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03.チェックイン:天地プラザホテル

天地(アマチ)にはいろんな人が、様々な目的で訪れます。

ビジネスだったり、観光だったり

天地(アマチ)に三つある星付きホテルのひとつ、天地(アマチ)プラザホテル。通称『アマプラ』

フロントでチェックインを済ませた客が数人、会話を交わしながらエレベーターホールに入ってくる。


その先頭に声を荒げる人物がいる。

「実に非効率だ。僕はこういう形式めいた行事が嫌いなんだよ、君たちも知っているだろう」

その横にいる人物がなだめるように応じる。

「しかし会長。会長ご本人が直接視察することが、提携の条件でした。こればかりは致し方ありません」

すると会長と呼ばれた人物が、周りを睨む。

「本当に『致し方なかった』のか?

君たち、視察の同行にかこつけて、このコロニーに何か別の目的があるんじゃあないか?」

「・・・」返事はない。

『会長』は鼻を鳴らす。

「フンッ、まあいい。非効率だったが、まったく収穫が無かったわけじゃない。

天地(アマチ)の技術力の高さが直接確認できたのも確かだ。

戻ったらすぐに、提携の詳細検討に入ってくれ」

「はいっ」

「今日はもう解散にしよう。みんな、ゆっくり休んでくれ」

挨拶を口にする取り巻きたちに向かって、ぞんざいに手を振る。

(羽目を外し過ぎるなよ)とか言おうかと思ったが、思いとどまった。

彼らも大人だ。信用することにしよう。

ここからはプライベート。『会長』は、取り巻き連中と別れてひとり歩き出す。


エレベーターホールを進んだ最奥にあるのは、最上階のロイヤルスイートに向かう専用の直通エレベータ。

その横には会長の荷物を収めたトランクキャリーがあり、ベルガールが控えてている。

「Excuse me,Mr...」

ベルガールが口を開くが、被せるようにして話を(さえぎ)る。

「ああ、待ってくれ。会話は日本語で構わない」

ベルガールは一瞬驚いた表情をするが、微笑を浮かべすぐに対応する。

「承知いたしました。

堪能でいらっしゃるのですね」

「母方が日系でね。

僕の経歴は割と有名だと思ってたんだが、まだまだということかな」

ベルガールは頭を下げる「申し訳ありません。不勉強でした」

「いや、気にしないでくれ。言ってみれば客のプライベートでもある。

仮に知っていたとしても『知らないフリ』が正解だよ」


ベルガールは、もちろん知っている。

希代の起業家であり資産家、マイク・スン・ロー。

凋落気味だったロー家を、あざやかに復興させるストーリー。

さらに、その立役者のマイクがロー家の嫡子ではないという、大衆好みでドラマチックな背景も相まって、半生記はベストセラー。映像化のうわさも聞く。


メディアではよく見る顔だけれど、実際に見るとだいぶ印象が違う。

少しつぶれた丸い鼻の周りに、うっすらとそばかすが散っている。

頭髪は赤っぽい茶、癖毛なのも手伝って映像で見るより幼く見える。

先の取り巻き連中のなかに黙って混ぜたら、もしかしたら一番下っ端に見えてしまうかもしれない。


軽やかな到着音がホールに響き、エレベータの扉が開く。

「コリオリ力が働きます。乗車後はお近くの手すりに おつかまり下さい」とアナウンスが流れる。

コロニーでも通常のエレベータならほぼ問題ないが、60階、300メートルを一気に駆け上るこの直通エレベータでは、若干のコリオリ力を受ける。

人間なら手すりにつかまる程度で問題ないが、重たいトランクの場合は滑り始めると危険なため、ベルガールはキャリーをロックする。

マイクはアナウンスに従い、素直に手すりを握る。

ホテルの外に飛び出した形のエレベータは、三方がガラス張りで外の景色が眺められるようになっている。

しかしマイクは、外の景色ではなくベルガールに見惚(みとれ)れていた。


彼女はエレベータの操作盤に向かっている。

マイクの立ち位置からだと横顔が見える。

(横顔くらいがちょうどいい。正視されたら挙動不審になりそうだ)

ブロンドの長髪を一本のおくれ毛もなくピシリとまとめ上げ、制帽に収めている。

メイクは控えめで、特にアイメイクなど何もしていないようだが、パチリとした目と大きな瞳が印象的。

唇は淡いオレンジ。決して強い色ではないが、そのツヤが目を引く。

地味な制服に身を包んでいるが、制服では彼女の恵まれたプロポーションを隠し切れていなかった。


(・・・目的階になんか着かなければいいのに)


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