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鎌倉千一夜  作者: Kamakura Betty
32/155

第32夜 種を、蒔け。

その男の拳は振り上げられた

そしてその手は大きく開かれた

拳の種は風に乗り

荒野に散らばった


何度も何度も拳は振り上げられ

風は時に向きを変え

種はくまなく広がった


風よ来い

雨よ来い

陽よ来い


この荒野を埋めるのだ

様々な色の花で

それはいっときかもしれない

のちに乾きくすみ萎びた野になってしまうかもしれない

だが私は種を蒔き続ける

必ずそれは殻を破り柔らかな緑色を芽吹かせるはずだ


蒔かなければいけない

でなければそれはいつまでもやってこない

拳を突き上げよ

風を呼べ

そしてその手を大きく広げよ

必ずそこは命の色で満たされるから

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