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第93話 彼女自身の意志

こんばんは♪

晩御飯前に投稿させていただきます。


また暇な時に見ていただけたら嬉しいです^ ^

よろしくお願いします!!


 「アズマ……さん?」


 いったい何故アズマがこんなところにいるのか。


 マオは思わず、コマイリサになりきることも忘れて固まる。


 「どうして………何故あなたが……。

 僕はどうすれば良い!?」


 アズマは動揺した様子でジリジリとマオに近づいてゆく。


 一歩、また一歩。


 何か得体の知れない恐怖を感じたマオはゆっくりと後ろに下がった。


 いつものアズマと様子が違う。

 目が笑っていない。


 自分を気にかけくれていた、あの優しいアズマではないのだ。


 「アズマさん、落ち着いてください!  

 これはいったいどういう状況なんですか……?」


 カツン。

 マオの身体が屋上の柵に当たる。もうこれ以上、後ろに下がることはできない。


 でも逃げなければ……っ!


 本能的にそう感じたマオは屋上の柵に登り、少しでもアズマから遠ざかろうとした。


 「僕は……僕は、()()()()()()殺さなければならないのか……?」


 アズマは躊躇いがちに呟き柵に近づく。


 そして突然マオの襟首を掴むと、押し上げるようにして自身も身を乗り出した。


 「アズマさんっ!!」


 マオは悲鳴に近い声で叫ぶ。

 自分の足が宙に浮いているのだ。


 変装に使っていたセミロングのウィッグと伊達メガネがマオから離れ、勢いよく下へ落ちていった。


 まずい、このままでは突き落とされる……!


 もし自分の身体を支えているアズマの手が離れれば、背を下にして屋上から一気に地面へと叩きつけられるだろう。


 マオは咄嗟にアズマの両腕を掴んで命綱代わりにする。

 そうしているうちに、マオの頬へ上から水滴が滴り落ちてきた。


 「許してくれ……、僕があなたをっ……ごめんなさい……ごめんなさい……!」


 ふとアズマの顔を見上げると、彼は涙を流し身体を震わせているのだ。


 それでもアズマは、マオを支える手を柵の向こう側へ向けて離そうとしている。



 「そこまでよ」


 抑揚のない声がアズマの後ろから聞こえた。

 ゆっくりとこちらへ近づいてきたのはイオリだ。


 「イオリさん!」


 マオは助けを求めるような目でイオリを見る。


 イオリ、という名前に反応したアズマは横目で自分の背後にいる人物を見た。


 「彼女を離してあげて。柵の内側にね」


 涙に濡れたアズマの瞳を、震える背中を真っ直ぐに見つめてイオリは言った。


 「なるほど……一体、なんの真似ですか」


 アズマの手によってマオの身体が引きずり下される。

 そのままペタンと床に座り込み、腰が抜けたように動けなくなってしまうマオ。

 

 屋上から突き落とされることだけは免れた。

 しかし、状況は良くない。


 マオの鼓動が煩いくらいにそう告げている。


 「イオリ。僕に屋上へ来るよう言ったのは、この為だったんですか。マオさんと引き合わせて……僕たちの記憶を抉るような真似をして……あなたはそれで満足なのか!」

 

 アズマの問いかけにイオリは淡々と答える。


 「誤解しないで。私は喜美側の人間じゃない。これはウシオや、Eフロアにいる研究員たちにとって必要なこと。そして彼女が望んでいたこと」


 「僕だってあんな計画に心から賛同しているわけではありません。でも、また同じことを繰り返すだけならこの行為は無意味だ。イオリは意味もなくマオさんを利用して、傷付けようとしている。果たして、そうまでして彼女が望むでしょうか?」


 アズマは純然と言い放った。

 暫く沈黙が続いた後、イオリはマオのもとへ歩み寄る。

 

 「マオ、あなたはどうしたい?」


 「えっ……?」


 どうしたいと言われても分からない。

 自分の置かれた状況が全く理解できずにいるのだ。


 アズマとイオリは以前から知り合いだったようで、イオリがアズマも屋上に呼んだことは話の内容から分かる。


 しかしアズマはキーラボの研究員なのにEフロアやエヴァンディール計画のことまで知っている様子。


 繰り返す? 記憶を抉る?


