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五十話 新しいスキル

 新しいスキルを見たリングは、ガッとジンの肩を掴んで揺さぶってくる。


「どんなスキルなんですか! 効果は⁉ できれば内容を教えてください! できれば!」

「おあぁぁ⁉ いきなり揺さぶってくるな!! できればって態度じゃないだろ!」

「はい、離れてください」


 腕に捕まるユノが慣れたようにリングの手をどかした。

 それに感謝しながらジンはスキルの欄を見……る前に


「ああそうだ、アルマさん。お金返します」


 所持金から19万5200ギルを取り出し、ジンは後ろにいたアルマへと渡す。


『あ、ああ。この話の流れでか? 後でもいいんだが』

「いやお金の貸し借りはしっかり清算しとかないと!」

『そ、そうか』


 アルマは戸惑いつつギルを受け取った。

 それを確認したジンは晴れ晴れとした笑みを浮かべる。


「あー、すっきりした! さて、じゃあスキル確認するか」

「ジンさんはお金の事になるとマイペースですねぇ」


 リングは何故か感心したような顔をしている。


「じゃあまず〈餓者の取り立て〉から」



・〈餓者の取り立て〉Lv2

 :パッシブスキル

 :ドロップアイテムを四倍の値段で換金する。

  また相手にダメージを与えると、ダメージに応じたギルを獲得する。

  自身と比べ相手のステータスが高ければ、獲得する金額は上昇していく。

・前スキル

 :〈収益〉Lv10、〈亡者の換金〉Lv10。


「おぉっ! これはスキルが合わさって進化したものですね!」

「進化……初めてだな、進化したスキル見るの。ていうかあれ⁉ 獲得できる金額下がってる!!」

「Lvを上げれば前より多くなりますよ。それにドロップアイテムじゃなくても、ダメージを与えるだけでギルが獲得できるようになってます」

「あっ、しかもステータス下がってたら金額が大きくなる! これでレベル落ちてもちょっと安心か……? 得られる金額に寄るけど」


 そして次は〈地獄の門は金次第〉。



・〈地獄の門は金次第〉

 :アクティブスキル

 :地獄へと繋がる門を開き、亡者を呼び出す。

  門へ投入した金額によって亡者の数と強さは変わる。


 そのスキルの説明を見てジンは首を傾げる。


「要するに、アンデッドみたいなものを召喚するスキル……なのか? なんか、今までのスキルと感じが違うというか、魔術っぽい? 《魔術師》のジョブなんか取ってないけど……」

「確かに魔術系のジョブでもないのに召喚というのは珍しいですね。しかしスキルは人によって千差万別です」


 リングは始めて見るらしいスキルに目を輝かせつつも驚いた様子はない。


「例えば《剣士》の高位ジョブ、《剣者》は剣を召喚したりしますね。解放条件は少し特殊ですが、魔術系に関わるものではありません。まあ、ジョブによってはどれだけ頑張っても覚えられないものもありますが」

