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リアル鬼ごっこ

「琥珀ちゃん。一輪車で遊びましょうよ。みんな、一輪車に乗ってるよ」


利発そうな女の子が転校生を誘う。


みんなやっているからやる。


きっと大人の男がそんな理由で自分がやるべきことを決めたら、「お前に自主性はないのか?」とかえって詰められることだろう。


琥珀は、今まで住んできた世界とは違う条理で動いている世界にやって来たことを実感する。


「うん。わかったー」


琥珀はにかっと歯をみせて笑った。


子どもの世界に女子の世界にやってきた以上は、長いものに巻き込まれて置くことも大事である。


「そんなことより鬼ごっこしようぜー。参加するやつー」


と、大声で男子が割り込んできた。


利発女子は睨み返したが、周囲の女の子がわらわらとついていく姿を見てしぶしぶついていった。


子どもの世界とはそんなものである。


「ごめんね。琥珀ちゃん」


「いいよ。気にしなくても」


「私の名前は、天音(あまね)。よろしくね」


「よろしく!天音ちゃん」


琥珀ははじめて友達ができた。


大人の世界は友達という概念に振り回され、人との距離感に悩む人間は多いが、子どもの世界では、お友達になれるハードルが低く気軽であった。


「じゃーんけーんぽんっ!」


みんながグーを出し、琥珀がチョキを出した。


「琥珀ちゃんが鬼ね。10数えてからスタート」


逃げて行った子どもの顔を覚えつつ、琥珀はわざと舌っ足らずに数を数えた。


「まてー」


琥珀は、近くにいる男の子を追いかけたが、すいすいと逃げていき、徐々に距離を離されていく。


あきらめて近くの女の子に近づくが、これもまた、距離を離されていく。


どうやら、この体は身体能力は同世代の子どもたちと比べても低いようだった。


「ぜえ。ぜえ」


息があがる。


きっと、成人男子だった頃の不摂生な生活もたたっているに違いないと琥珀は思った。


「琥珀ちゃん!私にタッチして!」


天音ちゃんが素早く走って、近づく。


「えーでもー……」


琥珀がもじもじしていると、天音はわざとひじを近づけて、琥珀の手のひらにくっつけた。


「あーっ!女子ずっる!」


お調子ものそうな男子が、指さす。


「ずるいのは、転校生にずっと鬼を押し付けてる男子でしょーが!」


クラウチングスタートのポーズを琥珀の足元で取ると、ロケットスタートをし、わざと足が早そうな男子に狙いをつけると、素早くタッチする。


鬼ごっこというものは、ややもすれば、足の遅い子いじめになりがちなものである。


そんな中で、上級生や足の速い子などが、率先してバランサーとして機能することで、みんなが楽しめる遊びへと変えていく。


そうやって、成功と失敗を重ねながら子どもは成長していく。


天音は、優しくていい子だなと琥珀は思った。

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