてだった。


「前世の私も、今の私も。ずっと——あなたを愛してた」


レオンハルトの体が、強張った。


「咲良……」


初めて、『様』をつけずに呼ばれた。


「私も、貴女を愛している。千年前から——ずっと」


彼の唇が、私の唇に触れた。


柔らかくて、温かくて。千年分の想いが、流れ込んでくる。


——ああ、私は愛されていい。


今、初めて、心からそう思えた。



***



——三ヶ月後。


「咲良、準備できた?」


「うん、もう少し」


姉の声に返事をしながら、鏡の前でイヤリングをつける。


今日は、姉の会社のパーティー。姉に「一緒に来て」と誘われたのだ。


三ヶ月前には、考えられなかったこと。


あの後、姉は泣きながら謝ってくれた。本当は、歪んだ家庭環境の中で、姉も苦しんでいたのだと——初めて知った。


「似合ってるよ」


姉が、微笑んだ。以前の、作り物みたいな笑顔じゃない。


「本当? ありがとう」


「レオンハルトさんも、喜ぶんじゃない?」


「も、もう……」


顔が熱くなる。


あれから、レオンハルトは「恋人」になった。正式に。


魔王が完全に消滅したことで、不死の呪いも解けたらしい。彼も、普通の人間として生きられるようになった。



***



パーティー会場。


「咲良様」


人混みの中、レオンハルトが私を見つけた。


黒いスーツを着た彼は、相変わらず人目を引く美しさだった。


「……綺麗です」


「え、あ、ありがとう……」


照れる。三ヶ月経っても、慣れない。


「踊りませんか」


「私、下手だけど……」


「構いません。貴女と踊れるなら」


手を取られ、ダンスフロアへ。


「何を考えていますか」


「……千年前のことを」


「そうですか。私も、思い出していました」


「何を?」


「千年前、貴女と踊った時のことを。あの時——言えなかった言葉を」


「言えなかった言葉……?」


「——愛しています」


心臓が、跳ねた。


「千年前は、言えなかった。身分が違うと、諦めていたから」


「……」


「でも今は、言える。何度でも」


「レオンハルト……」


「貴女を愛しています。前世の貴女も、今の貴女も——貴女という魂そのものを」


涙が、滲んだ。


「私も……愛してる」


彼が、私を引き寄せた。周りの視線なんて、関係なかった。


「これからも——傍にいてください」


「ずっと。離さない」


口づけを交わす。温かくて、幸せで。


——私は、愛されていい。


今は、心からそう思える。


「千年、待っていてくれてありがとう」


「……礼を言うのは、私の方です」


「え?」


「貴女が生きていてくれたこと。私を愛してくれたこと。すべてに——感謝しています」


「レオンハルト……」


「これからの千年——いいえ、永遠に。貴女を愛し続けます」


「大袈裟だよ……人間の寿命は、そんなに長くないのに」


「構いません」


彼が、微笑んだ。千年分の孤独を超えた、穏やかな笑顔。


「貴女と過ごす一日は、千年よりも尊い」


涙が、流れた。でも、悲しくない。嬉しくて、泣いている。


「——私も」


「咲良……」


「あなたと過ごすこれからの日々が、きっと——一番幸せ」


彼の腕の中で、そう誓った。


千年越しの再会は、二人に「永遠」をもたらした。


今度こそ——離さない。


今度こそ——幸せになる。


二人で、一緒に。



——Fin.

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