自白
「パインアメたべたいなあ」
助手は、さらに鎌を掛けることにした。
「だ、ダメよ。お嬢ちゃん。あとでね。ね、ねえ?警部さん」
「なんで?毒が入っているわけじゃあるまいしー」
助手が、キラキラした目線でそう言うとピリッとした空気で張り詰めた。
警部はさらに踏み込んだ。
「鞄とアメを少し鑑識に調べさせてもらっていいですかな?」
すると、講師は俯きやや低いトーンの声で言った。
「悔しかったんです……」
そういわれた警部はポカーンとしていたが、しばらくして、彼女が殺人の動機を語ろうとしていることを理解した。
「あの学生風情に、私が長年かけてやってきた研究を出し抜かれるなんて、耐えきれないことだったんです。きっとあいつは私の研究の成果をこっそりのぞき見して、盗んだに違いないんです」
「それは、ご自身が犯人と認めるということですかな?」
「はい……」
「署まで来ていただきましょうか」
警察は彼女を毒物及び劇物取締法違反で逮捕した。
後日、殺人容疑で再逮捕されることになるだろう。
かくして、教授と助手は自由の身になったのだった。
「にわかに信じられないが、君は本当に牛野くんなのかね?」
「だから、そうだって言ってるじゃないですかー!」
「そうか。ずいぶんと美少女なのになんか妙にそそられないのは君だからだったのか」
「キーッ!発情されるのも嫌だけど、それは、それで、なんかむかつく!こっちがひな鳥の呪いで苦しんでるのに」
助手は、教授にときめいている自分に歯がゆくなった。
その姿をウサモフは生暖かい目で眺めていた。
(呪いだなんて出まかせの嘘なんだけどな。男だからと隠そうとしていた潜在的な教授への恋心が女体化することで全解放されただけ。ああ…なんて甘美な関係)
ウサギは女体化BL系の腐女子のペットであることを助手はすっかり忘れていた。
牛野助手は、小学生の女の子の体になることで独り暮らしをするのは難しくなった。
「うちの家に来るかね?姪っ子設定で」
教授が助手に声をかけた。
「ふむ。君の名前は虎尾琥珀だ」
住民票を見るとなぜか10歳の子として実在する名前であった。
助手は、教授の家庭の事情の闇深さに恐怖おののきつつも、ありがたく琥珀としての新しい人生を頂戴したのであった。