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第99話 願い

こんにちは^ ^

またお昼に投稿させていただきました。

マイルドにしたつもりがエグい内容になってしまい……。


申し訳ありません_:(´ཀ`」 ∠):


深呼吸をして読んでいただけたら嬉しいです。

よろしくお願いいたします♪


 喜美は屋上までやって来たイオリの方を見る。


「水乃くんは事情を話してくれた。君たちはどうする? もう後がない」


 ジリジリと近づいてくる喜美。

 イオリは真央に向かって叫んだ。


 「真央、限界よ。トレースバースを喜美所長に渡して。そうすれば全部終わる。もうあなたが苦しむ必要もない。何も考えなくて済むの!」


 「イオリさん……」


 イオリは喜美所長にどこまで話してしまったのだろう。

 戸惑っている真央にアズマはそっと告げる。


 「仕方ありません。彼女もあなたを見ていて辛かったんでしょう。真央さん、トレースバースの研究記録は何処にしまいましたか?」


 「研究室の、あの大きな棚。他の資料に紛れさせて簡単に見つからないようにしてある」


 「なら衣織は気づいていない。喜美所長も研究記録の保管場所までは分からないはずだ。記録さえ処分してしまえば、今ここで喜美所長にトレースバースが渡っても何とでもなる」


 アズマが深呼吸をして冷静に真央を説得する。


 「僕に考えがあります。この場はひとまずトレースバースを喜美所長に渡しておきましょう。そうすれば衣織も安心して……」


 アズマの話を最後まで聞く前に、真央は激しく首を横に振った。


 「ダメ。これは絶対に、渡すわけにはいかないの」


 「なぜ、どうしてそこまで頑なになるんですか!?」


 思わずアズマは声を荒げる。

 それを無視するように真央は屋上の柵へと向かって歩き出した。

 

 「……こんなもの、最初から作らなければ良かった」


 アズマから返してもらったトレースバースを真央は柵の向こう側、下へ向けて力一杯放り投げる。


 「何をするっ! やめろっ!!」


 喜美はそう叫ぶと慌てて屋上から地面を見下ろす。


 トレースバースがどうなったのか、ここからでは分からない。もしかすると落下の衝撃で粉々に砕け散っているかもしれない。

 

 「なんてことをしてくれた……。呆れたよ、君はそれでも脳科学者か! 君の研究は……この世界を動かすことができたかもしれないというのに」


 「世界を動かす? ヨシミ所長、私にトレースバースを作らせた本当の目的は何だったんですか。これも奥さんのため、だったんですか?」


 真央が喜美を睨みつけ訊ねると、喜美は怪しげに笑いはじめる。


 「君は部外者のくせにすぐ首を突っ込みたがる。確かに私がやっている事は全て芽衣のためでもあるが、これは復讐だ。芽衣を見捨て、今もまだのうのうと生きている人間たちへのな!」


 「復讐……。脳科学は、そんなことのために使うものじゃない。ひとりでも多くの人を幸せにしたいと、いつもそう願って研究を続けている人たちだっているんです!」


 「勿論、誰かに分かってもらおうとは微塵も思わない。特に君のような人間に私の考えは分からないだろう。

 脳科学で人を幸せにする? 笑わせるなっ! 

 綺麗事や正義感を振りかざしたところで、この腐った世界では見て見ぬふりをされるだけ。いつだって損をするのは……決まってまともなことを言う人間の方だ」

 

 喜美に何があったのか、真央には分からない。

 ただ脳科学をそんなふうに思って欲しくはなかった。

 

 喜美はため息をつき真央を睨みつける。


 「私は目的の為なら手段を選ばない。トレースバースが壊れたというのなら作り直せば良い。君がそれを拒むというのなら、無理矢理にでも従わせるまで」


 「もし、それでも従わなかったら?」


 頭が痛い。


 やはり喜美のような人間にトレースバースや、それに関わる知識を渡してはならないのだ。


 絶対に守らなければ……。


 本能的にそう感じた真央は屋上の柵に登り、少しでも喜美から遠ざかろうとしていた。


 イオリはその光景に息を呑む。


 「真央……やめてっ!」


 「真央さんっ! 

 まさか、プロテクトのせいなのか……?」

 

 アズマの声を聞き、真央は痛む頭でぼんやりと考える。


 プロテクト。あぁ、そうだ。

 トレースバースに関わる情報が悪用されるのを防ぐための手段。


 自分の脳にかけたプロテクトは、今もこうして喜美から情報を守ろうとしているのか。

 

 アズマが何かを言いながら、真剣な顔をしてこちらに走ってくる。真央にはその動きがまるでスローモーションのように思えた。


 「早く、僕の手をっ……!」


 真央へ向けて差し出されたアズマの手。


 だが真央の手はアズマの手を取ることはなかった。自分の意志とは裏腹に、なぜか掴んでいた柵から手を離してしまう。



 「えっ……?」



 気がつくと真央の身体は柵を乗り越え、仰向けになり屋上から落ちていった。


 「真央さぁぁぁぁぁぁん!!!!」


 アズマの絶叫が木霊(こだま)する。


 暗い藍色の空に青白く輝く大きな月、今夜は満月だ。

 ひどく綺麗に見えた。

 手を伸ばせばすぐ届きそうで、壊れてしまいそうなくらいに――――。

 

 

 グシャアァッ。


 生々しい音と共に真央の身体が地面へと叩きつけられる。


 頭が、身体が痛い。全身がドクドクと脈打つのが分かる。

 それに合わせるようにして、体内から吹き出た温かいものが真央の周りをみるみる紅く染めてゆく。


 「……東くん、君のせいだ。君が()()()()()()()()()せいでもう使い物にならなくなった」



 遠くから喜美の声が聞こえた。



 違う、アズマくんは私を助けようとしてくれたの!



 「僕が、彼女を……突き飛ばした……?

 あ、あぁ……、そうか、僕が、何もできなかった僕が……彼女をこんな目に遭わせてしまったのか……」


 違う、違う、ちがう、チガウッ!!


 そう叫びたいのに声が出ない。

 真央の口からは微かに息が漏れるだけ。


 薄れゆく意識の中、自分を見下ろす喜美と目が合ったような気がした。


 「早くそこらじゅうに飛び散った彼女の脳を掻き集めてきなさい、ひとつ残らず。そうすればまたいつか、君たちの望む『真央』を作ることができるだろう?」


 

 あぁ……この脳にかけた『プロテクト』がどうか、喜美所長の復讐を止めて…………


 その願いを最期に真央はそっと目を閉じて冷たくなってゆく。

 


 それは満月の、酷く綺麗な夜だった。


 

 

 

 


 


 

 


いつも読んでいただきありがとうございますっ!


これが真央の過去なのでした。

喜美と真央、裏と表みたいな存在ですね笑


マオはこの過去を追体験したことになりますが、どうなってゆくのやら……。


また続きを書きたいと思いますので、ぜひ暇な時に読んでいただけたら嬉しいです♪

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