11.アマプラ6001:その夜
ルウさんを呼んだマイクさん、その夜のお話
「首相は歴代ずっと女性なんだろ?たしか、ビッグママっ呼ばれてるんだっけ?
そういえば、今日視察した研究所の所長も女性だった。
一般企業の取締役女性比率も高いらしいし、天地の女性のパワーは別格だよ。
やっぱり妊娠出産ってのは、ものすごい負担ってことなんだろうな」
マイクは話し続けながらバーカウンターに行き、手近な瓶から酒を注ぐと、戻ってきてソファに身を沈める。
「それから、天地で驚異的なのは、教育機会の格差がほとんどないってことだよ」
私は向かいのソファに浅く腰掛けて相槌を打っている。
「そうですね、子供のころから全員一緒ですから。他国で聞く『家庭の事情』というのはありません」(というか、そもそも『家庭』が無いのよね)
「うん。僕は、その成果だと思っているんだけど、天地からは優秀な人材が沢山出てる」
「そうなんですか?」
「そうさ。僕は今回のプロジェクトで各国の研究施設を回ったんだけど、ほとんど どの施設にも天地出身の研究員がいた。国の規模から考えるとちょっと異常な比率だと思うな」
「知りませんでした」(知ってたけど)
部屋に呼ばれてから、ずっとこんな調子だ。
(参ったな~。いざとなると照れちゃって行動に出られないタイプだったのか。
私はシないならシないでも良いんだけど、オシゴト的にちょっとマズいのよね~
ちょっと仕掛けてみようかしら)
「性サービスで国が成り立っているなんて、とんでもない誤解だよ!
天地は医療分野、特に再生医療に関しては世界トップレベルだ。」
私は、フルートグラスに注がれたまますっかり温くなったシャンパンを一口飲んで、立ち上がる。
「まあ、ありがたいですわ。
でも私はこの仕事に就けて良かったと思ってるんです。
一夜限りですが、こうしてマイク様にも出会えましたし」
『一夜限り』を強調しながら、ゆっくりとテーブルを回り、マイクの隣に座って身を寄せる。
見上げるとマイクと目が合う。
「ルウさん...」その視線は熱を帯びていた。
(あ、これはイケる)
ちなみにルウさん、お部屋に呼ばれてからは尊敬語を使ってません。
マイクさんは気づいてないでしょうけど。




