4月
4月の内容
■パピー委託式
■引退後の生活
■虹の橋・慰霊式
■国際盲導犬の日
■月次報告(4月)
■パピー委託式
2月に生まれたニーナの仔犬達がPWさんのところに預けられる日が来た。生まれて8週間が経過した最初の土曜日。8週というのは法令で規定された仔犬を母犬から離してはいけないとされる期間だった。そして一日まるまる家族が家にいることができる日曜日の前日である土曜日に渡すのが恒例になったとのことだった。協会には繁殖ボランティアの中山さんご夫婦が仔犬たちを連れて来てくれた。一方新たにPWになる家族の中には、慣れないためか期待が大きいためか、委託式の時間として指定された10時より1時間近くも早い9時過ぎから会議室に入って座っている人たちもいた。多くのPWさんは1週間以上前に貸与品であるケージやサークルを協会へ取りに来ていて家で置き方を何度も試していたようだ。そしてその写真は確認を兼ねて川崎さんへ送られてくるとのことだった。届いた写真を見せてもらうと、犬のぬいぐるみをケージの中に置いているものも多い。こうやってイメージトレーニングをしているPWさんも多くいるようだ。その姿が眼に浮かんだ。
「川崎さん、パピーの名前をつけるのはPWさんだと思っていたんです。さっき伺ったらPWさんは連れて帰る犬の名前だけでなく性別さえもまだ知らないって言ってます。PWさんが名付け親ではないのですか?」
「パピーの名前をつけるのはPWさんです。ただし厳密に言うと、PWさんが出した名前の候補の中から協会が選んでいます。でも候補の名前を出してくれたのはPWさんでしょ。だからPWさんが名づけ親。」
「あ、そうだったんですね。すっかり勘違いしてました。」
「名前をつけるのは複雑だから、こんな用紙を渡しているのよ。」
川崎さんから受け取った用紙にはオモテ面に名前のつけ方の説明が書かれていて、ウラ面は記入用紙、候補となる名前を記入することが出来た。
もう少し詳しく見ると、オモテ面には「パピーの名前について」という表題の後に、『今回委託するパピーは<B>胎です。』と大きなフォントで書かれ、そして名前の条件で使用できない名前や単語が説明されていた。ウラ面の表題は「パピーの名前」そしてオスの場合、メスの場合それぞれ第5希望まで、犬名・つづり・意味由来が書けるようになっていた。
「なるほど。そうするとオス・メスの区別も事前には案内していないんですか?」
「ええ、そうです。」
さらに詳しくオモテ面を見ると付けられない名前の例として「コマンドに類似した言葉」「日本人、日本の飼犬にありがちな名前」「協会管理で健在の犬の名前」などが挙げられていた。なるほど、どれも納得できる。
「ノースもノートもダメなんだ。」思わず独り言。今回は違うがN胎の場合、禁止を意味するノーというコマンドがあるからノース、ノートという名前は付けられない。間違いや混乱が起きるのを避けようということだった。これに加えて「協会管理で健在の犬の名前」は伝えるのが難しい。プライバシーの関係で犬の名前は限定的にしか知らせていない。そうなるとPWさんに任せっきりにするのは無理、最終決定は協会なのだと理解。
「名前とは違いますが、オス、メス程度の希望が通ってもいいのでは、と思ってしまうんですけど。」
「それは、PWの申込みなどの時に説明もしているし、正しく性質を分かってなくての希望も多いの。メスを希望する人にその理由を聞くと『メスの方がおとなしいから』という答えが多いの。実際にはメスだから大人しいということはないのだけど。」
委託式が始まる。ここには仔犬の頭数分の家族の ワクワク感が溢れている。ただ誇らしげな反面少し寂し気な家族も1家族。こちらは繁殖ボランティアの中山さんだ。
短い挨拶のあと、これから必要な知識の確認を兼ねて協会からクイズを出しPWさん家族に答えてもらうという形式でのミニクイズ大会が始まる。これからの日程。これには医療関係と教育関係の日程が含まれる。貸与品の説明、健康管理・手入れの仕方などがそれに含まれる。
ながーい時間がかかった後、やっと仔犬が登場し名前、性別が告げられ、職員からPWさんに手渡される。何度目かのリピータ的なPWさんの柔らかな包み込むような手へ、慣れない新人PWさんの震える手へ、職員の手から仔犬の体重が移る。繁殖ボランティアさんの手からお渡ししたいところだが、盲導犬協会の犬としてお渡ししたいため、職員から渡すことになる。
そして記念撮影。これで予定した委託式は終わりだ。
