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尾行

日本国憲法19条、思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。。


元就は、この条文を反芻した。


悪人が居て、何かを良からぬことを考えていたとしても、それだけを理由に逮捕するのは許されないことだと、法律では解釈されている。


今の段階で不審者を警察に突き出そうとしても無罪放免になるだろう。


仮に、もし、その条文がなかったとしても、心を読んで殺しを企んでいたから警察に突き出す?


それで警察は納得するだろうかと元就は考える。


もし、今、薬品や爆発物、刃物のようなものを、持っていればおそらく警察は動いてくれるだろう。


だが、服装を見た限り、そのような目立ったものを持ってる様子はなかった。


「ちょっと別の場所で遊ぼうか」


元就はふたりに提案した。


無差別殺人はなるべく防ぎたい。


それができたら最善である。


だが、仮に発生したとして、最低でも目の前にいるふたりを巻き込まない。


それも、次善の策として講じておく必要があった。


「なんで?」


「いいからいいから!」


ごっこ遊びに夢中になっているふたりの手を引っ張り、屋外トイレ裏に誘導した。


「あの、ちょっと怪しい人がいるんだ。危ないかもしれないから隠れよう」と元就は言った。


「怪しい人?」と琥珀は不安そうに尋ねた。


「今日は日曜日だし、先生に言おうにもいないし、お巡りさんに言う?」


天音は冷静だった。


「でも、怪しいだけで、まだ何かしているわけじゃないんでしょ?」


琥珀も元就と同じ疑問を呈していたその時だった。


男が、何か心変わりしたのか立ち去ろうとした。


3人はほっと胸をなでおろしながらも、元就は、すかさず心を読む。


『こんな小さな学校じゃなく、都会のもっと大きなところで、事件を起こしてやる!』


「都会の、ほかの場所で事件を起こそうとしている」


元就はつぶやく。


「なんでそんなことわかるの?」と琥珀は当然の疑問を呈するのをよそに天音は行動を開始する。


「なにしてるの!?」と諫める琥珀に対し「尾行するに決まってるでしょ!」と天音は返事する。


「本当の探偵になった気分じゃない」


「危険なことはやめておいた方がいいよ」


それこそ、不審者であれば、警察に任せておけばいいと琥珀は思ったが、足の速さで天音に勝てず、引っ張られていってしまう。


住宅街の中に男は入っていく。


自宅にでもいったん帰るのだろうか。


「あれ?どこか行っちゃった」


3人は男を見失った。


琥珀は、元就は、各々天音に必死で追いつこうと走り、ぜいぜいと息をあげる。


「天音ちゃーん。待ってー」


琥珀がそう言おうとしたそのときだった。


ナイフが首にあてられた。


「もしかして、僕を尾行しているのかい?」


琥珀が見上げると男がにらみつけていた。

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