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スカートとスラックス

「制服?」


少女はそんなことは聞いていないとばかりに驚きの表情を見せた。


「そうだ。お前は今日から琥珀として生きることになった。戸籍上は10歳。小学3年生として義務教育を受けるはずの年齢だ」


研究者として助手ができると思っていた計画がガラガラと崩れ落ちていった。


「また、小学生からやり直せと?分数の足し算を…地図記号を…もう一度この年になって覚え直せというのか」


「もう一度、今度は女として甘酸っぱい青春を、思春期を送れると思えばいいではないか」


「他人事と思って好き勝手言う……」


虎尾鯛助教授は、児童制服のカタログをぱらぱらとめくった。


「この学校だ」


序盤のページにその制服はあった。


活発な男児と女児が手をつないでいる写真。


ベージュをベースカラーとしたジャンパースカート。


おしゃれで都会的はいいがたく、むしろ野暮ったい芋っぽいと言ってもよい。


「公立か?」


「確か、お前の一週目の人生は、私立のエレベータで進学したお坊ちゃんだったよな、名門私立付属の」


「一週目とか言うな。ゲームじゃないんだから」


「まあ、お嬢ちゃんとしての二回目の学校は、お前も庶民的なところで世間の荒波にもまれた方がいいんじゃないかと思ってな」


意外と自分の教育について真剣に考えてくれているのかと女児はまじまじと教授の顔を見た。


「ん?どうした」


「いや、なんでも」


琥珀は話題をそらすことにした。


「スラックスもあるのか……」


「まあ、今時の学校はジェンダーレスな制服も流行っているようだし」


「じゃあ、そっちで」


「スカートいらないのか?」


「自分のことを女だと意識するようなものは身に着けたくない。一応、大人の男だし」


「まあ、普段スラックスはくにしても一応、持っておくだけでも持っておけば」


「はかないけどな」


「じゃあ、もし、履くような日が来たら、自分を女として意識しだしたと」


「うるさい!そんなこと言われたら絶対、元の体に戻るまでずっと履かない。履く日なんて来るものか」


教授は生暖かい目で琥珀を見た。


「な、なんだよ」


「いやあ、かわいいなと思ってね」


「ひいいっ。そんな目で僕のことを!」


「いや、純粋に姪っ子がいたらこんな感じだと思ってね」


教授は目を細めそして、眠りに落ちた。


連日の研究で疲れているようだ。


琥珀は、毛布を教授にかけた。


「ちょっと、今夜は料理してやるか。不摂生しているみたいだし」


冷蔵庫を確認し、意外と食材が充実しているを確認すると野菜炒めのレシピをパソコンで検索した。

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