約半数のリピートPWさんは、他のPWさんとそのパピーとの名残を惜しんで去りがたいようだ。
「ご自宅に戻って、早く新しい環境に慣れさせてあげて下さい。」
残りの半数の新人PWの方々は、委託されたばかりのパピーを抱いて前の席に移動。そのあと排泄の説明、フードの給餌方法を教えてもらう。給餌はちょっと特殊だ。
「自分の食事を横取りされると思うと守ろうとして危険になるので、人が横取りすることはないと普段から安心させて上げて下さいね。どのように慣れさせるかと言うと、最初の1ヵ月間、そしてその後も時々、食器に手を添えた状態で食事をさせて下さい。こうすることで人が食器を触っていてもフードを奪われることはないとわかって安心してくれるようになります。」
犬を車に乗せるとき、家で生活するときの共通のルールとしても大事なルールがある。
「椅子状のものの上、車だと座席、家ではソファーの上に乗せてはいけません。盲導犬として働く時には公共交通機関や公共の場所を利用します。そこでは椅子や座席に乗ることが認められていないので、これは仔犬の時にしっかりと身に付けてもらう必要があります。」
と説明を受ける。そう言えばリピートPWさんたちは誰もパピーを座席に直接置くことはなかった。みな新しく預かったパピーを運ぶためのバッグや箱を用意していた。まだ2カ月でよちよち歩きだが、気を付けないとソファーくらいにならすぐに上れるようになるだろう。
「今日はこれくらいにしましょう。皆さんのお宅を順に訪問しますので、ワクチン接種などの日程の詳細はその時に説明します。今日はお疲れ様でした。」
■引退後の生活
「今日は一緒にジョイのところへ行けるんでしたよね。」
「はい、中川さん、よろしくお願いします。ジョイのところに持っていくフードの準備してありますよ。中川さんは引退式の後ジョイのところへ行ったことがありますか。」
「ええ、一度様子を見に行きました。引退犬ボランティアの唐崎さんはもともとジョイのPWだったから、引退の前からよく話をしてました。前回伺ったとき、ジョイ自身もここで自分が10カ月間生活したことを覚えていたようなことを唐崎さんは言ってましたね。PWさんのところへ帰る引退犬はいるけど、やっぱりみんなパピー時代と同じような動きをしてるっていいますね。それじゃ、10時出発なので準備しておいてください。」
近盲の車でジョイのいる唐崎さんのお宅へ向かう。小1時間のドライブだ。道すがら中川さんから引退犬の話を聞かせてもらった。
「すべての近盲の引退犬はボランティアさんのところで過ごしています。場合によって職員とか職員の家族の方がボランティアになっているケースもあるんですけど。」
「協会の敷地の中で引退犬は飼育されていませんものね。盲導犬協会によっては引退犬を飼育しているところもあるって聞きました。」
「北盲(北日本盲導犬協会)さんとか総盲さんとかは引退犬を引き取って飼育もしていますね。仲間の犬と一緒にいるのがいいか、家族の一員として人間と一緒にいる方がいいか。近盲では施設やボランティアさんも含めた人材という面からも協会で引き受けるのではなくて、家庭に引き取ってもらって家族の一員として生活を共にした方がいいと思っています。だから引退犬を飼育する場所は用意してません。」
「自分にも家族の一員の方がいいように思えますね。そういう意味ではPWさんの元に戻るのが最初の候補になるんですかね。」
「そう。ただ元PWの家庭が引き取りを希望している場合でもその家庭に行くとは限らないの。一番尊重しているのはユーザーさんの意向。」
「ユーザーの方の意向ですか?」
「ええ。ユーザーの方が継続して飼育することは認めていないのだけど、引退犬ボランティアを探すときにユーザーの人から聞き取り調査をするの。そういった中には盲導犬の代替わりをした後も、年に1回程度は会わせて欲しい、という人が何割かいます。そうすると地域は比較的近いところになるわね。」
「ユーザーさんの希望だとすると、自分のところで飼うのはダメだとしても、ご近所の家庭とか知人とかに希望される方も出てくるのではないですか?」
「そういうケースはあるにはあるけど、ユーザーさんの自宅に近いご家庭は残念だけどお断りすることにしています。他の方でもっと適した家庭にお願いすることも多いんですよ。」
「PWさんやCC犬オーナーさんでも条件があったと思いますがそれとは違う点もあるのですか?」
