第80話 タイムリミット
おはようございます!
また本日も投稿させていただきました^ ^
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「途中からですけど。
でも初めからおかしいなとは思ってました」
『もし幹部に正体がバレそうになったら潜入は中止。
全速力で施設の外へ走って逃げて』
マオはクリオネの言葉を思い出していた。
イオリはエヴァンディール計画を止めたがっている。
少なくともこちらの邪魔をしてくることはないだろう。
だが、イオリの身に危険が迫ればどうなるか分からない。
例えばコマイリサとしてユーゼンに潜入している自分をナバタメのものへ連れて行き、イオリは向けられた疑いを晴らそうとするのかも知れない。
どうする、どうすれば良い。
彼女をこのまま信じるべきか。
逃げ出すかーーーー。
「まぁ、幹部と言っても実際に力があるのはヨシミ所長とナバタメくんね。
もともとナバタメくんだってヨシミ所長が引き入れた人材だし。私は彼らにとって厄介な存在でしかない」
やはりイオリは困ったような顔で肩をすくめる。
「キーラボの所長さんたちを助け出したいのなら、ナバタメくんを説得するしか方法がないわ。
でも彼はおそらく説得に応じない。
そうすると直接、処理場に入るしかなくなる。
戻って来られるかは保証できないけど……行くなら急いだ方がいい。
女性の研究員は明日の夜、海外の研究施設に売り飛ばされる予定だから」
「それってヤヨイさんのことっ!?
明日の夜、ですか!?
どうしよう……もう時間が……」
「大丈夫。あなたには優秀なお仲間が何人もいるんでしょう。
私が大きく動けるのはエヴァンディール計画を止める時だけ。あの日、何が起こってもそうすると決めたから。
もちろん、できる限りのことはする。
だけどキーラボの人間を助けられるのはあなたたちしかいない」
優秀なお仲間、か。
どうやらイオリはマオの周辺にいる人物のことまで把握しているようだった。
彼女の存在がますます分からなくなる。
「イオリさんは私たちのこと、どこまで知ってるんですか。なぜ助けようとしてくれるんです?」
暫く、ふたりの間には沈黙が続いた。
「……あなたのことなら全部知ってる。
でも私はあなたのために動いているわけじゃない。
昔、私にも優秀な仲間がいた。
私はその仲間のためにここで闘っているだけよ」
イオリは独り言のようにポツリと呟き遠くを見つめる。
彼女は信頼できる人物かもしれない。
ユーゼンの事情はまだ分からないことが多いが、その姿を見てマオはなんとなくそう感じたのだ。
「分かりました。
じゃあ私もその仲間を、イオリさんを信じてみることにします」
「マオ、あなたは……」
イオリは少し驚いた表情でマオを見つめる。
それから意を決したように首にかけていた社員証を外すと、マオへ手渡した。
「これを使って。
一応、幹部の社員証だからある程度の場所には入ることができる。
ナバタメくんはあなた方の存在に薄々気がついている。
あなたが見つかるのもきっと時間の問題。
『コマイリサ』の社員証はもう使わない方がいい」
「え、でもイオリさんは……?」
「私は問題ないわ。
自分の社員証くらい、自分で再発行できるし。
これで時間稼ぎにはなるでしょう」
「そうですか……」
確かに話を聞いた限り、人材集めに関して彼女は相当自由に動いている。
その言葉通り社員証を作ることくらい容易いのだろう。
やはりこれが幹部の力、なのか。
「代わりにコマイリサの社員証、返してもらえるかしら」
「どうするつもりですか?」
イオリは重いため息をつく。
「考え中ね。
ナバタメくんのもとへ『コマイリサ』を連れていかなければならなくなったから。
あなたのお仲間でしょう、こんなことしたのは」
「あぁ、あの……、えっと……すいません」
マオはイオリの見えない苦労を想像して咄嗟に謝罪する。この社員証はもともとイオリがコマイリサへ向けて作ったものだったのだろう。
今回クリオネが計画した事とはいえ、それを横取りしてしまったのは事実だ。
マオは今まで自分が使っていた社員証をイオリに返す。
「気にしないで。
そのお陰でこうしてあなたに会うことができた。
社員証発行の時、最終チェックのためにAIの面接前と合否結果が出た後で内定者の履歴書を見比べていたの。
コマイリサの顔写真、後からあなたに似せて加工したんでしょう……。
それに気がついてまさかと思って黙っていたけど、本当にここまでやって来るなんてね」
「それも知っていて、黙っててくれたんですか!?」
「言ったでしょう。
あなたたちのこと、私からヨシミ所長に報告するつもりはないって」
「じゃあイオリさんは、初めから私がコマイリサではないと気づいていたって事ですよね」
「ええ。このまま社員証を発行してコマイリサの元へ送ったらあなたが受け取ることになるだろうとも思った。
だから敢えて気づかないフリをしてそのまま送ったの。
ナバタメくんの目を欺くために発行記録も出さずにね。
かなり苦労したわ」
「そうとは知らずに……」
「これで少しは私のこと、信じてもらえた?
表情が豊かな分、さっきからずっと私を警戒していたのが手に取るように分かった」
「えっと、その……」
彼女には考えていることが全て、見透かされていそうだ。
マオが言葉に詰まっているのを見てイオリは少しだけ微笑んだ。
「申し訳ありません。部長、そろそろ……」
マオたちの会話が途切れたタイミングを見計らったのか、急かすようにプランBの研究員がイオリに声をかける。
「分かってる、すぐ行くから」
イオリはそう答えると、不意にマオの頭に手を伸ばした。
驚いて目を瞑るマオ、何をするかと思えばイオリはその頭を優しく撫で始めたのだ。
「ちょっとイオリさん!
子供じゃああるまいし……。その、恥ずかしいですよ」
「ふふっ。子供みたい」
「茶化さないでください!!」
照れくさくなったマオは静かにイオリの手を払い除ける。
「後であなたに渡したいものがある。
用事が終わったらすぐに行くから、さっきの屋上で待っててもらえる?
Eフロアや処理場は電波が届きづらいからソレ、使えないでしょう」
イオリはマオの耳に当てられた無線通信機をコツコツと指でつつく。
「なんでもお見通しなんですね」
思わず苦笑いするマオに「じゃあ後で」と一言、イオリは待っていた研究員と共に部屋を出て行くのであった。
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