登校初日!(1)
私たちは、ある武家の家の子孫として生まれた。双子で生まれ、私は妹として育った。この家の子供は私たち姉妹だけで、男の子は生まれなかった。そんなことから、3歳のときから、毎日厳しい剣の鍛錬を積んでいた。稽古は長い時間続いた。時間が、重く、長く感じた。厳しく剣を教える父。なぜこんなことをしなければならないのかとずっと考えていた・・・・・・。
新学期が始まった。桜の花は満開で、通りすがる人々を期待に満ち溢れた心にしてくれる。私は中学にあがり、今年で中学2年を迎えた。
「ハル~。」
と、後ろの方で声が聞こえた。長い黒髪で、背は160cmくらいの女性だった。私の姉の「天川 美雨」だ。「ハル」と言うのは、私のあだ名で本名は「天川 晴美」と言う。
「ハル、置いてかないでよ~。」
息をきらしながら姉が言う。
「だってみぃ姉ぇが遅いんだもん。」
「だからって・・・・・。」
「当たり前でしょー。遅刻したら・・・・・。」
遅刻したら父の「天川 雅秀」の稽古がより一層厳しくなるからだ。どこから遅刻したことの情報を得ているかはわからないけれど、その日の稽古は私たち二人は双子だから、連帯責任で私たちにいつもよりキツい修行になる。
「みぃ姉。早く行かないと遅刻になっちゃう。」
「あ、ごめんごめん。それじゃ行こっか。」
私たちの学校は私立静涼中学校という学校で、名門らしい。もちろん修行があるので部活には入れてもらえなかった。
「ハル。行くよ~。」
「行くよって、みぃ姉の方が遅かったじゃない。」
みぃ姉の顔に「うっ」と露骨に出ている。それからみぃ姉の顔は真っ赤になった。
校門までの道のりは、緩やかな長い坂があり、この季節だと気持ちがいい風を送ってくれる。
「やっぱりこの坂の風は気持ちがいいね。」
とみぃ姉が長いストレートの髪を整えながら言った。
「そうだね~。やっぱりこの風が吹くと平和って感じがするよ。」
「そうね。でも、それも終わりかもしれないわ。」
何を言っているのだろう。どこの国でも、小競り合い程度はしているけれど、そこまで大きな戦争はしていない。平和の終わりとはまた戦争が起こるのだろうか?と聞きたかったが、聞けなかった。そのときのみぃ姉の顔はいつもの温かくやさしい顔はなく、冷たい表情だった。その表情は一瞬であるけれど鳥肌がたち、体が震えていた。
「どうしたの?ハル。」
みぃ姉がしたから覗き込んでそういった。そのときは、さっきの表情はいっさいなく、いつもの表情に戻っていた。
「え?あ、うん。大丈夫だよ。」
「なら、いいのだけど震えてるわよ?」
「ちょっと寒くなっちゃって・・・・。でも、今はもう平気だよ。」
「そう。早く行くわよ~。」
とみぃ姉は小走りで校門へ駆けていった。私は後ろからみぃ姉についていった。
クラス分けの紙がもと居た1年生のところに貼られていた。
「私のクラスは~・・・・・・。」
さすがに遅刻間際に登校したため教室には私とみぃ姉の二人しか残っておらず、急いで確認しているところだった。
「あれ?お前ら今来たのか?」
「あら。桶谷くん、おはよう。」
「おはよ~。」
コイツは「桶谷 傑」髪の長さは普通で、身長は170cmあるかないかくらい。コイツはなぜか私たちにまとわりついてくる。
「天川達は何組だったの?」
とこちらに歩きながら聞いてきた。
「まだ確認中だよ。」
と口を尖らせて私は言った。私の態度は露骨だったのだろうか。みぃ姉がフォローするように
「今ついたばっかりなの。」
と笑顔で言った。こんなヤツにそんな態度とらなくてもいいのに・・・・・。と思いつつ、クラス分けの表をみていく。
「あ、あったよ。みぃ姉また一緒。D組だよ。」
「また、一緒?良かったわ~。」
とはぁ~と息をついた。私は正直、今回は姉となるのが怖かった。あの坂道での顔はなんだったのだろうか?今思い出すだけでも鳥肌が立ってしまう。
「D?Dって俺と一緒じゃん。今年もヨロシクな!」
「え?あんたDなの?」
コイツと一緒だけはありえない。きっとなにかの空耳だと思った。
「おう。一緒のD組だぜ。」
桶谷は右手の親指をたてて言い放った。その瞬間私は右手の拳を握り、桶谷の腹にパンチを入れた。
「ごはぁっ!!!!!」
ドサッという効果音的なものが立ち、桶谷はぴくぴくしていた。
「なんでアンタとまた一緒なのよっ!」
「し・・るか・・・よ・・・・・・。」
表をもう一度確認しに行く。男子の方は見ていなかったから、なにかの間違いよ。
「えーっと。D組の男子はっと・・・・・・・」
