蛍火
六月の風と水が
混ざり合う時々に、
明日に咲く紫陽花は
頼もしく麗しく。
会いたさは密やかに、
花を抱く額のように、
昔から散りもせず。
枯れても物語る。
六月の風と草が
もつれ合う時々に、
明日に飛ぶ燕らは
勇ましくいじらしく。
愛しさは込み上げて、
巣に帰る親のように、
遠くから落ちもせず。
何を願うのか。
六月の風が人に
染み渡る時々に、
明日に泣く旅立ちは
サヨナラを有難く。
導かれた命なら
逆らわぬ波のように、
寄せて返す心から
生まれ来た子供。
六月の風と夜が
夏を呼ぶ時々に、
明日に舞う蛍火よ。
柔らかく意味深く。
永遠の一人として、
託された一人として、
感じられるこの世ならば、
優しい光であろう。