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09.メグミさんの過去

ウサさんの打ち明け話

「へえ、移住者なんだ。どこから?(ルナ)?」

地球(テラ)。日本だよ」

「わざわざ天地(ウチ)に来るってことは、訳アリの人?」

「…まあ、そうなんだけど」


生管法は天地国民(●●)に適用されるから、移住してきて国籍を取る人も対象になる。

つまり配偶子を提供して不妊手術を受けないと移住が認められないってこと。

天地(ここ)で生まれたネイティブ(わたしたち)なんかは「そういうもの」って思っているけど、持って生れた配偶能を手放すのは、外の人にとって覚悟の要ることらしい。

そんな条件でも移住者は来る。

移住を希望する理由はひとそれぞれだけど、移住者のほとんどは「自分の配偶能に興味が無い、あるいは嫌悪してる(●●●●●)」って聞いたことがある。

典型的なのは同性愛者、LGBTでいうところのレズとかゲイ

周囲の不理解に傷ついて、新天地を求め天地(アマチ)へ。── ってよくあるパターンらしい。


「ちょっと違うみたいなんだよね。メグミ、『バツイチ』なんだって」

聞き覚えの無い単語に「ん?」ってなる。

「ゴメンちょっと待って、『バツイチ』ってなに?」

「『バツ』が離婚の意味で、『バツイチ』は一回離婚してるって意味だって」

??離婚がバツなら結婚はマル?バツイチならマルイチでもあるんじゃないの?

── って思ったけど、ここでウサにツッコんでも仕方ないし、脱線するだけっぽいからやめた。


「でね、その離婚の原因が『妊活』の失敗なんだって」

も一回「んん?」ってなる。

「何度もゴメン、『にんかつ』ってなに?」

「そうだよね、私も最初わかんなかった。妊娠活動の略でパートナーで妊娠を目指すことらしいよ」

「ふーん。妊娠活動で妊活ね。初めて聞いた」

…それにしても妊娠、ね。

お腹の大きくなった女性は、動画(ムービー)とか教科書(テキスト)で見たことがある。

毎月やってくる鬱陶(うっとう)しい生理が、そのシステムの一部なのも習った。

そう、知識としては知ってる。

でも天地ネイティブ(わたしたち)には実感がない。

妊娠を望んで叶わなかった女性(ひと)、その心情、ちょっと想像が追い付かない。

「んで、そういう感じのメグミさんに『わたし達の子供』って言っちゃったんだ」

「そうなの…」ウサは自分の言動を説明して、改めて凹んでいる。


私としては、もう一つ気になるコトがあるんだけど、いったん置いとこう。

それよりも


「なんかイマイチ納得できないんだよね、なんで妊活に失敗すると離婚になっちゃうの?

別に子供ができなくたって、二人で暮らしてけば良いんじゃないの?」

「ん~、メグミも、そのつもりだったみたいなんだけど、相手の男から一方的に離婚だったみたい」

「ふーん、なんか意味わかんないね」

意味わかんないとは言ったけど、私たちはその理由を知ってる。

血縁で繋がる集団、家族(ファミリー)ってやつだ。

知ってるけど、理解はできない。だって天地(ここ)には存在しないものだから。

「家族ねぇ、そんなに大事(だいじ)なモノなのかな」


グラスに残ってたワインを一口で空ける。すっかりぬるくなっていた。

「出よっか」


文中で月経について触れる記述があります。

不妊手術を受けているのに?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんので、念のために解説です。

天地で行われている女性向けの不妊手術は卵管結紮(らんかんけっさつ)という方法です。

こちらは施術によって月経が止まるようなことはありません。

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