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鎌倉千一夜  作者: Kamakura Betty
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第54夜 ハッセルの血脈

 カメラマン中澤佐喜雄の掻痒感はなかなか惹かなかった。6×6というフォーマット、正方形の違和感、もどかしさ、どう切り取ってもいいという寛容性が許せない。そもそも目は左右についているわけで、首を直角に曲げるか腕枕で寝そべって見る場合も視界は長方形だ。窓、テレビ、新聞、雑誌、スマホ、PC…すべて目にするフレームも長方形。それが正方形への違和感の原因だ。

 そして中判というサイズ。中庸といえばバランスの良いことだが、”中”というのはだいたいにおいて半端だ。一般的に慣れている35mmより大きめゆえ、全てに焦点を合わせたくなるから意識は散漫になる。“お前の心が動いたのは何に対してだ? 撮ろうとしているのは証明写真じゃないだろ?” 写真は偶然を待つものではない。何か想定外の効果が加味されたのならそれは偶然が祝福してくれただけのことで、撮影はあくまで撮り手の意思が第一だ。作品が雑誌に掲載されたら縦横が逆になっていた、なんてことも正方形には有り得る。それは撮り手の意思が伝わらないから、もしくはそっちの方が面白いと担当者が勝手に操作したもの、いずれにしても残念な結果だ。

 それでも6×6が存在する。35mm横位置は視界の再現だが、6×6は視界以上を取り込んでいるため意識下になかった、もしくは視点がいっていなかった上下の景色もシャッターを切った結果そこに鮮明に写る。それが正方形の価値だ。

 50年以上前、オルドリンとアームストロングがこれから降り立つ月、そして遥か彼方の地球の球体を余すことなく収めるに好都合だったからか世界の目に触れ、正方形は人類の新たな視角の仲間入りをした。帰路の軽量化のためフィルムのみが持ち帰られハッセルブラッド筐体は月面に放置された。それが依然としてそこに存在しているのか、宇宙を行きかう“何か”への贈り物となったのか、それを確かめるには再度そこに降り立つしか手段はない。

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