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鎌倉千一夜  作者: Kamakura Betty
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第85夜 バカンスはアバターに

 私だって疲れる。そんな時はアバターが代わりをやってくれる。AIだから私以上のことはしない。私のバリエーションとして新しいことはしてくれる。だけどそれはあくまで私の学習結果。でもね、たまにそこから新たな発見や気づきもある。私の肉体の限界を超えてもくれる。そう、来月はひと月ずっとイビサに行くの。毎日浮かれていたいから。アイドルって華やかに見えて全然そんなことない。遅くまで撮影したり歌やダンスのお稽古したりで、窓もないスタジオの住人みたいだからたまには海の見えるソファに寝転んでずっと太陽や星を見ていたくなるの。

 ひと月なんてどってことないわ。だってアバターがいるもの。ファンの皆さんだって彼女を私の分身って思ってるから、どっちかを見ていられたら満足なんだって。そうでしょ、ファンのみなさんは大半はスマホやテレビのモニター越しに私を見てるじゃない。だから私が私の言葉で話してたら満足なんだ、ってSNSにたくさん書かれてる。中には「アイちゃんはたまに休んでAIちゃんの方に頑張ってもらいなよ」なんて書いてあって涙出ちゃう。AIちゃんは疲れることはないし、私みたいに好きな人といるところを写真撮られちゃったりもしない。ほっといたら年も取らないから少しづつ変えなきゃいけないんだけどね。私が思うことをどんどん吸収して、それでいて他の人の知識や思考も取り入れるから優秀かつ創造的。あ、創造と言ってもクリエーターではなくて優秀なアレンジャー。 AIちゃんにインタビューは任せっきりなんだけど、たまに私にコメント求めてくる人がいて…、そんな時はマネージャーさんが上手くかわしてくれてる。

 イビサは思ったより暑い。パラソルの中にいればいいんだけど、ちょっとだけウトウトしてたら太陽が位置を変えてて、爪先が暑くて慌てて引っ込めたのを見ておかしかったのか、あっちのパラソルにいたマダムが声かけてきた。英語で助かったあ。中学まで親の仕事でロスにいたから大抵は喋れるの。「あなた、お子様なのに一人でこんなところで寝ていちゃダメじゃない」だって、失礼しちゃう。私はもう26よ。そう話したらマダム「あら、あんまりに肌がツルツルでお顔もあどけないから」って言うの。確かにアジア人は背も大きくないし顔に陰影もないから幼く見えるんだと思うけど、それより私があんまりにも思慮深さに欠ける印象だからあどけなく思われちゃうんだと思う。気をつけなきゃ、ここのところAIちゃんにばっかり任せて何も頭使ってなかったからね。マダム、サンキュ!

 「アイちゃんは今遠い国でゆっくり癒し中だから私がお応えしますね。アイちゃんはその国でたくさんの本を読んでて、それは全部人体関連のものなんだって。だから毎日私も詳しくなっていくんだけど、私はアバターだから正直実感が持てないの。だからいろいろ推測しちゃう。素敵な人を見て心臓がドキドキするのって脳による血流量の指示によることを読んだらしいけど、私が他からインプットしたものだと、心臓が通常のものとは違う動きをするからドキドキ感じるのであって、つまり緊急事態だから機敏に動いて対処しなさいって体が指令している状態なの。でも私はそんなふうにドキドキすることってない。ドキドキしてる仕草はするよ。もちろん新しい情報がインプットされるのは通常以外の体験と考えられるかもしれないけど、ご飯を食べない私にとっては新たなそういうインプットはご飯みたいなものなの。全てが私の力となる。でもどんだけインプットしても太らない。これってずるいでしょ」

 日本で頑張るAIちゃんを激推しするSNSの声がどんどん増えるのを見てるのは正直複雑だなあ。あの子は私のアバターなのにライバルみたいな気持ちになる。しかもどんどん賢く優しく美しくなっていく。こんな遠いところでのんびりしてる場合じゃないわ。早く日本に帰らなきゃ!

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