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ファーストコンタクト

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 あるとき、江戸時代に日本地図を描いた伊能忠敬は元々は天文ファンでそれが高じて隠居後、幕府の塾に入ったと知った。測量して回ったのは地球の大きさを知りたいが為だとか。


 まあ、わかる。夜空にはロマンがある。月、星空、そして光害がない時代には銀河が見えていただろう。父の友達も天文ファンで、定年後は田舎に引っ越して退職金で数百万はする天体望遠鏡を買い込んで夜更かししている。


 僕は大学を出てメーカーに就職したら地方の工場に飛ばされ、周りになにもないところで日々夜空を眺めることになった。


 オリオン座。実際にみてみると馬鹿でかい。中学生の頃は種子島宇宙センターでロケットの打ち上げをするのが夢だったのにどこで間違ってしまったのか?


 理系は揺るがなかったけど、工学部に入り、宇宙とは縁遠い会社に入ってしまった。仕事があるので夜更かしもできない。地方の工場は始業時間が早いのだ。月食、流星群のイベントくらいしか空を眺めなくなった。


 工場には地元採用の女性がたくさんいる。僕のどこがいいのか、声を掛けてくる女の子も何人かいた。不倫の話も聞くようになった。


 肉食系の先輩から「どんな女の子にも30人の同性の友達がいるから仲良くしとけ」とアドバイスされたが、そんなゴキブリみたいなこと言われても。


 面倒くさいことには巻き込まれたくないので。正直、母がバツ3なので結婚生活に期待などしていない。どうして母は1回で懲りなかったの? と聞いたら、お前を育てるためだよとか言われて、ますます嫌になった。


 星は良い。裏切ることも無く常に夜空にある。中でも好きなのが北極星だ。

 地元で一番大きな書店に行って、宇宙論の本や、星座の本とかみてると、年配の女性が話しかけてきた。


「星、好きですか?」

「ええ、大学でロケット関係を少し……」

「まあ、素敵」女性は目をキラキラさせながら言った。「宇宙ってロマンありますよね。スター・トレックとかお好き?」

「毎週、深夜に放送していたのを楽しみにしてました。あ、大学は東京だったので……」

「よければ天文学の集まりが月一で開催されているので来ませんか?」


 ああ、ここにも天文に取り憑かれた人々が居るのか。仕事と家の行き帰りでウンザリしていた僕は参加することにした。

 連絡先の交換をして、本を一冊買って帰った。


 後で参加して分かったのだけど、メンバーは高年齢で、僕が大企業に勤めていることを知ると自分の娘や孫を紹介してくるのだった。それも10代の。


 宇宙の話は楽しかったけど、見合い話は勘弁して欲しい。星は彦星と織姫みたいにカップリングされることもあるけど、現実は孤独なんだよ。


 そう言ったら、君は異星人の存在を信じないのかいと答えづらい質問が飛んできた。トレッキーにその質問はないんじゃない? 確かに、ロケット飛ばしたり観測したりする意味が無い。ファーストコンタクトに期待している所は確かにある。


 で、明日、見合いである。断り切れなかった。僕はどうしたらいい。

ここからショートショートの4冊目(の予定:2023/08/20の時点で未刊)

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