第84話 カプグラ•シンドローム
おはようございます!
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「ここがヤヨイの家、なのか……?」
ようやくまともになった道案内の末、ユキトが辿り着いたのは郊外に佇むマンションの前だった。
高い。しかもマンションの敷地内に何故かローマを彷彿とさせる噴水がついている。
ユキトはそのマンションを呆然と見上げた。
「1002号室。10階の部屋だ。
ヤヨイくんが居なくなったと分かってから中に入った時はコンシェルジュに事情を話して管理ロボットに立ち会ってもらったよ」
ここまで道案内をしてきたテロメアは停まっているバイクから降りるとスタスタと歩き出す。
「その時の状況を俺にも詳しく教えてくれ」
ユキトもバイクから降りると、テロメアに続き立派なマンションの入り口へと向かってゆく。
「部屋の電気はついたまま、飲みかけのコーヒーはカップに入ってテーブルに。何かの研究資料が入った段ボールはクローンボットお披露目会の日、夕方頃に届くよう指定されていた。カイ博士もあの日、23時にヤヨイくんに会ってくるとラボを出たきり行方が分からない。
つまりその段ボールが部屋の中にあるということは、ヤヨイくんがお披露目会の後に帰宅して受け取っていると見て間違いないだろう。
ヤヨイくんはカイ博士と会うタイミングに合わせて何かの資料を手配したのかもしれないな」
「なるほど。その段ボールは一箱だけ部屋に置いてあったのか?」
「ああ。私が見た時は一箱だけだった」
ユキトは頭の中で状況を整理する。
確かズィファイルにあった動画にもヤヨイの部屋と共に段ボールが映っていたはず。
部屋とは不釣り合いなものだったので、違和感を感じていたのだ。
ヤヨイはお披露目会から帰ってきた後、部屋の電気をつけコーヒーを淹れて飲んでいた。そこへ配達員がインターホンを鳴らして段ボールを届けに来る。日時指定されたあの段ボールが配達員からヤヨイの手に渡り部屋の中へ運ばれる。きっとこのすぐ後だ、ズィファイルに保存されていた動画を撮影したのは。
撮影を終えたヤヨイはカイ所長と近所の高架下で会い、そこへ生天目の運転する車が現れてふたりをユーゼンへ連れ去った、というわけか。
ズィファイルやクリオネが持ち帰った音声、情報を繋げていくとヤヨイの行動が浮かび上がる。
ただ、分からないことがあった。
なぜヤヨイはカイ所長と会う時にあの段ボールの資料を持っていかなかったのだろう?
テロメアの言う通り、配達日時をカイ所長と会うタイミングに合わせたのなら資料をカイ所長に渡したかったんじゃないのか?
ヤヨイは情報が漏れていたとあの動画で言っていた。
それはこのキーラボの中にユーゼンの内通者がいると考えていたからだ。
もし資料がユーゼンと大きく関係のあるものならば、内通者はきっとそれを隠したがる。
これはヤヨイ自身が持ち歩くことのリスクを考えて取った行動だったのか?
「ユキトくん、早くこちらへ。
見事な噴水だと思わないか?
これは15分ごとに一度、水が大きく噴き上がるような仕組みになっているらしい。
こんなマンション、私は今まで見た事が無かったよ」
テロメアの呑気な声がユキトの思考を乱してゆく。
「あぁぁぁ、もう!
うるさいな!!
俺だってこんなの見た事がない!
そんな噴水よりこれからどうするんだ、どうやってヤヨイの部屋に入るつもりだ?
ちゃんと策はあるんだろうな?」
一度、本人の音信不通を理由に部屋の中の状況が確認できたというのに、また同じ人物が中を見たいだなんて言えば面倒なことになりそうだ。
きっと同じ手は通用しないだろう。
テロメアはそんなユキトの言葉を聞いてパチパチと瞬きをする。
「………………ない!」
ユキトはため息をついた。
やはりカイ所長とは違う。
今まではカイ所長の代わりを務めようと必死でそう振る舞っていたのかも知れないが、自分はテロメアだと名乗った瞬間から本来の自我が出てきているような様子。
姿形、声までもがカイ所長なのに中身はまるっきり別人なのだ。当分テロメアには慣れそうにもない。
「どうするんだよ、全く……。
何か方法を考えるしか……」
「いや、問題はない」
ユキトの言葉をテロメアはすぐ否定すると、ポケットから携帯を取り出しユキトの方へ向ける。
「ユキトくん、今から私が言う言葉をここのマイクに向かって話してくれ」
「は? なんだ、いきなり」
「早く」
ユキトは言われるがままにテロメアから発せられる言葉を自分の声でマイクに吹き込んだ。
――――――30分後。
黒いパーカーに身を包み、バケツと小さなブラシを持つユキトがマンションのコンシェルジュに声をかけた。
「すいません、1002号室の風間さんのお部屋を掃除しにきたんですが」
この掃除用具は先程、あの噴水がある庭に置いてあったものを無断で拝借した。
果たしてこれで上手くいくのかは全く分からない……。
コンシェルジュカウンターにいた妙齢の女性は少し驚いた顔をして首を振った。
「申し訳ありません。
本日そのような予定は風間様から伺っておりません」
当然の反応だろう。
ヤヨイは今、行方不明ということになっているのだから。
「そうでしたか。
ご本人は今、海外へ長期滞在中です。
その間、部屋の掃除を頼まれたのですが鍵についてどうすればいいか伺ったところ、コンシェルジュに聞いてくれと言っていたので」
「風間様と連絡がつくのですか?
失礼ですが、どのようなご関係でいらっしゃいますか?」
怪しい人物を見るかのような女性の目つきがユキトに向けられる。
「ただの掃除バイトです。
なんなら風間さんに確認してみてください」
そう言ってユキトは携帯を取り出し電話をかけた。
プルルルル――。
『もしもし、どうかしました?』
3回コールが鳴った後、電話に出た人物の声は紛れもなくヤヨイそのものだった。
ユキトは携帯をコンシェルジュに渡すと、話をするように促す。
「えっと、風間様……ですか?
今、エントランスに清掃の方がいらしているんですが……」
『あぁ、ごめんなさーい!
ワタシったら連絡するのすっかり忘れてたみたいで。
その人を私の部屋に通してあげてほしいの』
「まぁ風間様、ご無事だったんですね!?
しばらくお姿も見かけなかったし、つい先日も職場の方がいらして連絡が取れないと言うので……その、部屋で何かあったのかと……オーナー様の同意を得て解錠させて頂きました」
『あぁ、同僚から聞きました。
迷惑をかけたようでごめんなさーい!』
「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。
改めて確認でしたが……この方をお部屋にお通ししてもよろしいのですか?」
『ええ。
その人を私の部屋に通してあげてほしいの』
「分かりました。
念の為、管理ロボット立ち会いのもと解錠させて頂きます。
部屋での様子は人感センサー付きの管理ロボットが常時録画してくれていますので、リアルタイムで携帯の方にも送らせていただきますね。
もちろん風間様以外が録画を許可なく見ることはありませんのでご安心ください」
『ええ。
迷惑をかけごめんなさーい!』
偽物のヤヨイとの通話はそこで途絶えたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます^ ^
お酒を飲んだ翌朝は目覚めがシャキッとしますね笑
最近は冷えてきたので皆さんもお体に気をつけて!!
ではお仕事の方、いってらっしゃい……。
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