16.私たちの子供
メグミさんに、なにかメッセージが届きました
「ん?」
今の通知音は、メグミ宛のメッセージだ。
「なんだろ?見てくるね」
メグミは立ち上がってベッドルームの方に行った。自分の端末で確認するみたいだ。
「いってら~」
壁モニタにはまだ世界陸上が映ってるから、気を使ってくれたのかな?
天地の選手はもう出ないから、別にもういいんだけど。
メグミには、仕事の関係で難しいメッセージがくることもあるし、壁モニタじゃない方が都合が良いのかも。
でも、休日に来るのは珍しいな。
キッチンに行く。
ミ□は、美味しいし体にも良いんだろうけど、朝はカフェインでシャッキリ感も欲しいんだよね。
インスタントコーヒー混ぜたら変かな?
あ、試してみる前に検索してみようかな。
緑色のパッケージを手に考えていると、キッチンの入り口にメグミが来ていた。
「何だった?お仕事関係?」
「・・・」返事が無い。
「メグミ?」
顔を上げると、笑ってるような、困ってるような表情
「こんなのが来たよ」端末を差し出してくる。
受け取って確認すると、コレは…
「出生通知じゃん、おめ・・・
これ、『おめでとう』で、良いんだよね?」
メグミは私の反応を見るまで、通知が本物かどうか半信半疑だったみたい
「コレ、本当にある通知なのね?
…じゃあ本物だったんだ」
「本物だよ。デジタル署名も有効だし。ホラこの緑のマーク」
「そうか。うん。本物だね。
…そっか、私の、子供か…」
メグミの返事はおざなりだ。私の説明も耳に入ってない感じ。
「…」
そしてメグミは黙り込んでしまった。
私は急に不安に襲われる。
出生通知は、メグミの配偶能が正常だったって証拠だ。
つまり、例の妊活失敗の話も、離婚の話もやり直しができるってことになっちゃわない?
え、ちょっと待って、メグミが居なくなる?
ヤだヤだ、そんなのいやだ!
思わず駆け寄って抱きしめる。
「メグミ!いなくならないで、
こんなことで、地球に帰るとか言わないで!」
するとメグミは、
ふっと笑って私の背に手を回した。
「大丈夫、帰らないよ。
過去に向き合うって言ったけど、戻りたいとは思ってないし」
──────────
「なんかごめんね、驚かせた?」
「もう、びっくりだよ。急に黙っちゃうし」
「あ~ごめん。なんかね、やっぱり色々あったでしょ?
自分の配偶能を疑ってた、っていうか多分ダメなんだろうって思ってたの。
そしたらコレでしょ」
今、壁モニには新生児データが映っている。
出生日時は、今朝。
体重 3,270g、身長 49.0cm、あとは胸囲、頭囲。
「嬉しかった?」
「うーん。正直言うと、突然すぎてよくわかんない。
私の卵子に配偶能があった、っていうのは、うん、良かった…のかな。
でもそれも、もう今更よね」
「天地に来たこと、後悔してない?」
「後悔?してないよ。
私には、この社会が必要だったの。
配偶能があるって判ったって、それは変わらない。
むしろ、この子が生まれたことで、私が天地の一員になれたような気すらしてるの」
そこで、私は気付いた。
「そうか!そうだよ。この子が生まれたってことは、メグミの遺伝子も『アマチ人』の仲間入りってことじゃない?」
「あ、みんなミックスされた『アマチ人』?
ふふっ、そうだね。
それって『私たちの子供』だね」
「うん!そうそう」
メグミ、改めて言うよ。
『ようこそ、天地へ』
- Fin. -




