ご飯問題
「くぁぁ………」
大きく伸びをして目を開けた
カーテンから日が差している
朝だ
起き上がろうとして気づく
そういえば白猫だった、と
(身軽だけど4本足での歩行って不思議な感覚なのよね…)
しばし自分の肉球を見つめていたが
ため息をついてから起き上がる
すると扉の方からノックの音が聞こえた
「失礼します。おはようございます」
ジャストタイミングで現れたのは昨日のメイドさんだ
白猫相手に丁寧にお辞儀をする優しい人
「朝食を召し上がられますか?」
「にゃっ!(ハイッ)」
すぐにメイドの足元に行きまとわりつく
喜びを全身で表現する
「ふふふ、お魚を用意しましたのでお持ちしますね」
(おー!…でも猫にあげる前提だから焼いただけじゃあないよね…?)
一瞬喜んだが味なしなのでは…?と動きを止めた
この身体は猫体質なのか、人間体質なのか
体質が変わらないのであれば人間と同じ食事でも全く問題ない
だがそれをどうやってメイドに伝えよう?
ぐるぐる考えていると目の前に魚のソテーが置かれた
見るからに味つけされてない
恐る恐るかじるとやはりそのままの味だった
(せめて塩………)
そのまま食べるのをやめたミアにメイドは首を傾げる
「お気に召しませんでしたか?」
「にゃにゃ…(味しないんだもん…)」
しょんぼりするミアに困るメイド
ミアも困っていた
この国は獣人に偏見がある
平民同士であれば手を取り合って暮らしているのだが
一部の貴族が差別をしているのだ
獣くさい、ガサツ、国のことなど分からないだろうと
罵倒してくる
それもあってミアが宮廷魔術師になるとき素性を隠した
獣人は姓を持たないが唯一素性を知る国王陛下がミアに姓を与えた
そういう経緯があるためこのメイドに獣人と伝えるのを躊躇っている
(私を見る目が変わったらどうしよう…)
そもそも喋れないので伝え方もわからない
ただご飯をくれることに感謝しそのまま食べたほうが平和ではないかと思い始めた
ご飯をくれるだけでも本当は贅沢で幸せなのだ
のっそりとまた魚の前に座ると
また扉をノックする音が聞こえた
ご飯をもらえる贅沢さに気づいたミアさん