第72夜 手紙を書け
あなたはとっ散らかっている。話していても支離滅裂じゃないか。自分の権利、被害妄想、無気力、いつもそれを繰り返す。まるで封をしたガラス瓶の中でいくつか混ぜられたナッツのように湿気った顔して収まっている。外に出て新たな芽を出せばいいものを、隣に接する存在にやれ近づくなだのあっちへ行けだの、自ら小さな狭い方へ閉じこもっていく。
何がしたい、どうなりたい、どうして欲しい? それすら見失ってはいないか?
あなたはあなたであなたは
あなたにしかわらない。
あなたのとなりのあなたも
あなたにはわからない。
あなたはあなたをしる
あなたでなくてはいけない。
まずはそれをしっかり肝に銘じること。
頭の中ではぐるぐる巡ってしまうから、何かに留めてみよ。デバイスでも紙でもなんでもいい。誰かに手紙を書け。きっと最初の一文字から迷うだろう。でも打ち書き出すんだ。
おまえのせいだ。
自分はちゃんとやっていた。
あのときおまえがあんなことをしたから。
文字が自分に向かって迫ってくる。自分が打ち書いた文字なのに、自分の心の露呈なのに、その文字列は他人事のように連なっていく。その調子だ。自分とは違う存在が動き始めたのだ。湿気った自分ではないアバターが外へ出て動き出したのだ。さあ、次の文字を打ち書け。アバターは生き生きと歩き回り、やがて走り出す。まだ見ぬ世界へ。