「PWと違って協会に連れてこなければならないという制限はないので、地域制限はなくなるの。車の保有義務も。ただし、動物病院に連れて行かなければならないことが多いので、車がないと、お預けするのは厳しいかな。フードは協会が支給していて、病気や老化で食欲が落ちてきたら協会から食欲をそそるようなフードを提供したりするの。それが今日持っていくフード各種ね。」
「今回自分が用意したフードはそういうフードだったんですね。」
「そうです。あと医療費の負担。予防のための狂犬病や混合ワクチンとかフィラリアの薬とかは協会の負担だけど、病気のための医療費は半額ずつ協会とボランティアさんの家での折半になるの。年間上限もあって、それ以上はすべてボランティアさんの負担になってしまうの。」
「何かの病気で手術をすると、すぐ上限を超えそうですね。」
「今お金の話から入ってしまったけど。実はここからが引退犬の飼育をするために必要な心の準備なんです。須田さんは引退犬が病気になったら、西洋医学的に徹底的に戦った方がいいと思う?それとも穏やかに一緒に過ごすことを優先した方がいいと思う?」
「え、その質問は唐突過ぎませんか?」
「須田さんには唐突かもしれないけど、引退犬にも17歳を超えるような生き方をする子もいれば、12歳で亡くなってしまう場合もあります。だから引退犬を預かるお宅では、自分の家族としてどうやって生きていくのがいいのか、その場になって慌てないように考えを整理しておいて欲しいと思っています。そしてそのボランティアさんの考え方が盲導犬ユーザーだった方の考え方と近い方が良いと思っています。」
「自分の家族として、どうするかですね。自分の親父は『チューブだらけで死ぬのはごめんだ。』といつも言ってます。でもまだピンピンしているので、突然緩和ケア宣告を受けるような状態になったときに心が揺らがないかは自信ありませんね。」
「私たちも、それぞれがいろんな考え方を持ってるから、こうしなさい、とは絶対に強制できないでしょ。だから少しでも長く楽しい時間を過ごせるように、歩行補助ベルト、車椅子、カートなどを協会に揃えておいて、リクエストがあればすぐに貸し出せるようにしているわ。」
唐崎さんのお宅に到着。一戸建てのお宅のチャイムを鳴らす。ドアが開いてボールをくわえて出てきたのはジョイだった。続いて奥様。
「こんにちわ。いらっしゃい。」
明るい声が聞こえる。
「この間お電話したように今日は須田と一緒に来ました。」
部屋に入れて頂いた。大きな家具を置いていないゆったりとした居間とそれに続くDK。居間の端にはケージが置いてある。自分たちのお迎えから戻ったジョイは一度自分のケージを確かめた後、テーブルの所に来て、椅子に腰かけた唐崎さんのご主人の膝の上に顎をのせる。
「ありがと、ジョイ。これはジョイがパピーの頃からやってくれたことなんです。引退式の日は家内が協会に行って連れて来てくれて、私が仕事を終えて家に戻ってたときにはもうすっかり馴染んでました。」
「そうなの。もっとよそよそしいかな、と思ってたんだけど、LRという犬種がそうなのかもしれませんけど、迎えに行った瞬間から、8年もブランクがあるのにずっと一緒に居たような顔して車に乗って帰ってきたんです。」
「それで、仕事帰りでまだ着替えてもいないのにこうやって顎をのせてきてくれて。」
「そうそう、すっかりよだれで汚れちゃいましたよね。」
こちらがまだ距離感をつかみ切れていないのに、いろいろと湧くように話が出て来た。
「先日の手術の経過をきちんと伺いたくて。」
「中川さん、ごめん、こっちの話ばかりしてしまって。電話でも話をしたけど悪性腫瘍除去の手術は無事に終って、だいぶ傷も治ってきました。先週動物病院で診てもらった時には生検の結果も出ていて、特に転移しているところもないようです、とのことで一安心しました。」
「早く見つかって良かったですね。フードはどうですか。この間あまり食べてないっていってらしたので、代わりになるフードを何種類か持ってきました。」
そういって中川さんは1kgほどのフードが入ったビニール袋を3つほど手渡した。
「ありがとうございます。手術してから食欲がなかった時期がありました。それから見るとだいぶ良くなってきているとは思うんですけど。もう少し食べてくれるといいんですけど。」
今日の3つの袋の中身はいずれもシニア犬用のドライフードで、メーカーも別だが、蛋白源がチキン、ラム、魚の3種類と異なるものにしてあった。
「今のお話だと食べ過ぎにはなりそうも無いからよいのですが、与える量をジョイさんの体重から計算して紙に書いて入れておきました。これを基準にして食べる食べないを見て頂けますか。」
