接吻大作戦
「琥珀ちゃんが元就のバカ野郎とデートするだって?一体どういうことだ」
律は驚きながらペンギンに話しかけた。
「言った通りだよ。このままふたりはすくすくと育ち、愛を育み、家庭を作りやがて子を産む」
「待って待って待って待って!話が飛躍しすぎ!いったい何がどうなってそうなった!?」
律は苛立たしげに貧乏ゆすりをする。
「言うのを忘れてたけど、僕は未来から来た亡霊なんだ」
「なるほど?未来だとあのふたりは結婚していると?」
律は肩をガクリと落とす。
「まだあきらめることはないよ。君にもチャンスはある」
「本当に?」
律は半信半疑のまなざしをペンギンに向ける。
「何を隠そう僕は、君を琥珀ちゃんと結婚させるために君にとりついたんだから。元就以外で彼女に子どもを孕ませるチャンスがあるのは君だけだと見込んでね」
「ずいぶんと買いかぶられたもんだな」
「未来は変えられるさ」
「なんで君は未来を変えたいんだい?」
「それは、悪の秘密結社クロガネ団を守るためさ」
「クロガネ…団?」
「僕は、生前はクロガネ団の団長のペットのペンギンでね。歴史を変えに来たんだ。クロガネ団は、人工知能を駆使して世界征服をたくらんでいていたんだが、ある邪魔者に阻まれて夢半ばに頓挫してしまった……実に残念なことだ」
「まさか、その邪魔者って……」
「島野元春、島野元就の息子さ」
「また。ずいぶんと戦国時代好きなやつがつけたような名前だな……。それはともかく、なるほど、その元春というのがこの世に存在しないようにするために、君は琥珀ちゃんと僕を結婚させにきたというわけか」
「そういうことだ。君と琥珀の間に生まれる予定の子どもは、ゆくゆくはクロガネ団の科学者に育てたい」
「なるほど、お互いの利害一致というわけか」
律はペンギンのひれと握手をする。
「で、デートをどうするつもりなんだ?」
「簡単なことだよ。デートは親子同伴、当然、子どもたちだけで出かけることは許されるわけもなく、引率の保護者として虎尾鯛助という男がついてくる。佐藤家の保護者経由で彼に働き掛けて、遊びに連れて行ってもらえばいいだけの話だよ」
「なるほど……デートを妨害すると」
ふむふむと律はあごを触る。
「妨害だけじゃ足りないね」
ペンギンは肩をすくめる。
「じゃあ何をすればいいのさ?」
「キスだよキス」
「キス?」
「接吻。彼女の唇を奪うと君はやつに男として一歩リードできる」
「ええっ!琥珀ちゃんにキスしろと!?」




