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第79話 電気信号の系譜

こんにちは!

今日は休日だったのでまた投稿させていただきました^ ^


暇な時に読んでいただけたら嬉しいです。


 イオリは遠くを見ながら、静かに続ける。


 「当時の社内会議から10年後、特定の研究員たちに声がかかった。

 ヨシミ所長に集められたその研究員たちは十数名。彼らはそこで初めて『人間を完璧に再現したロボットを作ることになった』と聞かされたの。


 まず、その足がかりとして作るように言われたのがムーブエレクトロ。


 まさかあんな事になるとは誰も思わなかったでしょうけど」


 「それって確か……動かなくなった体の部位に取り付けるだけでその部位を自由に動かせるようにする機械、でしたっけ?


 あれはユーゼンの商品だったんですか。


 前に研究誌で見かけましたが、それっきり全く名前が出てきていませんよね?」

 

 イオリはこれから、自分をどうするつもりなのだろう。


 頭の中にある不安を打ち消すかのようにマオは矢継ぎ早に言葉を交わしてゆく。


 「あれは不完全な状態で商品化された。


 当時の研究員がヨシミ所長に問題点を報告しても、まともに取り合ってもらえなかったそうよ。


 それどころか、ヨシミ所長は何が問題なのかを分かっていた。分かっていて敢えてゴーサインを出した」


 「そんなことをしたら、ユーゼンの評判が悪くなるだけじゃないですか。

 事故だって起こり得たかもしれないのに」


 「そうね。

 でもヨシミ所長にとってそんな事、どうでもよかったのでしょう。


 そもそもムーブエレクトロを作ったのは収益を得るためでも、ユーゼンの評判のためでもない。


 この計画の……単なる実験のためだった」


 「実験……。

 まさかエヴァンディール計画に必要な実験だったと言うんですか?」


 「……ええ。

 脳の電気信号を応用した実験。そのお陰でクローンボットができた事に変わりはないから。


 ムーブエレクトロは脳の電気信号を増幅させ、身体の不自由な部位を強制的に動かす。


 その分、普段とは比にならないくらい身体が脳の働きに左右されやすくなるの。


 この危険すぎる問題点をヨシミ所長は実験に利用した。

 

 身体の司令塔でもある脳がこの状態で外からの刺激を受けた時、どんな反応を示すか。


 その時、身体は自分の意志に従った動きができるのか。


 実験方法は至って簡単。

 被験者にムーブエレクトロをつけ、後は被験者の潜在意識を刺激するだけ。


 『死』や『欲求』といった本能に関係するもの、それをサブリミナル効果を応用して潜在意識に訴えかける」


 「……結果はどうだったんですか?」


 イオリは僅かに口角を上げる。


 「気になるの?

 やっぱりあなたも脳科学者ね。


 結論から言うと、ムーブエレクトロは使用者の意思に反して動いた。だけど潜在意識にはきちんと従っていた。


 例えばあなたは人を殺したことってあるかしら」


 唐突な質問にマオはまたもや驚き、即答した。


 「あるわけないじゃないないですか!!」


 「なぜ?」


 「なぜって……別に殺そうとも思ったことがないし、誰も殺したくないですし、殺しで捕まるのは遠慮したいですし……」


 「普通はそう。

 でももし、あなたに少しでも殺人願望があったとしたら……?


 殺してみたい、けど殺すのが怖い。罪を犯して捕まりたくない。


 脳内では自然とそんな葛藤が生まれるはずよ。


 やがて殆どの人間は『殺したい』を潜在意識へ追いやり、『怖い』や『捕まりたくない』でその意識に蓋をする。


 その結果、『殺すのはやめる』という意志が生まれる」

 