「須田さん、気配りありがとうございます。中川さん、与えるフードを日ごとに変えて試してみたらいい?」
「はい、それで結構です。運動の方はどうですか。」
「PWの時は毎日1時間の散歩を朝昼夕と3回はしてたんだけど、こっちに戻って来てからは朝夕の2回、ジョイの歩きたいだけ歩くようにしてます。長いときで一回1時間くらいかな。術後は先週診察を受けたころから手術前と同じくらい 歩くようになったと思うけど。」
「あ、それなら大丈夫ですね。ところで今回、ご連絡いただいた手術費は全部でいかほどでした?」
「先週の通院を含めると合計で65万円でした。」
「予算的には年度がまだ始まったばかりなので余裕がありますが、一応ルール的には、実費の半額を近盲が支払うのですが、上限があって30万円ということになってます。なので今回は30万円振込をさせて頂くことになると思います。年度末に残っているようでしたら追加をお渡しできるかもしれません。」
「それは有難いですね。引退犬なので医療費もかかることは知っていて覚悟はして居ましたが実際に病気になって、実際の金額を見せられると不安になりますね。」
一般の動物医療保険の説明をWebで見ていると、パピーの時は怪我や誤食による医療費が多く、病気の医療費は8歳を過ぎるあたりからグンと増えるように思える。今回のジョイの医療もそんな内臓の病気の治療だ。引退犬の場合、パピーの時よりも医療費がかかることは覚悟しておかないといけないことのようだ。
「アニマル保険に入っておいた方が良かったかなぁ。」
家計を預かる奥様は小さな声でつぶやいた。
「でもジョイが来てくれて本当に良かったわ。PWが終って1年、ジョイが盲導犬になったと聞いた瞬間から、引退したらうちに戻して下さいね、引退犬ボランティアやりますから、って中川さんにはお願いしてたんですよ。もしユーザーさんが『自分の近くの知人のところに引き取ります』って言ったらどうしようかと、決まるまでは怯えてたの。引退式の日に迎えに行って、実際に頭を撫でたときとっても嬉しかった。そして数日経ってiGRAMに引退式の様子が載ってたのを見て、短期預かりではなく本当に帰って来てすぐに協会に戻さなくてもいいんだとやっと確信できたの。」
「そう、何年か前、前の引退犬スージーと一緒にボランティア・デーに行った時、少しだけ会う機会があったんだけど。本当は現役盲導犬とは会うことが出来なかった時代なのでちょっとだけ。だから一日も早く、という思いでいっぱいだったね。そして引退式には出れないとしてもその様子だけでも別室で聞かせてもらったら有難かっただろうなぁ。」
唐崎さんご夫婦のジョイに対するたっぷりの愛。パピー→盲導犬→引退犬。再び唐崎さんの家族になれて本当に良かった。中川さんのお眼鏡にかなったのだから、愛情いっぱいで過ごしてくれることでしょう。
■虹の橋・慰霊式
「はい、は、はい。それはとても残念でした。今から急いで行きますね。」
途切れがちな声で話をしていた中川さんは沈鬱な顔で電話を切った。
どんなに寿命が延びても、生き物である以上必ずお別れの時は来る。今日また1頭の元盲導犬が旅立って行った。中川さんは急いで引退犬ボランティアの家庭に車を走らせる。昼前の電話だった。中川さんは4時ころ訓練センターへ帰って来た。近盲では盲導犬や繁殖犬は引退したあとでも最後まで見守るという方針をとっている。すでに家庭犬になってはいるので、葬儀などは引退犬ボランティアが主体的に行う。近盲はボランティアさんの希望に沿って行われる葬儀に列席する。そしてお骨があれば分骨してもらい協会の敷地に立つ慰霊碑に納めて、盲導犬ユーザーだった方からの要望があれば、その分のお骨も保管しユーザーへ届けている。以前は毎年協会として1年分の祈りを込めた慰霊式『盲導犬をしのぶ会』を行っていた。当日は参加を希望する引退犬ボランティアさん、元ユーザーさんを招き職員全員が慰霊碑の前に並び盲導犬の冥福を祈っていた。しかしコロナの影響でリアルな慰霊会を開催出来なかったこともあり、今は慰霊碑の前には職員だけでならび『偲ぶ会』を開催している。その代わり引退犬ボランティアさん、元ユーザーさんには冊子を作成し配布することにした。冊子の名は『また 歩こうね』。その年に亡くなった引退犬の写真、ユーザーと職員、親犬(繁殖犬)から引退後までの様々なボランティアの人たちからのメッセージが載っている。繁殖犬ボランティアさんからは生まれて来たときの生命の息吹き、PWさんからは若さの躍動、ユーザーさんからは毎日の生活に密着した歩く喜び、訓練士からはそのユーザーさんと歩く姿への信頼感、引退犬ボランティアさんからは安らぎの生活。全てのメッセージにはその犬への感謝がこもっている。