さっきからぴくぴくしている桶谷がいるわけ・・・・・・。私は今度は桶谷に飽きがこないよう足で蹴り上げ、腰の位置まで浮いたときに思いっきり腹にもう一発パンチを加えた。今度は、桶谷からの「ガハァッ」とか「ウゴォァッ」などという声はなく、静かに倒れていった。
「制裁完了♪」
と私は満面の笑みで言い残し、みぃ姉をつれてD組まで走っていった。
D組の前までついた。
「ここかぁ~。」
と私は若干息を切らしながら言った。
「そう・・・みたい・・・だね。」
と息を切らしながら、みぃ姉が言った。扉を開けて中に入るともう先生が教卓に立とうとしているところだった。先生は誰かを探している様だった。
「私たちの席はどこだろう?」
みぃ姉が戸惑いながら私に聞いてきた。
「そんなこと私に言われても・・・。」
「あー。君たちの席はア行だから一番前のあそこの二つじゃないかな。」
と近くに男子が教えてくれた。
「ありがとう。」
とみぃ姉がいい、私たちは笑顔を作り、軽く手を振った。
「あー。誰か桶谷を知らんか?さっき1年のときつかった教室を見て誰かいない確認してこいと言ったのだが・・・・・。」
ヤバッ。桶谷だったらさっき私が沈めて来ちゃった・・・・・。どうしよう。まぁでもどうせ、桶谷だし問題ないか。
「仕方ない。ホームルーム始めるぞ~。」
みぃ姉をみたら、悩んでいる様子だった。多分、桶谷を置いてきたのを悪く思っているのだろう。
「桶谷のことだった大丈夫でしょ。」
みぃ姉の耳元でささやく。
「そうかしら。桶谷くんすごく痛そうだったけど・・・・・。」
「大丈夫だよ。ああ見えて桶谷って打たれ強い・・・・と思う。」
アイツをほめるような言葉を発するだけでイライラを感じる。アイツはまだあんなところで気絶しているのかと考えていると先生の自己紹介が始まった。
「えー、このD組担当の北上 誠人です。みなさんよろしくお願いしますね。では、廊下側の人から自己紹介でもしてもらいましょうか。」
自己紹介。最初のホームルームでは絶対と言っていいほどの確率でくる。私は自己主張苦手で人前で言うとあがってしまって、何もできなくなるクセがある。
「あ~、猪上 義です。得意なことは、武術と機械関係ならほぼOKです。よろしくお願いします。」
と隣の猪上くんは軽く会釈をして座った。そして、次の男子、また次の男子と自己紹介をしていく。
「俺の自己紹介変じゃなかった?」
と隣のえーっと猪上?くんが聞いてきた。ほとんど聞いていなかったので適当に相槌を打っておいた。
「うん。普通のでよかったと思うよ。」
「そうか、ならいいんだ。サンキュな」
そういって後ろの男子と話し始めていた。そして次の男子の番になった。だけど、教室は静まり返っている。そんなとき、廊下からダダダダダダダダダという音がして、扉を思い切り開けて、バン!という音と同時に桶谷が入ってきて、私に指を指し
「天川!お前よく・・・・も・・・・・・」
と大声で叫んだ。しかし、さすがのアイツも空気を読み、途中までしか言わなかったが、この静まり返った空気のなかでアイツは私に指を指した。私は思いっきり顔を赤くし、うつむいてしまった。桶谷と私に一斉に視線が集まる中
「えーっと、桶谷 傑です。よろしくおねがいしまーす。」
と言い残し、桶谷は自分の座席へと向かっていった。そのとき私は
「後で覚えてなさい。」
と桶谷に静かに告げ、またうつむいた。
そして、次の男子の自己紹介がはじまった。
「羽田 璃穏。趣味は銃を扱うこと。」
それだけ言って彼は座った。羽田 璃穏・・・・・。男子の自己紹介で一番印象深い自己紹介だった。そして、ついに私の自己紹介がきてしまった。後ろから恥ずかしがり屋な私のことをしっているみぃ姉が小声で「がんばって!ハル!」といってくれている。みぃ姉のためにも頑張んなくちゃと思って、椅子から立ち上がり、自己紹介を始めた。
「えと・・・・天川、は、はる・・・・・。」
次の言葉が出ない。みんなの視線が集まるなか、私は死ぬほど恥ずかしくなり、顔が真っ赤になり、涙ぐんでしまった。後ろからガタッという椅子を引く音がして、
「私の名前は天川 美雨です。今自己紹介していた、晴美の姉です。二人まとめて自己紹介とさせていただきます。」
みぃ姉はペコッとお辞儀をして私も一緒に座らせてくれた。
「大丈夫?」
とやさしく心配して話かけてきた。私は言葉を発することができず、首を上下に振って答えた。
そうして、ホームルームが終わった。
こんにちわ、こんばんわ、おはようございます。作者のψpicoψです。小説を書くのはこの「雨晴道」が初めてです!至らない点が多くあると思います。なので指摘等ありましたら、じゃんじゃんしてください。次回も頑張って書きますので、楽しみにしていてください。