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第77話 冷たい囁き

こんにちは!

また投稿させていただきました。


時間が掛かってしまいましたがぜひ暇な時に読んでいただけると嬉しいです^ ^


よろしくお願いします♪


 マオは自分の耳を疑う。

 やはり正体に気付かれていたようだ……。


 コマイという名前を使って潜入しているのに、ピタリと自分の本当の名前を言い当ててきたのだから。


 なぜ彼女は自分の名前を知っているのか。

 彼女はどこまで知っているのか。


 少なくともエヴァンディール計画を良くは思っていないようだが……怖い、恐ろしくてこれ以上聞けない。


 マオが言葉に詰まって何も言えないでいると、イオリはその心中を察してなのか咳払いをして続けた。


 「聞きたいことが山ほどあるという顔ね。

 でも安心して。

 あなたたちのこと、私からヨシミ所長に報告するつもりはない」


 「あなたは……」


 いったい誰なんですか?

 その一言がどうしても出てこない。


 イオリは『あなたたち』と言った。

 ユキトやクリオネ、もしかするとテロメアの存在にも気がついているというのだろうか。


 「あの……部長。お取り込み中、申し訳ありません。

 ナバタメ副長がこちらへ向かっているようです!」

 

 イオリのもとへ、先程とは別の研究員が慌てて駆け寄ってきた。


 「…………早かったわね。

 サカキのPCが()()だったのに気がついて、きっと私を疑ってる」


 「どうします?」


 「すぐにバックアップデータを隠して。

 そしてみんなは平然と振る舞うの。できる?」


 「やるしかありませんね」


 研究員は苦い顔で頷き、テキパキと周りに指示を出す。


 イオリは普段と変わらぬ表情で急にマオの腕を掴んだかと思うと、グイグイと引っ張ってゆく。


 「え……、あの……ちょっと!」


 それでも戸惑うマオの腕をイオリは離さない。


 「あなたを適当な場所へ隠す。

 今ナバタメくんに見つかったら、エヴァンディール計画はもう誰にも止められない」


 マオは状況を考えてイオリに渋々従った。


 まだ話の途中ではあったが、イオリはこちらに協力してくれるつもりだ。そうではないにしろ、エヴァンディール計画を止めるという目的は同じらしい。


 腕を掴まれて歩かされるのはあまり好きではなかったが、今は仕方がない。


 イオリはマオを大きな机の前に連れてくると、椅子をどかして机の下に隠そうとぎゅうぎゅうに押し込む。


 「あの……イオリさん、苦しいです!」

 

 机の下、両脇に山積みにされた資料。

 身体が縮こまった状態でそれに挟まれるマオは、まるでサンドイッチの具材だ。


 「少し我慢して」


 イオリは机の上にあった資料の山をマオの前に置く。

 これでマオの姿は資料に隠れて見えなくなった。


 ガチャーーーー。


 その時、ちょうど扉の開く音がした。

 誰かがプランBルームに入ってきたのだ。

 

 「お疲れ様です。ミズノ部長はどこにいますか?

