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意外な真相

「……そうか。そういうことだったのか」


事件の真相を知った元就は少し後悔していた。


今更、大人ぶって、第三者ぶって、子どもたちを諫めるにはふたりとも、喧嘩に深入りしすぎた。


給食泥棒の犯人を当てたところでなんだというのだ。


子どもからしてみれば大金だが、言ってしまえば、たかだか数千円のお金である。


学生が、居酒屋で飲み放題コースを頼めば消えるほどの金額でしかない。


「みんなごめん!」


元就は頭を下げた。


「犯人捜しはやめるよ。犯人が誰かわかったところで、なんだっていうんだ大事なのはお金じゃない。僕たちの友情だよ。お金は返ってくるかもしれないけど、壊れた友情はなかなか戻らない」


「何をいまさら!」


責めるものもいたが周りの者が制止する。


「許してあげようじゃない!」


居丈高な言いぐさをする女子もいたが、元就は我慢して頭を下げた。


ここで言い返しては元も子もないことを人生経験で知っていた。


「私も勝手に4人の名前を挙げてごめんなさい」


琥珀も誤った。


「ごめん。俺も悪かったよ」


「私も……きつく言ってごめん」


あとは、早く早まったもの勝ちだと言わんばかりに皆が順番に頭を下げていった。


小学校の空気とはちょっとしたきっかけで一変するものだった。


元就も琥珀も懐かしさを感じていた。


「ちょっと……何なのこの騒ぎは?」


遅ればせながらも先生が駆け付けた。


2人はこってりと叱られた。


「琥珀ちゃん。ダメじゃない。お友達の名前を勝手に、しかも先生のメモを見たのね?」


「ごめんなさい……」


琥珀は、涙目になっていた。


その日、琥珀、元就、天音の3人は一緒に帰宅の途についた。


営業先から帰るサラリーマンが、女子2人に囲まれて話しかけられている男子の姿を見て嫉妬した。


「え、結局、給食費、持ってこなかっただけなの?」


琥珀は驚きの声をあげた。


「ああ、親が持たせなかったのを言い出せなくて、盗まれたことにしただけだってさ」


と、元就は説明する。


「それじゃあ、みんなあんなに騒いで……ちょっとかわいそうだね」


と天音は続けた。


琥珀も首をかしげながら言った。


「ねえねえ、でもどうして本当のことを言わなかったの?」


元就は深く息を吸い込み、言葉を選びながら答えた。


「うーん、多分、恥ずかしかったんだと思うよ。家庭の事情っていうのは、なかなか他人には話しづらいことだから」


「ちょっとわかるかも……」と言ったのは天音。


「うちの家も給食費を出さないとはさすがに言わないけど、ぎりぎりのところで生活してるから」


その言葉の重さに沈黙が支配する。


「ところでさ……」と琥珀は話を変える。


「なんで、そんな先生も隠している事情を君が知っているの?」


「え?あ、ああ」


心が読めることを言うべきか。


元就は焦った。

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