第94話 マオ/真央
おはようございます^ ^
また今日も投稿させていただきました!
ぜひ暇な時に見ていただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします♪
頭が割れるように痛い。
自分の知らない記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
記憶の中で楽しそうに笑っているのは誰?
――――これは、私…………?
「ごめんね、東くん。こんなことまでしてもらって」
肩まで伸びた艶のある黒髪、凛とした顔立ちにパンツ姿のよく似合う女性がアズマに向かって笑いかける。
「いいえ、構いません。力仕事ならいつでも言ってください。これ、どちらまで運びますか?」
「じゃあデスクまでお願いしようかな」
ふたりは研究機材を持ち上げて進み始めた。
「それにしても未光さん。こんなにたくさんの機材、いったい何に使うつもりです?」
アズマが穏やかな表情で尋ねると、女性はこんなことを口にするのだ。
「やだなぁ、真央でいいのに。ねぇ、東くんってさ、お化けとかそういうの信じる人?」
「どうしたんですか突然。でも、どうだろうな。目の前に現れたらそりゃ信じるしかないと思いますけど……」
「そう、それなのよ! 今の研究課題は」
「ふふっ、お化けの研究ですか。それはまた……」
「機械万博でね、どこの国のだったか『お化けと意思疎通が取れる電話』なんていうのが展示されてたの。その仕組みがどうしても知りたくて」
目を輝かせながらデスクへ向かって歩く真央。
アズマはその後ろで相槌を打って話を聞いていていた。
「そこで私なりに考えたんだけど、お化けって人間の電気信号と何か関係してる気がする。それは亡くなった人間のものなのか、生きている人間のものか、寝ている人間のものかは分からない。
でも、人間から出る脳波や電気信号が何かの原因でその場に留まって、現実の世界に干渉したりするんじゃないかって……」
真央は振り返ると、まるで怖い話をする時のような顔でアズマを見つめ声をひそめる。
「ほら、急に電気が消えたり、ラップ音がしたり、電子機器が使えなくなったりする怪奇現象ってあるでしょ。あれってきっと人間の脳波や電気信号のせいで、実はそれがお化けの正体なのかもしれないよ」
「ははっ。真央さん、随分と独創的な仮説ですね」
アズマはそんな真央の様子を伺いつつ、さりげなく名前の呼び方を変えたようだった。
「やっぱりそうかな……? でもお化けが脳科学で証明できちゃうなんて、科学者からしてみれば夢のある話だよね」
「そんな原理を追求しようとするのは、あなたくらいなものですよ」
真央は恥ずかしそうに笑う。
「無線LANみたいに脳波や電気信号を中継できる機械があれば、電話よりもっと驚くようなことができると思うんだけどなぁ。
人間の脳内情報……つまり記憶とか知識がWi-Fiみたいに空気中を飛び交ってるなんて時代が来るのかも」
それを聞き困ったように笑うアズマ。
「それは遠慮願いたいですね。だって飛び交って欲しくない情報まで飛び交ってしまうんでしょう。なら好きな女性のことをどう思ってるのか、その人に知られてしまうじゃないですか」
真央はキョトンした顔でアズマを見ると、すぐに明るい笑顔を浮かべる。
「大丈夫。知られたくない情報は非公開にしちゃえばいい。ちょうどSNSに鍵をかけるような感じで! きっとその頃にはちゃんとそういう仕組みも作られるんじゃないかな」
その返答を聞いたアズマは更に困ったような顔をして笑っていた。
「またそんな話ばかりしてるのね。まぁ、真央らしいと言えばらしいけど。ところで、それも脳内情報とやらを飛ばす為の機材?」
真央とアズマがデスクに研究機材を置くと、PCと向かい合っていたイオリが声をかけた。
「おはようございます、衣織さん。
んー……、そんなところですかね。あ、でも正確に言うと『脳の情報をデータ化してコピーできるプリンター』みたいな感じなのかも」
「何それ、全然分かんない。流石は喜美所長に見込まれた天才なだけあるわね」
「とにかくあと半年で見つけなきゃ。脳内情報を他人同士でやり取りする方法……、この機材が何かヒントになればいいんですけど」
「あなた、最近少し働きすぎじゃない? たまには休みでも取って東くんとデートに行ってきたら?」
アズマが慌てて首を横に振る。
「衣織、真央さんに失礼ですよ。僕たちまだ付き合ってもいないんですから!」
「ふーん……。まだ、ねぇ」
ニヤニヤしながらイオリがアズマの方を見た。
「ちっ……違いますっ! そういう意味では……」
顔を真っ赤にしたアズマを見て真央はクスクスと笑う。
「喜美所長からあの有名なユーゼンで働かないかと言われた時はどうしようかと思いましたけど、こんなに面白いふたりが側に居てくれて良かったです。じゃあ、出会いに乾杯っ!」
言うが早いか、真央は自分のデスクの上に置いてあったグラスを手に持つ。そして一気に中の液体を飲んだ。
「ちょっと、研究室で飲酒!? そんなの前代未聞よ」
慌てて席を立ち、イオリは真央に詰め寄る。
「衣織、よく見てください。お茶ですよ、お茶」
「えっ……?」
アズマの声を合図に、一同がグラスに残った中身へ視線を移す。イオリの白い顔がはっとした表情になったかと思えば、すぐに茹でだこのように赤く変化した。
真央とアズマはそれがまた可笑しくてケラケラと笑い始める。
「ははっ、衣織は本当に慌てんぼうだなぁ!」
「しっかりしてそうなのに……ふふっ、時々こうなるんですよね」
「やめてよ、ふたりとも」
3人の楽しそうな笑い声が研究室に響いた。
何よりもありふれていて、何よりも大切なもの。
変わらない毎日。
野心家の研究員が多いユーゼンでは珍しいタイプのふたりだった。
他を蹴落とし、自分が上に昇っていこうとするようには思えない。自分のペースを冷静に維持できるからなのだろう。
そして優しいふたりだからこそ、一緒にいて心地よかったのだ。
このまま楽しい時がずっと続けばいい。
記憶の主がどれだけこの時間を大切にしていたか。
それは無意識のうちに真央とマオの感情が、溶けて混ざり合ってゆくような感覚だった。
いつも読んでいただき、ありがとうございます^ ^
真央なんだかマオなんだか書き分けが難しくご不便をおかけしております……。すいません……。
トレースバース、普段刺す側のことしか考えてませんでしたが、刺されたらあんな感じになるんですねwww(書いてて自分もビックリ!!)
また続きを書いてきますので、暇な時にぜひ読んでいただけたら嬉しいです♪
ようし、仕事の時間ぜよ。
(行ってきます)