 イオリの言った彼女がもし『この場所で死んだ彼女』のことなら、アズマやイオリの行動にも彼女が関わっているのだろうか……?


 「イオリ、あなたは狡い。昔と違ってすっかり変わってしまったようだ」


 「それはお互い様、でしょう」


 自分を狡いと非難したアズマにイオリは言い返す。

 それから座り込んだマオと目線を合わせるようにして屈んだ。

 

 「あなたを屋上へ呼んだのは、アズマくんとここで会わせたかったから。彼はもともとユーゼンの人間。あなた、今のアズマくんを見ても何も感じない? 何か思い出さない?」


 「アズマさんが……ユーゼンの……?」


 予想もしていなかったイオリの言動に、マオは動揺してアズマを見る。


 アズマはマオと目が合わないように俯いて喋らない。


 アズマがユーゼンの人間ならば、ヤヨイが疑っていた内通者こそアズマなのではないか。


 マオにはそれくらいしか感じることは無かった。


 それとも自分は……何か大切なことを忘れているのだろうか。


 首を横に振るマオを見てイオリはため息をつく。


 「そんな気はしたけど、やっぱりこれだけの刺激じゃダメみたいね。大丈夫、あなたは何も気にしなくていい。その代わり……」


 イオリは白衣のポケットから何かを取り出すと、マオの前に突きつけた。


 「知りたくない? なぜアズマくんがあんなことをしたのか。なぜあなただけクローンボットを上手く動かせなかったのか。自分がどうやってキーラボにやってきたのか、そして人の名前が文字化けして見える理由……とかね」


 「どうしてそれをっ……!?」


 驚いて目を丸くするマオに、イオリは表情ひとつ変えることなく続ける。


 「ここにはあなたが、あなたたる所以(ゆえん)が入っている。それを知るかどうかはあなた自身で決めて」


 「私自身……。これが私に渡したかったもの……?」


 マオの目の前に突きつけられたもの、それはあるひとつのトレースバースだった。


 「マオさん、イオリの言葉に耳を貸さないでください。イオリはあなたを利用する為に卑怯なことをしている! その記憶はあなたが無理をして見るようなものじゃない。僕はこれ以上、あなたに辛い思いをして欲しくないんです」


 必死で訴えかけるアズマを、イオリがじとりとした視線で制する。


 「どうするかはマオが決めること。そして、その答えはもう出ているはず。そうでしょう?」


 「私は……」


 言いかけて、やがて決心したようにマオは続けた。


 「本当はずっと不思議でした。自分がキーラボに来た時のことは覚えているのに、その前のことはあまり覚えていないんです。でもユーゼンの名前を聞くと、なんだか物凄く嫌な気持ちになる。


 クローンボットすら動かせない私の周りにいる人たちは……ユキトさんやヤヨイさん、カイ所長だってみんな凄い人たちなんです。私はいつもそんな人たちに助けられてばかり……」


 今までずっと押さえ込んできた気持ちが爆発したように溢れて止まらない。


 「知っているなら教えてください! そのトレースバースの中に入っている記憶を。私がそれを知ることで誰かの役に立てるのなら、私は知らなくちゃいけない」


 早口で捲し立てたマオの言葉を聞き、イオリはアズマの方を見る。

 

 「聞いた? これが()()自身の意思」


 アズマは何も言わない。

 ただ、もうイオリのやろうとしていることを止めようともしなかった。


 イオリは手に持っていたトレースバースを振り上げる。

 

 「これは賭けね。あなたが彼女と同じ気持ちでそう望むのなら、記憶を入れたその時がプロテクト解除の時になるかもしれない」


 そしてトレースバースの針をマオの脳天めがけ勢いよく振り下ろした。


 コスッという音と共にトレースバースが光りだす。



 「ああああぁぁぁぁ!!!!」



 その叫び声を最後に、マオは座り込んだ体勢のままピクリとも動かなくなった。





 

 

いつも読んでいただきありがとうございます!!

励みになっております(*´ω`*)


ウシオや研究員を想うイオリ、マオを想うアズマ、真実を知りたいマオ。この3人の過去は……。


次回、また楽しく続きを書かせていただきたいと思います♪

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