第86話 人とロボットと
おはようございます^ ^
また投稿させて頂きました!!
ぜひ暇な時に読んで頂けたら嬉しいです♪
よろしくお願いします。
「すまない、また関係のない話をしてしまった。
確かリビングのテーブルの上に段ボールがあったはずだ。
もしそれがユーゼンと関連性のある資料なら……彼等がやろうとしていることについて何か分かるかもしれない」
テロメアはふと本来の目的を思い出したかのように言った。
彼は今までカイ所長としか深く関わってこなかったのだろう。価値観や行動が偏りすぎている。
これから先のことを考えると、苦労する羽目になりそうだ。
「あぁ……そうだな」
ユキトはその後、黙って玄関で靴を脱ぎリビングへ向かう。
ユキトの目に飛び込んできたのは電気が消された部屋。薄いピンク色のカーテンやふかふかのひとりがけソファ、クラシックなローテーブル。
どれも見覚えのある至ってヤヨイらしい、ごく普通の部屋だ。
しかしローテーブルの上にあるはずのものが見当たらない。
ズィファイルの動画で見た時は確かにテーブルの上にあった。テロメアが記憶している位置で間違いはないはず。
それなのにローテーブルの上に段ボールが、ない。
一体、何処へ消えたんだ?
ユキトは驚いてテーブルの周りを確認する。
「おい、テロメア。
段ボールが何処にもないぞ」
「そんなはずは……。
あり得ない、私の後に誰か来ない限り……」
あるいはテロメア自身がその段ボールを持ち帰っているのか。いや、それは考えにくい。
電話越しのテロメアの声からは動揺が伺えるし、他にも気になることがある。
ユキトは思考を張り巡らせながら尋ねた。
「テロメアがこの部屋に来た時は電気がついたままだったと言っていたな。
部屋を出る時に電気を消した記憶は?」
テロメアは首を振る。
「すまない。
こんなことは初めてで気が動転していた。
確かそのまま部屋を出たような気もするが、はっきりとは覚えていない」
「そうか」
僅かだがテロメアと行動を共にしてきたのでテロメアの性格上、そうなってしまうのも頷ける。
違和感のある話ではない。
「もし仮にテロメアがそのまま部屋を出たとすれば、この部屋には他にも入ってきた人物がいるということになるな」
「まさか……内通者か?」
「可能性は高い。
テロメアが怪しまれず部屋に入れたんだ。キーラボの人間なら立場上すんなりと入ることができるだろう。
コンシェルジュも人だ。
事情に納得し、ヤヨイの関係者だと判断すれば安否確認に応じる」
「確かに一理あるな。
そういえば私がこの部屋に入った時、下にいたコンシェルジュから聞いた話を思い出した。
管理ロボットが普及されてからは部屋の中の映像も確認ができるし、いざとなればすぐ警察を呼べるようにしてあるから安否確認は管理会社の判断に委ねられているそうだ」
「もし入居者が事件に巻き込まれて連絡の取れない状況だったとしたら?」
「管理会社が入居者に立ち入ることを通知し、それが拒否されなければ管理ロボットが同行して君のようにこの部屋へ入ることができる。
そこで何も起きなければ警察に通報はされない」
テロメアの話をユキトは鼻で笑った。
「警察も安否確認にいちいち付き合ってられないってわけだ。人間も落ちぶれたもんだな。
それなら尚更キーラボの人間が怪しい。
おそらくそいつがユーゼンと繋がっていて、ここにあっちゃマズい資料を回収しにきたんだろう」
ズィファイルのメール以来、ヤヨイからの連絡はない。
ヤヨイはユーゼンに連れて行かれてから、自由に連絡も取れない環境で助けを待っているはずだ。
「せめて内通者が誰なのかが分かればもう少し動きやすくなるのにな。
警察にもユーゼンと繋がっている者は少なからずいる。
さて、どうしたものか」
テロメアの悩む姿が容易に想像できる。
ユキトは後ろを振り返り管理ロボットを見つめた。
これは自分が玄関からリビングに移動した時も、ずっと部屋の中をついてまわっているのだ。
例え泥棒が部屋に入ろうと、片時もその側を離れずに証拠映像を撮り続けるようできているのだろう。
「映像……」
耳につけっぱなしの無線通信機を指でコツコツ叩き、ユキトはそれに声をかける。
「おい、クリオネ。
聞こえてるか?」
しかし、無線通信機からの応答はなかった。
「クリオネ?
