第90話 パレイドリア
こんばんは^ ^
久しぶりの夜ふかしにつき投稿させていただきました!
また暇な時に読んでいただけたら嬉しいです♪
「ムーブエレクトロって……動かなくなった体の部位に取り付けるとその部位を自由に動かせるようになるアレ?
ユーゼンを調べてたら研究誌に載ってたけど」
「あぁ、それだ……。
ずっと頭にこびりついていたフレーズ、間違いない!
特定の研究員たちに声をかけて作ることにしたと喜美所長が言っていた。
だが、彼はこうも言った。
あれはつけた者の潜在意識を引き出す実験道具でもあるのだと」
月城の記憶は今、クリオネの言葉を灯りに暗い夜道を歩いているようだった。それが少しずつ言葉となった瞬間、まるでパッと明るい通りに出てきたかのように記憶が呼び戻されてゆく。
「そもそもエヴァンディール計画はイクシナ騒動のすぐ後に画策されたもの。
計画にはムーブエレクトロやクローンボットの開発が必要だった。
そして計画の情報を流出させない為、警察や政治家を味方につけては問題が見つかるたびにもみ消してゆく。
大木碕大学の放火騒ぎもそれに巻き込まれたんだ!
あの時、私が見た男が犯人でそいつの付けていたものがムーブエレクトロだとすると、男は自分の潜在意識に従って火を放った。
そういうことにはならないだろうか」
月城の推測に中年男性は首を傾げた。
「なぜ大木碕大学が狙われたんでしょう。……偶然?」
「いいや」
クリオネはキッパリと否定する。
「やっぱり喜美はかなりのキレ者だ。
初めから大学に関係ありそうなのを被験者に選んだんだろうね。
そうすれば被験者が大学に危害を加えると分かっていたのかも」
「そんな馬鹿な話……。
わざわざそんな事する必要なんてありますか?」
「そこまでして、カイ所長サンの技術が欲しかったんじゃないかな。
大学院に迷惑をかけるくらいなら辞める、そう考える人でしょ。あの人は。
カイ所長サンが大学院を離れれば、月城センセイの許可なんていらない。これで心置きなくユーゼンの技術師として誘うことができると考えた、とか」
「あり得ません!
確かにその一件でカイさんは大学院を辞めたと聞きましたが……喜美所長に誘われたって断るのは目に見えています。
先生も断ってますし」
「本人が拒否したって従わせる方法はいくらでもあったんだろうさ。
大木碕大学の放火騒ぎだって警察が碌に調べなかったんでしょ?
あの頃のユーゼンでもそのくらいは簡単にできたってところかな」
月城は黙ってふたりの話を聞いていたが、不意にこんなことを口にした。
「そうだ。
私が喜美所長の話を断って、しばらくしてから放火の脅迫状が届いた。
カイ君に不満がある連中の仕業かと思ったが、それも喜美所長が仕向けていたのかもしれない。
だが彼が裏で手を引いていたとしたら、ここまでの事をひとりで仕切るには無理がある。
きっと、もっと大きな力が必要だ。
だから私はさっきの君と同じ事を考えてある推測を立てた」
スピーカーから出る音が月城の脳を刺激しているおかげで、先ほどまでの会話を完全に思い出すことができたらしい。
人間の脳はつくづく不思議なものだ。
脳科学者でもないのに、こんな連中ばかりと関わっているせいか思わずクリオネもそう考えてしまう。
「喜美所長の実験や行動によく似た資料があるんだ。碓氷国時化.E、これはご存知かな?」
それまで頭に手を当てていた月城だったが、その手は今ではすっかり膝の上で拳をつくっていた。
もう音楽が止まらない限りは大丈夫そうだろう。
そう判断したクリオネはホッと胸を撫で下ろす。
「碓氷国時化.E?
それって確か、前に流行ったジャーナリスト……だよね」
「彼はオカルトサイエンスのジャーナリストだ。
『身体と記憶の関係性』や『人間の遺伝子交配実験』
似ているんだ、エヴァンディール計画の内容と非常に。
そしてどの著書にも決まって記されている謳い文句のようなものがある」
「どんな言葉なの?」
「いい国は鏡に映して見える理想の世界」
「イイ国……。
喜美所長はその本に影響を受けて計画を実行してるってこと?」
月城は静かに首を振る。
「いいや。逆だ。
碓氷国時化.Eがエヴァンディール計画に関わっているかもしれない。
彼が世に知られるようになったのはイクシナ騒動よりもずっと前だと聞く。
だがここ30年の間で出した本は計画の内容に沿って書かれているし、エヴァンディール計画が始まった時期とも一致していた。
つまりエヴァンディール計画は、喜美所長と碓氷国時化.E、このふたりが主軸となって進められているのではないか。
私はそう推測していた」
「うーん……。
それにしても良くそんな資料を見つけたね。
さすがはセンセイだ」
口ではそう言ったものの、クリオネにはどうも腑に落ちない点があった。
いくら碓氷国時化.Eが喜美と協力関係だったとしても彼はただのジャーナリストに過ぎない。
喜美より顔が利くかもしれないが、そんなに大したことはできないはずだと考えていたのだ。
さらに月城の言ったことがもうひとつ引っかかる。
『エヴァンディール計画』はイクシナ騒動のすぐ後に画策された。というのは今から30年も前の話である。
しかし碓氷国時化.Eが活動を始めたのはそのずっと前……。
碓氷国時化.Eは今、いったい何歳なんだ。
情報が足りないし、何か今ひとつ決定打に欠ける気がした。
「資料の存在は私も数ヶ月前まで知らなかったんだよ。
教えてくれたのは外部オブザーバーをした時に知り合った、ユーゼンの研究員だ。
彼女は数ヶ月前、私の近況を尋ねにここへやって来たんだが……そんな事今まで一度もなかったから驚いた。
あの頃は笑顔が素敵でね、よく他の研究員ふたりと楽しそうに話していたのを見かけてたよ。
だけど久しぶりに会った彼女は別人のようだった。
酷くやつれた様子で無表情、何を考えているのかさっぱり分からなくなってしまって……。
あれは相当無理をして働いているのだろうな」
月城は眉間に皺を寄せて続ける。
「彼女は顔色ひとつ変えず淡々と話していた。
ユーゼンでは今、喜美所長の次に力を持っているのが生天目という研究員であること。
生天目は記憶喪失になった人物の脳を、脳死した別人の体に移植し、生前の頃の再現を成し遂げて力を持つようになったこと。
しかもその研究には碓氷国時化.Eが関わっていたということをね」
一同がしんと静まり返っている。
リビングに響くのはあのスピーカーから流れてくる音楽だけだ。
落ち着いた曲だというのに、やけにうるさく感じてしまうくらい静かだった。
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最近、adoの唱を練習してるせいか段々と声がスリムクラブの真田になってきている気が……笑
よし、フランチェンが目覚めるその日まで諦めない……っ!!→「いいよぉー!」www
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(いい感じに掠れ声)




