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鎌倉千一夜  作者: Kamakura Betty
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第9夜 野良亀

 江ノ島南端の岩屋洞窟は富士山麓鳴沢氷穴から地下でつながり、その気道が富士山のパワーを島へと運ぶとの言い伝えだ。距離にして90kmほどの長大な気のパイプラインミステリー。たしかにロマンはある。江戸の頃も江ノ島詣は盛んだった。相模湾の幸とパワースポット体験のレジャーはいつの時代でも魅力的なのだ。

 さて、鎌倉街中にも小さなパイプラインミステリーがある。その洞は鶴岡八幡宮源氏池から滑川へと続いてると言われている。ただしそこに通うのは気ではなく大きな亀。産卵の季節に1kmほど離れた滑川東勝寺橋周辺の道路に突如現れ産卵場所へ向かうのだが…。

       ***

危うく轢きかけたが、今年も来たんだなお前。

そんなノロノロと道路の真ん中を這ってたらよそ見するドライバーにはひとたまりもないぞ。

せっかく卵産みに来てるんだから気をつけろよ。

大体お前は去年来たやつと同じ亀なのか?

バスケットボールくらいまで大きくなれる奴なんてそんなにいるもんじゃないだろうしな。

生垣の根元に卵産んで落ち葉なんかをかけたつもりかもしれないが、

風ですっかり飛ばされて大事な卵が丸見えじゃないか。

ここら辺は野良猫だけじゃなくカラスやアライグマやタイワンリスや青大将やマムシまでいる野生の王国なんだわ。

お前は甲羅に隠れても、卵は無防備だわな。

それにしてもお前はどこからやってくるんだ?

源氏池に同じような大きさの亀がいるけどそいつなのか?

だとしたら池からこの辺まで水路はないから、まさか道を歩いてきてるのか? 

じゃなきゃひょっとしてどこかに地下トンネルでもつながってるのか?

百歩譲って普通に滑川に暮らしてるんだとしたら、5m近いあの東勝寺橋の脇の階段をどうやって上がるんだ? 

他に川から上がれる場所はないよな。あそこを上がるのは鯉の滝登りよりきついんじゃないか?

昔はこんな護岸なんてなく川から山までなだらかな傾斜地だったからどこへでも行けたんだって? 

確かにそうだよな、30年前にはこんな護岸はなっかたもんな。

人間たちが川辺に住みたいからって勝手にコンクリートで固めて

よそから土を持ってきて土地を作っちまったんだもんな。

悪かったな、よければあの卵の上にもうちょっと土でもかけておこうか? 

気を付けて温めな。

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