 今すぐ彼女の元へ案内していただきたい」


 「お疲れ様です。あの、部長なら先程ここへ戻ってきていましたが……」


 誰かに話しかけられそう答える研究員。


 誰が来たのか。

 マオは気になって机の足と天板の間にちょうどよくできていた隙間から覗くことにした。


 「おや、困りましたね。

 いつもどこかへ出歩かれて。


 また研究員の増員でもお考えなのでしょうか」


 色白でスラッとした長身、柔らかい丁寧な言葉遣いからは氷のような冷たさが感じられる。


 この声は間違いない。

 ヤヨイやカイ所長をここまで連れてきた張本人、ナバタメだ。


 駐車場での音声をクリオネから聞かされていたので、マオはすぐに彼だと分かった。


 「どうしたの。

 私に何か用かしら?」


 コツコツと足音がしてイオリが机から離れてゆく。


 「ミズノ部長、いらっしゃいましたか。

 実は不思議なことがありまして、あなたにお伺いしようと思っていたんです」


 「なに」


 「プランAの引き継ぎがしたくサカキさんのPCを調べていたんですが……ないんですよ、どこにも。


 計画に纏わるデータがね。

 いったいどこへ消えたんでしょう?」


 「私に聞かれても……分からない」


 「そうでしたか。

 私はてっきり、あなたが隠したものだとばかり疑っていましたよ」


 「何のために?」


 「さぁ……。それはあなたが一番良く分かっているのではないですか?」


 不気味な笑みを浮かべ、ナバタメはイオリを優しく問いただす。

 あの刺さるような目つきに睨まれても、イオリは表情ひとつ変えない。

 

 「計画は指示通りに進めている。大きなトラブルもない。

 何か問題がある?」


 「……いえ、それならば問題ありませんね。


 ここ数日で原因不明の警報が鳴ったり、アロマの香りがきつくなったり、Eフロアの電力不足で上の階の電力を借りた結果、停電が起こったりと小さなトラブル続きでしたから。


 少し神経質になりすぎていたのかもしれません」


 「そうね」

 

 嫌味ったらしいナバタメの話をイオリは軽くあしらう。

 だがナバタメはなおもイオリを逃がさなかった。


 「そういえば先日なんてユーゼンのシステムに侵入者が現れたそうじゃないですか。


 サーバーをいくつも経由していて犯人の特定に時間が掛かっているのだとか……。


 かなりのハッキング技術だ。


 その犯人はユーゼンになりすまして何をしていたと思います?


 面接に来た人物に不採用通知を送りつけていたそうですよ」


 ナバタメはくつくつと笑った。


 「いやぁ……機密情報を盗むわけでもなく、不採用通知?

 わざわざユーゼンのシステムに侵入してそんな事を?

 これはまた随分と笑わせてくれますよねぇ、ミズノ部長?」


 それまで笑っていたナバタメは突然、冷ややかな表情でイオリを見つめた。


 「あなたは自ら進んで研究員を引き入れていた。

 どれも使えない人材ばかりでしたけどね。

 

 それでも履歴書やAIの合否結果には常に目を光らせていたはず。

 そんなあなたがこの事態に気がつかないわけ、ないですよねぇ?」


 イオリは何も答えない。


 「つまりユーゼンにとって不利益になる事が分かっていてみすみす見逃した、そう捉えられてもおかしくはありません。


 何故です?

 あなたは何を考えているんですか?


 幹部同士、腹を割って仲良く話そうじゃありませんか」


 「私は本当に何も知らなかった!」


 「本当に?

 ではコマイリサという研究員をここに連れてきてください。


 AIの合否結果では採用、しかしどういったわけか彼女の元に社員証が届いていない。記録上、発行すらもされていない。


 そして届いたのは不採用通知。

 あなたが無関係だというのなら連れてきたって何の不都合もないでしょう?」

 

 コマイリサを連れてくる……!?

 マオは身がすくむ。


 なんと、クリオネの侵入がナバタメに気づかれていた。

 ただどうゆうわけかイオリが疑われている。


 コマイの偽物がもうユーゼンの内部にいることは幸いにもまだ気がついていないようだが、もし本物のコマイがここへやって来てしまえば自分の正体が完全にバレてしまうのは明らかだ。


 マオはイオリが何と答えるのか、天板の隙間から食い入るように見守る。


 「そうね。連れてきて私にかけられた疑いが晴れるのであれば」


 彼女の口から出たのはそんな言葉だった。

 


 

いつも読んでいただきありがとうございます。

段々と話がダークになってきて、話数も増えておりますがお付き合い頂き大変感謝です(´;Д;`)


風呂敷を広げるのは面白いですが、畳むのは難しい!笑

ここから先は広げた風呂敷を頑張って綺麗に畳んでいくターンだと勝手に思っていますwww


また読みに来ていただけたら嬉しいです!

評価•感想•ブックマークなども……笑


よろしくお願いします♪



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