第70話 口巧者の心理戦
お久しぶりです。
遅くなってしまい申し訳ありません!
また仕事の合間を縫って投稿させて頂きたいと思います!!
暇な時にぜひ読んでいただけたら嬉しいです(*´ω`*)
「もしもし。
またあんたですか?」
いくら見知らぬ者からかかってきた電話と言えど、こんなにしつこく鳴らされたことはない。
やはり自分と何か関わりがある人物なのだろうか……。
悪い心当たりが多すぎてクリオネは身構える。
『あの……風間ヤヨイさんって名前出せば、お話聞いてくださいますか?』
電話の相手にそう尋ねられ、クリオネの顔つきが変わった。
「いいでしょう。お聞きします」
こいつはヤヨイのことを知っている。
ということは、ユーゼン絡みだ。
クリオネは一度目の電話で邪険にしたことを反省する。
それから話の内容を聞き、今度はきちんと会話が終わってから電話を切りマオに告げた。
「ユーゼンについて情報提供者が現れた。
ちょっと会ってこようかと思う。
この後マオちゃんが無線通信機でオレに呼びかけてもすぐには対応できない。大丈夫そう?」
「はい、大丈夫だと思います。
気をつけて」
マオはこくりと頷く。
もちろん早めには戻ってくるつもりだ。
まぁ、今の彼女であれば何か起こったとしても充分に対処できるはずだろう。
「じゃあ行ってくるね。
後で宅配便の送り主、調べとくよ」
相手はどうやらヤバい情報を持っているそうだ。
声を聞く限り30代くらいの男性。
一度目の電話ではボソボソと何を言っているか聞き取りづらい様子だったが、あれはヤバい情報が欲しいという依頼ではなくヤバい情報を持っているから伝えたいという事だったらしい。
クリオネはマオに背を向けて数歩、歩き出すと思い出したかのように踵を返した。
「あぁ、そうだ。
マオちゃんをユーゼンの仮眠室まで運んだ時、これを見つけたんだ」
そう言ってクリオネがポケットから取り出したのは指先ほどの黒い球体。
「なんですか、コレ?」
「お守り。まだ壊れてなさそうだし持ってて」
黒い球体を手渡されたマオは不思議そうにそれを眺める。
「それね、仮眠室のベットの下に落ちてた。
ヤヨイサンに持たせてあったGPSだよ。
きっとナバタメが彼女を仮眠室に運んだんだろう。
だからGPSの存在に気づいたナバタメが捨てたか、ヤヨイサンが落としたのに気がつかなかったのか……。
どっちだと思う?」
口角を上げたクリオネが試すようにマオに尋ねる。
「もしGPSの存在に気がついたナバタメが捨てたのだとしたら……わざわざヤヨイさんを仮眠室へ運んだのはそれが目的。
あそこは人目につかないですし、意識のない人間が横たわっていても不審に思われない場所ですよね……?
だけどユーゼンを色々見て周りましたが、どこにもヤヨイさんはいませんでした」
「そうだね。
実はオレもPCの識別番号を辿ってヤヨイサンの居場所を特定しようとした。でも無理だった。
だってPCの識別番号から辿りついたのは仮眠室、GPSがあったのも仮眠室、だけどそこにも彼女は居なかったんだから」
「そう考えると、ナバタメは敢えてGPSを壊さず仮眠室に捨てたんでしょうか?
例えば知られたくなかったとか……?
これから自分がヤヨイさんを連れて行く場所について」
クリオネの笑みが深くなる。
やはり、もう彼女をひとりでユーゼンに残しても問題はない。
「良い推理だね。
ユーゼンにはオレたちが見ていない場所がまだひとつ残ってるでしょ?
ヤヨイサンはきっとそこにいる。
そしてオレのカンが当たってればまだ生きてるよ」
――――――同じ頃。
薄暗い地下室でずるずると引きずるような音がこだまする。
音を出しているのは生天目。
彼はすっかり大人しくなった榊を引きずって鉄格子の扉を開けると、その中へ蹴り飛ばした。
うめき声を上げる榊に生天目はご満悦の表情だ。
「やっとあなたをここへ連れてくることができました。
処理場は防音、警備も居ないしカメラもない。
これで積年の恨みを晴らすことができそうです」
「こ……これは夢か。
私は何故、こんな所にいるんだ」
呆然とする榊に生天目は優しく答えた。
「それはきっと私のせいでしょうね。
喜美所長に拾われてから、私は恩を返すかのようにここで働きました。
信頼を得るためにどんな汚れ仕事でもやりました。
そう、全ては今、この時の為だったのですよ……?」
「意味がわからない」
「おや、分かりませんか?
あなたが17年前に何をしたか……。
本当に何も覚えていませんか?」
榊が首を横に振ると、生天目は狂ったように笑い出した。
「分からないときましたか。
さすが、最期まで実にあなたらしい!!」
長い前髪の奥に隠れた生天目の瞳から憎しみが溢れ出す。
「17年前、あなたは私の兄を殺した!!!!」
生天目は勢いよく榊の目の前まで近づくと、取り出したナイフを手に構え大きく振り上げた。
「待て!!
まて、まて、まて!!
寄るなぁぁぁぁ!!」
身の危険を感じた榊が奇声をあげる。
「わ、わ、私を殺す気か?
殺してもお兄さんは戻ってこないんだぞ!
私も君のお兄さんのことは非常に残念だったと思っている。
でももし君が人殺しになれば……お兄さんだって浮かばれない」
榊の口から咄嗟に出た言葉が、生天目の神経を逆撫でした。
「黙れ、お前が私の兄を語るなぁぁ!!!!」
しまった。と、榊の顔がみるみる青ざめてゆく。
しかしそれでも彼は生天目の説得を止めない、止められない。
口を閉じれば待つのは死だ!
「生天目くん、すまなかった。
だがこれだけは聞いてくれ。
今、私の上着には小型カメラがついている。
こうしてる間にもこの映像はリアルタイムで私のPCへ送られ、私の心臓が止まれば映像が知人に渡るようになっている。
その知人、というのが警察官なのだが……。
同じ職場の同僚がこれから殺人犯になるという証拠を撮影するなんて、私には耐えられない」
生天目は冷たく鼻で笑った。
「それで私を脅したつもりですか?
所詮ハッタリでしょう。
あぁ、そういえばあなたは幹部になる前、ユーゼンの営業部長でしたよね。
警察のパトロールで導入されるようになった『警備ロボット』もあなたが警視庁に売り込んで契約を取ってきたとか……。
それなら警視庁に知人がいても不思議ではありません。
真実を交えながら話す嘘というのは一番、信憑性がありますから」
「嘘だと思っているなら私の上着を調べてみるといい。
カメラがついている。
私に恨みがあるなら、君自身の手でそのカメラを壊してからたっぷりと晴らせばいい。
そうすれば証拠は残らないからな。
私にだって責任はある。
だからこれがせめてもの償いだと思ってくれ」
それから榊は目を伏せて口を閉ざした。
まるで生天目の次の言葉をじっと待っているようだった。
いつも読んでいただきありがとうございます(*´ω`*)
なかなか思うように書く時間が取れず更新が遅くなってしまっていますが、それでも読んでいただいてる方々に感謝です!!
また隙を見て投稿させて頂きたいと思いますのでよろしくお願いします。
それではおやすみなさい!