■国際盲導犬の日
盲導犬協会の事務室の壁にかかっているカレンダーを見ると、4月の最終水曜日に『盲導犬の日』と手で書き加えられている。盲導犬育成施設のための国際機関であるWGDF(World Guide Dog Federation)の創立は1989年4月26日。これを記念して『国際盲導犬の日』が設定されている。それ以前はWGDFのような団体はなく、複数の盲導犬協会がそれぞれ個別に協力関係を築いていた。WGDFの設立に合わせて盲導犬の活躍を広報するために4月の最終水曜日を盲導犬の日として制定したのだそうだ。所長に少し教えてもらおう。
「須田さんは海外のコンファレンスとかに行ったことはある?うちの会長から聞くところによると、須田さんのところ、MobilityWorksの社長さんは、海外に人を出して経験を積ませるのが好きだと聞いたんだけど。」
「そうですね。自分は一度アメリカの学会に聴講しに行ったことはあります。ただ社長からは次回行くときは発表だぞ、と脅されてしまって、それ以来ご無沙汰です。」
「それは大変だね。WGDFでも各国の盲導犬育成団体が集まるコンファレンスをやっているんですよ。2023年はこの『国際盲導犬の日』に合わせて日程が組まれたんです。発表は義務ではないけど、できれば参加する職員の誰かに発表してもらいたいと思ってるんですね。ただしコンファレンスはビエンナーレ、隔年開催なんで今年はなくて来年の秋を予定してるんです。ある面各国の持ち回り開催で10年くらい前に日本でも開催されたことがあって、その時は総盲さんがホストでしたね。WGDFさんからはそのホームページ上で全世界の年次状況が説明されていますから、また見ておいてください。」
「はい、興味ありますので見ておきます。それで『盲導犬の日』には国内で他の協会と一緒に何かしてるんですか」
「国内の盲導犬育成団体が一緒に何かをする、ということは出来てないんです。とても手が回らない、という状況です。その代わりそれぞれ独自のイベントをやってますよ。」
「近盲のイベントは連休明けに予定されている『歩こう一緒に!』ですか?」
「そうです。以前はずっとリアルでやっていて、この数年は感染症の関係でネット配信を使ったバーチャルでした。今年はリアルに戻すことにしました。できれば将来的にはリアルと配信を組み合わせたハイブリッド企画にしようと考えています。本当は4月末に盲導犬の日の前後でやりたかったのですが、会場の日程が調整できなくて5月にずれ込むことになりました。」
「そうなんですね。会場予約は1年前からというところも多いですよね。そうすると調整は前の年のイベントが終った時からやることになりますものね。」
「そういえば須田さんはMobilityWorksでもいろんなイベントをやってたって言ってましたね。須田さんにも今年はばっちり手伝ってもらいます。そして経験を活かしハイブリッドで開催する場合の課題を抽出してくれると助かるな。頼りにしてますよ。残念だけど来年は会社に戻ってるでしょうから、配信で見てもらうための準備です。」
「はい、わかりました。頑張ります。」
近盲の人は褒め上手だ。また乗せられてしまった。
■月次報告(4月)
第7回報告
御手洗社長
4月(7回目)の報告を行います。
<業務内容>
・パピー委託式立ち合い
・引退犬の扱い調査
・啓発イベント支援
<次月の予定>
・啓発イベント支援
<所感>
国際盲導犬の日(4月最終水曜日)に連動したイベントを5月に実施することになっていました。今後のハイブリッド実施に向けた準備(必要事項の洗いだし)を行う役を仰せつかりました。MobilityWorksでのユーザー会の経験を活かせると同時に、逆に持ち帰る技術があるかもしれないので楽しみです。
2月に出産を見に行ったパピーの委託式もありましたが、それとは反対に引退犬の扱いについても教えて頂きました。
須田
返信:第7回報告
須田さん
ユーザー会のハイブリッド開催は定着したけど、イベントの性格が違うので、その点を考慮して盲導犬協会側への報告とは違う切り口で報告をするようにして下さい。今は近盲の仕事最優先で構いません。近盲へいい報告をして下さい、こちらは余裕があればで構いません。
御手洗




