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心の闇

「琥珀、ハッカーにでもなるするつもりかい?」


ウサギはぱちくりとした目を見開いて少女を見つめた。


「何を今さら。自分の命がかかっているのになりふり構ってられるかい?」


少女は覚悟を決めた目で微笑み見つめ返していた。


「なんのCookieを調べるの?」


「村八島のSNSのアカウント名、できればパスワードも」


「ブラウザでSNSやってないタイプかもよ?最近はパソコン使わない人増えてるし、スマホのネイティブアプリオンリーかも」


「もしそうだとしても、その時は、他にもやりようがある。最近のSNSは、電話番号を強制的に登録させることもある。メールアドレスから特定する方法もある。一つ、ダメなら他を試せばいい」


少女は落ち着き払っていた。


「IPアドレスから特定する方法も」


ウサギは横からアイデアを出すが琥珀は否定する。


「ダメだ。固定IPアドレスだったらいいけど、インターネットサービスプロバイダの多くは動的IPアドレスだからタイムスタンプと紐づける必要がある。それに、VPNを通していたら、さらに特定しにくくなる」


専門用語でまくしたてる琥珀に対してウサギは感心する。


「ずいぶんと調べ上げてるんだねぇ」


「自分の武器となる能力で何が実現できてなにが実現できないのか調べるのは当たり前でしょ?」


米国の1970年代においては、幾人もの発明家が、電話システムをハッキングし、無料でかける方法にチャレンジした者が幾人もいたという。


その中には、事業家として成功した者がいる。


同様の才覚をウサギは少女に見出した。


「見つかったよ。つぶやく系のSNSのアカウント」


「なんて書いてある?」


『世の中、バカばかり。政治はデタラメ、財界は政府と癒着して私欲を貪る』


『女なんてクソだ。陽キャなんてクソだ。やつらに男を見る目なんてない。俺様をバカにしやがって。いつか痛い目を見せてやる』


ウサモフは読み上げた。


「意外性がなさすぎる。車内の会話からわかる人物像通りのことしか書いてない」


男の意外な一面から、会話を掘り下げていきたかった琥珀はがっかりした。


「で、それになんか反応ついてるの?」


「『負けるな復讐してやれ』『負け犬が何かぬかしておる。やれるならやってみろよ!できねえんだろ

できねえんだろ?チキン野郎!』」


「ふーん。本人単独のつぶやきじゃ見えないものが見えてくるね。ネット依存していて、かつ、日々、毒づいてるとおかしな人間が周囲に集まってきやすくなって、一層視野が狭くなり、精神的に追い詰められていく」


ウサモフは続いて読み上げる。


『学歴があれば……大学院まで行っていれば俺の人生は違った』


「それはちょっと違う……」


琥珀は俯きながらつぶやいた。


「学歴があれば人生うまくいくわけじゃない……」


琥珀は明確に村八島に聞こえるように話しかけていた。


「お兄さん。ポスドク問題って知ってる?」

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