アーサー
緊迫した空気が続き汗が止まらない
目の前の女の形をしたモノは先代国王陛下だという
奴の顔は覚えていない
話し方も覚えていない
だが蒼目の者、膨大な魔力
それらが先代であると証明している
「死んだのではないか?」
たしかに王妃殿下の呪いが続く為もしかしたら先代の魂が彷徨っているのではないかとノースと話したことがあった
だが魂は見つからず確証がなかった
それなのに今、魂が目の前にあるという
「1度死んださ。肉体を代償にしたがまさか半端な呪いになるとは…しかも小娘を狙ったはずなのにシャーロットがしゃしゃるとはね…馬鹿な女よ。どちらも死ねばいいのに」
ニヤリと嘲笑うその顔にセオドアの怒りが沸騰した
赤い目がさらに滾る
「アーサー!!!」
もはやタブーとされる王族の名
「おやおや、君の祖父を呼び捨てにするとは……躾がなっていないねぇ」
急所を見抜き切りかかるセオドアを涼しい顔で避け続けた
騎士団長でもあるセオドアは団の中でもトップクラスのスピードを誇る
それを避け続けるのは至難の業のはず
だがそれを感じさせず鼻歌まで歌っている
「お前は祖父ではない!!人間でもない!!私の大切な人達を侮辱するな!!今すぐ消えろ!!」
「ふぅん?」
何がおかしいのかニヤニヤしながらセオドアを見つめていた
後ろに大きな木がありアーサーが木を背にぶつかりよろける
「おっと」
「そこだ!!!」
深く切りつけアーサーの目が見開く
こんな呆気ないものかと思う間もなくアーサーが笑う
なんちゃって、と呟いており
わざと切られたのだろう
「女の身体でも躊躇いなく切るのは素晴らしいねぇ」
血がドクドクと流れていてもその場に立ち続ける異様さにセオドアが後ずさる
「なんで驚くんだい?この身体の持ち主は死んでいるんだ。要は動く屍だよ。切られたところで血は出るがなんの影響もない。まぁ服が濡れるのは不快だから止めようか」
瞬時に傷が塞ぎ服についた血が消えきれいな状態に戻った
早い…いくら魔力があろうともここまでのスピードで魔法を使いこなすのは難しい
暴君であったとともに天才だと言われていたからか
「…化物め…」
「褒め言葉だね」
【オイ、そろそろ時間だ。我は動くぞ】
事の成り行きをしばし見ていたがレッドドラゴンが動き出す
ブワッと飛び上がり正確な目的の地点に立つのだろう
セオドアの指示がなくてもアーロ達が攻撃を仕掛けている
だが大した傷も与えられず足止めすることさえ叶わない
「あれ?君、律儀に待ってたの?真面目だねぇ」
【…いちいち癪に障る奴だな】
「まてっ…!」
制止も虚しく着地の勢いのままにレッドドラゴンが右手で地面を叩く
大きな魔法陣が展開されついにすべての魔法陣が繋がった
*
同時刻
王城、レオの研究室
ノックが2回された
「お時間です」
「わかった…」
あれからセオドア達から連絡がない
苦戦しているか魔法陣が完成されたかだ
ハリーとともにギリギリの時間まで進めていたがまだ魔鉱石は完成していない
あと少しのところである
「ハリー、あとは任せた。このあとも続けてくれ」
「はいっ!任せてください!」
そう声をかけると目の下にクマを作りながらも元気な返事が返ってきた
ろくに寝れていないというのに無理をしている
分かっているがレオも止めることはない
もう時間がないのだ
相変わらずミアはいない
朝にミアの研究室を覗いたがそこにもいなかった
行方の知れない彼女に不安を持ちながらもレオは結界の間に向かう
王城の入り口、屋根の上にちょこんと座る白い猫
6ヶ所目がある方向を見ている
「そろそろね…」
さぁっと風が吹く
少し強い風だったので片目をつぶりやり過ごす
ちらりと後ろにある結界の間がある塔を見た
「ラッセル様……さよならです」




