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第8話 日常の綻び

こんにちは( ´ ▽ ` )

今日もまた投稿させていただきます。

ぜひ暇つぶしに読んで頂けたら嬉しいです!

 

やはり影響力がある人の言葉は強い。

ウシオが応援を始めると皆、それに倣ってマオに暖かい言葉をかけてくる。


 招待客たちは先程のヤヨイの時のような盛り上がりを見せたのだった。


 「チョット……、コレ……ドウシヨウ」

 「ちょっと……、これ……どうしよう」


 しかし当の本人はクローンボットを操ることに必死でそんなものはお構いなしだ。

 そのクローンボットもしまいにはダンスをしているのか、よく分からない変な動きを見せながら必死で歩いている。


 マオの言葉をマイクで拾って喋っているので、クローンボット自身が自分で踊って自分で困っているような滑稽な状況になった。


 そのせいで会場から笑いが起こる。


 「マオちゃん、自分も普通に歩いてみて!」


 「えっ、こっ……こうですか?」


 「そう、自分が歩くの」


 この状況に見かねたヤヨイが助け舟を出してくれたようだ。

 マオは言われた通りに自分で歩いてみた。


 どうして今まで気がつかなかったんだろう。

気が動転していた。


 それだ。やっぱり実際に歩いてみた方がクローンボットに自分の電気信号が伝わりやすく、動かしやすい!!


 と、自分なりに結論づけてマオは至って普通に歩く。

そしてどうだと言わんばかりにクローンボットの方を見た。


 あれ、おかしい…………。


 マオの動かしているクローンボットは首を素早く数回縦に振る。

その後、歩き出すもなんだか動きがカクカクしているような。

 これは自分で思うように動かすことはできなさそうだ。

 ふーっと息を吐き、マオは脱力した。


 「おかしいですねぇ。

こういったことは初めてなのですが……。


いや、あなたのお陰で今後の課題点が見えてきたようです」


 顎をポリポリと掻きながら司会者は考え込む。


 「課題点、ですか?」


 「えぇ。このクローンボットは全ての人が簡単に動かすことができるロボットを目指しています。

 しかし、これでは全ての人が簡単に動かせるとは言えません。


 今後、あなたのような方が出ないとも限らない。


 あなたを参考にしたくなりました。

もしこの後、お時間よろしければ脳のサンプルデータを取らせてはいただけませんか?」


 「えーと、それは……考えておきます」


 「そうですか。ではこれを。

もしもその時が来たら、お待ちしております」


 司会者はカウンターの上から何かの紙を取り出して渡してきた。


 マオはそれをすぐポケットへしまう。

よくは見なかったが、電話番号と誰かの、おそらくこの司会者の名前が書いてあったのだろう。

 

 別に未来の希望溢れる研究に協力したくないと言うわけではない。


 ただ、自分の頭の中を他人に覗かれるのは今ひとつ気が進まないのだ。

 特に胡散臭い連中には覗かれてたまるか!!


 どうしてか漠然とそういった気持ちが湧き上がり、素直に承諾できないでいた。


 もしこの時点で自分の脳のサンプルデータを取らせていれば何か変わったんだろうか。


 ガックリ肩を落としてステージから降りたマオがそう考えるのは、もう少し後になってからの事である。


 それにしても今日一日でたくさんの収穫があった。


 特に全員がクローンボットを操作し終えた後に机の上で資料を広げながら司会者の説明を聞く時間は非常に勉強になったと思う。


 自分の研究に何か役立つことがあるといいのだが、アイディアを商品化するならば流石に二番煎じというわけには行かないだろう。


 私だって一応、科学者の端くれだ!

自分の研究したことを多くの人に知ってもらい、ゆくゆくは自分の研究を応用した商品が世に出れば鼻が高い。


 それに、それ以前に知るという行為そのものがマオにとっては満たされることなのだ。


 研究して知りえた情報、いい情報も悪い情報も脳に詰め込む。

 脳の引き出しを知識でいっぱいにする。

 そして小さな頭の中に大きな図書館を作るのだ。

 

 だからこそ研究というのは奥が深い。


 研究者というのは私にとってある意味、天職だったのかもしれないとすら思えてくる。


 そんな一日であった。

 

 「あーあ、もう終わっちゃった。

一日あっという間だったなぁ。

今日は楽しかったわね、マオちゃん」


 クローンボットお披露目会が終わったのは、太陽が西に傾きだした頃だった。


 ご機嫌なヤヨイは鼻歌まじりで今にもスキップして帰りだしそうだ。


 「ヤヨイさんの楽しかったはどうせウシオさん関連でしょう」


 「うふふっ。わかっちゃった?

なにせウシオさんと握手できちゃったんだもの。

ワタシ、帰っても絶対手は洗わないわ!!」


 いや、手は洗えよ。というマオのジトっとした目線を気にも留めずニコニコと笑うヤヨイを見て、マオも思わず笑顔になってしまう。


 「本当にヤヨイさんは人を笑顔にさせる天才ですよね。実はちょっと元気なかったですけど今ので元気出ました」


 「でしょ。ワタシ、天才だもん!


だからマオちゃんが何で元気なかったのか当ててあげようか?

 クローンボット動かせなかったからじゃない?」


 図星だ。

ヤヨイは意外と人の気持ちに敏感なところがあるので他人のわずかな感情の変化でも読み取ってしまう。


そのあまりの正確さに時々、超能力者なのではないかと疑ってしまうのだった。


 「あれはすごかったよねぇ。

あの会場の中でマオちゃんだけ上手く動かせてなかったもの。そんな中、みんなに笑われたらさすがのワタシも落ち込んじゃうわ」


 「それ以上はもう……勘弁してください」


 あの時のことを思い出し、恥ずかしさのあまりマオは顔が真っ赤になる。


 「ふふふっ。ごめんね、ちょっとからかっただけよ。でもね、マオちゃん。人には得手不得手があるでしょう?


 大事なのは不得意なことをやった後に落ち込まない事! 


 能力なんて個人差があるんだから。努力でどうにもならないことならそういうもんなんだ、で終わらせたっていいと思うけどな。


 もちろん努力でどうにかなる事なら不得意を得意にすることも大切だけどね」


 「不得意を得意にする……?」


 「そう。できることがいっぱいあった方が世の中生きやすくなるでしょ?


でも今回のは努力したってどうにもならない事じゃない。そんな時は落ち込まない、美味しいもの食べて忘れる!


それがワタシのポリシー……みたいなものかな?」


 「さすが、人生の先輩のお言葉。勉強になります」


 ペコっと頭を下げるマオにヤヨイはそれを素早く手で制してこう言った。



いつも読んで頂きありがとうございます( ´ ▽ ` )

周りでコロナが流行ってきたようなので皆さんも身体に気をつけて……。

ではまた明日♪ おやすみなさい!

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― 新着の感想 ―
[一言] ここ2話ではクローンロボットの設定について細かく描写されていますね!やはりクローンロボットが物語のキーであり、印象づかせるのに最適です。こういう風に物語を読者にイメージづかせるのだなと勉強に…
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