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鎌倉千一夜  作者: Kamakura Betty
133/139

第133夜 ディア ティム

 ずいぶん日本をエンジョイしているようだね。日本はオーガナイズされた国だからティムのようなミニマニストには居心地がいいだろうな。ティムが小さい時に行った京都のキフネという山中でカワドコというレストランに行った時、私に興奮しながら言ってたのを憶えてるかい? 

「ダディ、ボクはこんなにせせらぎのそばでディナーを食べたことはないよ。何かスワンになった気分だ。スワンの夏はこんなにも涼しんだね」そう言ってた。

 私は思ったよ。ティムは動物と人間の違いを何も意識していないんだってね。それからはティムをことある毎に外に連れ出したんだ。憶えているかい? お婆ちゃんの家の裏の湖で泳いだ時のことを。ティムはスノーケルを覚えて、得意げにどれだけ潜っていられるかみんなに見せてたんだ。私はあまりに水の中から出てこないから心配になって見に行ったんだけど、ティムは私に脇目もふらずフィッシュたちと話しているんだ。リビングの水槽はその時に設えたんだ。ティムは毎日学校から帰るとすぐに水槽に額をつけて話してたよ。

 覚えているかい? ティムはハイスクールに進んだ後、ある日私に聞いたんだ。

「宇宙には果てがないけど、そんな遠くの友達に会うことはできないのかな?」

ってね。私は言ったよ、

「ティム、目を閉じてごらん。そしてその友達のことを思ってごらん」

とね。ティムは言ったよ、

「会えたよダディ、ありがとう」

ってね。今ティムが瞑想しているのはそれと同じなんだ。身体という物質に身を置いている現世でも、物理的障害のない本来の行動をとることができるのが瞑想なんだ。

 長い間瞑想という手段を身近に置いてきた日本にいるのだから、何かを掴むまで向き合ってみるといい。そしてティムが気にしていた遠い宇宙の友達に会いに行くといい。今私の足元で寝ているベティがまだ幼犬だった時、ティムのことが大好きでいつも隣に寝てたのを覚えているかい? ティムは私とおしゃべりするようにベティとずっと話していたのを。もちろん声に出して話し合うことなんかは出来ないけど、いつも同じようにお互い楽しそうにくっつき合っていた。宇宙の友達にもあの時と同じように心でやり取りをすればいいんだ。ティムならもう慣れたものでしょ。動物だって植物だって、もっと言えば物だって対話は出来るんだ。それは元をたどればみんな同じ粒でできているから。それを瞑想でイメージすることが対話なんだ。

 もうそろそろそのタケデラでの座禅会の時間なんじゃないか? たくさん対話しておいで。そして元気に帰ってくるのを待ってます。


お元気で


ダッド 

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