「へぇー」

「それより効果が気になりますね! どうでしょう、これからちょっと一緒にクエストへ行くというのは——!」

「こらぁリングぅーーー!」


 リングが再び迫ってきたところで遠くから怒鳴り声が響いた。

 ジンたちがそちらを見ると、交易路に続く通りの方から十数人のプレイヤーたちが駆け寄ってきた。

 声を上げたのは先頭にいる赤いフードを被った金髪の女性のようだ。


「話し終わったんなら戻ってきなさいよ!!」


 女性はスパーンと景気のいい音を立ててリングの頭をはたく。


「こっちはちょっと前から広場で待機してたんだからね⁉」

「すみませんクロネさん、つい好奇心が暴走して」


 フードの女性、クロネにリングは頭をさすりながら謝る。

 どうやら駆けてきた人々はリングのクランメンバーのようだ。

 彼らは口々にリングへと文句をぶつけている。


「爆速で終わらせるので待機していてください、って言ったくせに!」

「私は最速ですからとか調子こいてたくせに!」

「貢献度どうなったんだよ!」

「ほら早く拠点に戻るよ!」


 クロネはリングの首根っこを捕まえて引っ張っていく。


「ああっ、あとちょっと待ってください! ジンさんのスキルが発動する所だけ見たいです!!」

「そんな暇ないわよ!! あ、そこの人たち。話の途中だったらゴメン、こいつ連れて行くわね」

「あ、ああ、はい。別に大した話はしてなかったんで」

「ありがとう。じゃあさようなら」


 クロネはジンたちの方を向いてペコ、とお辞儀をして去っていく。


「ジンさん! 後でできれば教えてくださーーい!! できればでいいのでーー!!」


 リングは最後にそんな叫びを残して連れられて行った。


「……なんか、うるさく現れてうるさく去っていった……」

『そうだな……しかし、今日は色々と大変だった』


 リングの姿が見えなくなったあたりで、アルマが疲れたように呟く。


『私はそろそろ一度ログアウトするが、ジンはこれからどうするんだ?』

「俺はとりあえずユノたちを送っていこうかと」

『そうか。ではまた……ああ、そうだ。よければフレンドにならないか?』

「おお、いいですね。ぜひ」

『では申請を』


【プレイヤー アルマ からフレンド申請が来ました】

【申請を受けますか? はい/いいえ】


 ジンは「はい」を選び、フレンド欄に二人目のフレンドが追加された。


『では、またな』

「はい、また」


 リングとの別れとは対照的に、アルマは静かに去っていく。


「じゃあ俺たちも帰ろう」

「はい」

「おう!」


 両腕に二人が抱き着いたまま、ジンはふわふわとした気分で宿屋へと帰った。



■  ■  ■



「ようやく安全な所へ帰ってきたって感じだ……」


 ジンは宿の部屋でベッドに座り込む。

 二人もユノのベッドへと並んで座った。


「そうだ。二人とも、今日は本当にありがとう」


 二人が座ったのを見て、ジンは向かい合う二人へとお礼を言う。


「ユノのアイテムも、アニカの武器も、どっちも無いとモンスターは倒せなかった。滅茶苦茶助かったよ」

「そ、そんな! 私たちだってジンさんがいないとどうなってたか……!」

「そうだよ! それにあたしは……あたしは、ジンに鍛冶師としても救われた!」


 アニカはまたも泣きそうになりながら叫ぶ。


「あんな強大な相手でもあたしの武器は折れなかった! ジンの扱いが上手いんだとしても、それについていける武器だった! ……あたしは、自分の武器を……ようやく信じられた……!」


 こぼれる涙をぬぐい、アニカはジンをまっすぐに見据える。


「だから、ジン。もしもあたしの力が必要なら何でも言ってくれ。ジンに作るものなら自信を持って打てるから」

「ああ、頼りにしてる」


 覚悟を決めたようなアニカの目にジンは頷いた。

 見つめ合う二人へ割って入るようにユノも手を上げる。


「わ、私も何でも作りますよ! 《爆弾》とか!」

「う、うーん。《爆弾》はそこまで……」

「あれ⁉」


 確かに《爆弾》は役に立った。

 クリープ・ピラーへのとどめになる程だ。

 しかしあれは普段使いするにはちょっと音や衝撃がでかすぎる。


「ま、まあそれはともかく!」


 ジンはパンと手を叩いて話を変える。


「まず、さっき聞いた指名手配犯たちへの対策だ」

「対策ですか?」

「今回は俺がユノたちと一緒にいたからなんとかなった。けどまた似たようなことをあいつらは起こすだろう。その時、俺がいなくてもユノたちが逃げられるぐらいの対策をしておきたい」


 ジンが思い浮かべるのは、ユノがソールズに連れて行かれそうになった時のことだ。

 モンスターの襲撃は街中で早々起こせないだろうが、数人のNPCをさらうぐらいは簡単にできてしまう。


「逃げられるぐらい……例えば《煙幕》や《睡眠薬》ですか?」

「あと本当に危ない時は《爆弾》とか」

「《爆弾》使っていいんですか⁉」

「まあ、ユノなら上手く扱えそうだし。でも本当に非常事態の時だけな!」

「あたしはユノでも使えるぐらい小さくて軽い武器を作る、とか?」

「アニカの分もだよ。それこそ《ピニオン・クロウ》みたいにAGIが上がるようなの」

「あ、あたしもか……じゃあジンの武器はどうするんだ?」

「俺は《ピニオン・クロウ》とスキルがあるしなぁ。あ、でも《ピニオン・クロウ》はちょっと耐久値がヤバいか」

「え⁉ 今すぐ手入れする! 出してくれ!」

「あ、ああ、はい」


 迫るアニカへジンは《ピニオン・クロウ》を渡す。

 アニカはそれを隅から隅まで観察し、鞄から道具を取り出し始めた。


「……ああ、そういえば《執着の短剣》はどうするかな。今回全く使わなかったし、もう出番はないか?」


 ジンはかつての愛剣を取り出して眺める。

 《執着の短剣》は《ピニオン・クロウ》の下位互換と言っていい。

 AGIへの補正はなく、攻撃力は最大でも《ピニオン・クロウ》に敵わないのだ。


「二刀流とかのスキルがないと別の武器二つ装備するのは無理みたいだし……あ、でも」


 ジンはそこで一つ《執着の短剣》の特性を思いついた。


「耐久値が減らないのか」

「え?」


 《ピニオン・クロウ》を手入れしていたアニカがバッと顔を上げた。

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