クソっ、こんな時にあいつは何してやがる!」
「ユキトくん、クリオネというのは?」
クリオネを呼ぶ声が聞こえていたのか、テロメアがユキトに尋ねる。
「ヤヨイの協力者だった情報屋だ。
今は俺たちと協力してユーゼンを調べてる」
「そうか、なるほど。
ヤヨイくんから話は少しだけ聞いていた。
私以外のこの部屋に入った人物を彼に特定してもらうのか?」
「そういうことだ。
こいつの記録した映像を使ってな」
今度は自分のすぐ横に来た管理ロボットに、ユキトはポンと手を置き笑みを浮かべた。
一方その頃。
クリオネはある人物の家へ招かれていたのだった。
本棚の上に置かれた薄型スピーカーから流れるクラシック音楽。決して大きな音ではない。
しかし割れているようにも聞こえてしまうその音が不思議とクリオネの耳に絡みつくのだ。
「わざわざお越しいただだきありがとうございます。
すいません、もう少しだけお待ちください」
リビングへやってきたのは長身の中年男性。頭を下げながらボソボソ声でそう伝えてくる。
広いリビングのソファでだらしなく腰掛けていたクリオネはその声を聞き、少しだけ姿勢を正した。
「いいよ、ゆっくり待ってるからさ。
あ、でもお茶のおかわりが欲しいかな!」
「あぁ……お茶。今、持ってきます」
のろのろとキッチンに立ち、紅茶を淹れる中年男性にクリオネが声をかける。
「ねぇ、やっぱり電話してきたのって君だよね。
なのにここでオレを待たせてるってことは、誰か同席するから、なんでしょ?」
そう、声が似ていたのだ。
ユーゼンの情報を持つと電話してきた男性に。
この飾り気のない家に来て、リビングに通されてからだいぶ時間が経つ。
温かい紅茶もすっかり冷めてしまった。
しかしこの男性はクリオネの前に顔を出しても一向に話を切り出す気配がないのだ。
クリオネは目の前にある焦げ茶の木目調テーブルへ持ってきたスナック菓子の袋を置いた。
男性はそれを不審な目で見ながら躊躇いがちに答える。
「ええ、『先生』が同席します。
あなたに電話したのは私ですが、それは『先生』に頼まれたから」
「『先生』……って誰?」
スナック菓子の袋を開け、中身を摘んで口に放り込むクリオネ。そこでとうとう男性の眉間に皺が寄る。
「……月城禅先生です。
大木碕大学の大学院教授。
私はかつてそこの大学院生だったので。まぁ、ですから『先生』なんです」
「大木碕大学って……どっかで聞いたことあるような……」
菓子を食べる手を止め、考え込むクリオネに中年男性はそっとティッシュペーパーを差し出した。
いつも読んでいただいたり、応援や温かいお言葉をありがとうございます、来訪感謝っ( ´Д`)y━・~~
お陰でとても楽しく書かせてもらってます!!
なんか最近、朝起きて寒いなぁと思ったらもう雪が降ったらしい。
そろそろ半袖と短パンで寝るのやめようwwww
人の家で堂々と持参したスナック菓子を食べるクリオネ、ヤヴァイですね笑笑
次回、彼の運命はいかに!?
(ちょっと言ってみたくなった笑笑)
ではまた続きを書いていきたいと思います^ ^




