八話 【怨霊鉱山】
長く鋭い爪を持った腕がジンを吹き飛ばした。
「おごぁっ!」
ジンは木に叩きつけられ、背中へ走る衝撃に変なうめき声を上げた。
そんなジンに向けて緋色の毛皮を纏った巨大な熊が突進してくる。
「グオオオオオ‼」
「うおおおおお⁉」」
【豪熊の森林】ボス、ガルレットの突進がジンに直撃した。
ズゴン、と地響きがしてジンが背にしていた木はメキメキと倒れていく。
まともに食らったジンは耐えられない——。
「うぐぅ、……うーん?」
などということもなかった。
■ ■ ■
NAME:ジン
ジョブ:《金の亡者》Lv9
▽ステータス
HP:770/810
MP:50/50
SP:100/100
STR:10
END:78
AGI:10
DEX:5
LUC:0
〈スキル〉
:〈収益〉Lv4
:〈亡者の換金〉Lv3
『所持金 48900ギル』
■ ■ ■
「あれ、なんかそんなにHP減ってないな」
ガルレットの攻撃は今、二度直撃した。
しかしポーションで満タンにしていたHPは40しか減っていない。
攻撃の迫力にダメージが全く追いついていなかった。
「グウゥ?」
ガルレットも首を傾げているような気がする。
ジンはステータスを見てその理由に気づく。
「そうか、俺END高すぎるのか」
《金の亡者》は高位ジョブだ。
HPとENDしか伸びないが、同じレベルの基礎ジョブと比べた時その差は三倍近く開いている。
「ボス相手でももう大してダメージないんだな……逃げ回らなくてよかった」
ガルレットに相対してから、ジンはその巨体に威圧されてなるべく攻撃に当たらないよう避け続けていた。
しかし体で受け止められるなら話は別だ。
ジンは立ち上がりガルレットの正面から走り寄った。
「グオオオオオ‼」
それに対しガルレットは咆哮を上げて爪を振るう。
「ふんっ!」
オークにしたようにそれを腕で受け止めて、ジンは《執着の短剣》でガルレットの胸を何度か切り裂いた。
「グウゥ⁉」
それでガルレットの頭上のHPバーは一割近く減る。
《執着の短剣》
:攻撃力 +30/上限30
上限まで上がった《執着の短剣》はボスであるガルレットにもよく効くようだ。
「グウ⁉ グオオ⁉」
「うん……」
ジンは狼狽えたようなガルレットに生暖かい目を向ける。
「じゃあ、そういうことで」
「グオオオーーー⁉」
その後、しばらくしてガルレットは光の塵となった。
ドロップアイテムは5000ギルになった。かなり大量だ。
■ ■ ■
森を抜けると、壁に囲まれた要塞のような街の近くへ出た。
「ここがネクスタルか……とりあえずセーブポイント更新だな」
セーブポイントの更新は、宿に泊まるか冒険者ギルドで本の石像へ触れることでできる。
ジンは冒険者ギルドへ行って更新を済ませると一度ログアウトした。
「えーっと、ネクスタルで稼ぐのってどうやるんだ?」
前は概要だけで詳しく調べていなかった。
それはゲームを自分で楽しむためだったが、今は余裕がない状態だ。
「どうせ《金の亡者》っていう誰も知らないジョブにはついたし……あ、あった」
自分に言い訳をしながらジンは金策についてのページを見つける。
「えー……【怨霊鉱山】」
【怨霊鉱山】。
アンデッドやゴーレムが出現するエリアであり——初心者から中級者が通うことになる金策場所である。
遅れてしまい申し訳ないです