 「それじゃあ……ムーブエレクトロは……」


 「そう。


 潜在意識の『殺したい』の方に従い、『殺すのはやめる』という意志には従わない機械ということになる」


 「信じられない。

 そんな危険なものを販売していただなんて」


 「勿論、被験者としてランダムに選ばれた顧客へ売りつけた後はすぐ販売停止となった。


 目的は実験、それが達せられたらもう不完全な商品を販売する必要がない。


 建前上、業界からも注目されていたから研究誌への掲載はしたようだけど……それも一度きりで終わったみたいよ。


 こうしてヨシミ所長はその実験結果と被験者の脳波をもとに、あるロボットを完成させた」


 「もしかしてそれがクローンボット?」


 マオの質問にイオリはゆっくりと頷いた。


 「クローンボットはある意味、完成された便利な機械。


 ムーブエレクトロでの問題点を改良しているから、普通に使う分には安全だし、大きなトラブルもない。私たちは人々がクローンボットを使えば使うほど、その分だけ脳情報のデータを収集できる。


 集められたデータはプランAで数値化され、その数値をもとにそれぞれの脳情報に合った最適な身体を作っているの。


 医療クローニング技術を用いてね。


 人々にも利益があり、私たちも計画が進められてウィンウィンの関係でしょう?


 クローンボットの真の狙いはそういうことなの」

 

 マオの頭には潜入した初日、シノミヤと脳情報データを仕分けしたときの記憶が甦る。


 あのデータは最終的には、プランAに渡っていたのか。

 

 「ユーゼンに医療クローニング技術師が出入りしていたという噂は、やはり事実だったんですね。


 それぞれの脳に合った最適な身体、つまりそれが『新人類』の身体……?


 だけど医療クローニングで作られた身体と優秀な脳情報、元を辿ればどちらとも違う個体のDNAと脳のはずです。


 このバラバラな身体と脳をいったいどうやって結びつけるんですか?」


 「……忘れたの、トレースバースの存在を」

 

 「あっ……!!」


 そうか、ユーゼンにはトレースバースがある。

 確かにサカキが散々、人々の脳を入れ替えていたのをこの目で見たのだから。


 ユーゼンの、いやヨシミ個人の厳密な計画にマオは鳥肌が立った。


 「そんな……。

 ヨシミ所長は……人間を作ろうとしたり、殺そうとしたり……それをずっと隠し通してまで続けて……。本当に何を考えているか分からない」


 「そんなの本人にしか分からない事。

 あなたはエヴァンディール計画を止めるため、ユーゼンに来たんでしょう。


 キーラボの研究員や所長さんもこの計画を調べていたことが見つかって今は処理場にいる。


 ヨシミ所長が何を考えていようと……」


 「今、なんて……?

 それってヤヨイさんとカイ所長のことですか!?

 お願いします、ふたりに会わせて下さい!!


 助けに行かないと!」


 キーラボの研究員と所長。

 そう聞いたマオはイオリの言葉を最後まで待てなかった。


 マオは必死でイオリに頼むが、イオリの無表情な顔は段々と困った表情に変化してゆく。


 「ごめんなさい。それはできない。

 処理場の管轄はナバタメくんだから。


 あそこへ自由に立ち入ることができるのはヨシミ所長とナバタメくんだけ」


 「どうして……。

 だってイオリさんも……ユーゼンの幹部、なんでしょう?」

 

 ついに聞いてしまった。答えを聞くのが怖い。


 そんな気持ちを押し隠し、マオは尋ねる。

 初めて会った時からどこか違和感はあったのだ。


 彼女は内情を知りすぎているし、研究員としてそれなりの権限もある。


 そして先程、ナバタメは彼女に言った。

 ()()()()、腹を割って話そうと。


 マオの違和感はその一言で解決されたのだ。


 

 「やっぱり気づいていた……のね」


 

 


 


 

いつも読んでいただきありがとうございます!

励みになっています!!


最近、すっかりVIVANTにハマってしまい……。

チンギスが最終回も出てくるのか気になるところです笑笑


評価•感想•ブックマークなどありましたらぜひポチッと、よろしくお願いします(●´ω`●)

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