第68話 テロメア
こんにちは^ ^
今日もまた投稿させていただきました♪
ぜひ暇な時に読んでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします!!
「大体の事情は分かった。
それじゃああんたはユーゼンの内通者じゃないのか?」
ユキトは男に鋭く尋ねた。
カイ所長がヤヨイと共にユーゼンに連れ去られたのなら内通者ではないとしても納得がいく。
しかし、同じくユーゼンを探っていたであろうカイ所長のクローンがここに残っているということにユキトは納得がいっていないのだ。
「私はカイ博士とヤヨイくんと共にユーゼンを調査していた側だ。内通者などではない。
やはりこのラボには内通者がいたのか?
そのせいでこんな事になってしまったのか……?」
「少なくともヤヨイはそう睨んでいた。
でもあんたとカイ所長だってユーゼンと連絡を取り合っていたんだろう。何のために?」
「……不本意ではあったが、ユーゼンの実験に協力していた。そもそも私たちはその実験から手を引く為にユーゼンを調査して潰そうとしていたんだ!」
「どんな実験だ?」
「これ以上続ければいつか必ず惨劇が繰り返される。
そう思えるような実験だ」
ユキトはため息をついた。
「何をそんなに隠したがっている。それで味方だという主張を信じろと言うのか?
いいか、あんたがここにいるということはカイ所長は今、ユーゼンにいる。ヤヨイもユーゼンに連れ去られた。
クローンには分からんかも知れないが、ふたりの命がかかってるんだぞ!」
「ユキトさん、落ち着いてください!」
棘のある言葉が男に向けられたので、マオは咄嗟に止めに入る。
「あの研究記録と今の話を聞いたところ、確かにカイ所長と……今ここにいるカイ所長は内通者ではないと、少なくとも私はそう思います。
理由はどうであれユーゼンを止める、そしてヤヨイさんとカイ所長を助け出すという目的は同じのはず。
だったら私たち協力した方がいいと思いませんか?」
ユキトはマオの提案を鼻で笑った。
「ハッ、協力?
このクローンは脳みそまでカイ所長じゃない。
表面上ではそう取り繕っていてもカイ所長と全く同じ考えだとは限らないんだぞ!」
「…………テロメア」
「えっ?」
暫く黙っていた男がボソッと口を開いたのでマオは聞き返す。
「昔、カイ博士が私にそう名付けた。
テロメアと……」
「フンッ、大層な名前だな。
おまえが作られた目的にぴったり合う」
「ユキトさん、どうしてそんなに突っかかるんですか!
彼は……テロメアはヤヨイさんのことをずっと気にかけていました。
ヤヨイさんの家に行って、部屋の様子まで見て、ヤヨイさんの行方の手がかりを見つけようとしてくれたんですよ」
男は『テロメア』と呼ばれることに抵抗はないようだった。
マオはこれまでのことを思い返す。
ヤヨイとカイ所長が一緒に居なくなったのなら、自分がお披露目会の翌日からずっと話していた相手はカイ所長ではなく『テロメア』だったという事になる。
これで辻褄が合った。
カイ所長は普段、曖昧な物言いはしない性格だ。
それなのにヤヨイはきっと大丈夫だと根拠のないことを自分に言ったのは、それがテロメアだったから――。
あれはテロメアの優しさから出た言葉なのだろう。
あの時、カイ所長に感じた違和感の正体はこれだったのか。
テロメアはカイ所長を守りきれなかった事、ヤヨイを巻き込んでしまった事に罪悪感を感じていた。
内情を知らない者からすればその罪悪感は過剰とも取れるほどだ。
テロメアがユーゼンの内通者だとしたら、ヤヨイの家に行ったという話を安易にはしないはず。
さもないと疑われて面倒なことになる。
テロメアは内通者じゃない。
だとしたら内通者は一体誰なのだろう。
ユキトは先程のマオの発言に驚いて暫く黙っていたが、唐突に口を開いた。
「ちょっと待て。こいつはヤヨイの家に行った時、部屋の中まで見たのか?
お前はなぜそれを知っていた!?」
しまった、とマオは思った。
『これから話す内容はマオくん以外まだ誰も知らない。
いずれ知られる事かもしれないが、今はまだ黙っていてくれないだろうか?』
カイ所長が……いや、テロメアがそう言ったことでまだユキトに話していなかった。
そのまま言うタイミングを逃してしまったのだが、これは少々面倒なことになりそうだ。
困っているマオの肩にポンと手を置き、テロメアはユキトに言った。
「私からマオくんにお願いしたんだ。
黙っていてくれと。
皆に心配をかけたくなかった。
たが君たちはもう状況をかなり把握しているようだから、説明させてくれ」
テロメアの話す内容にユキトは少し納得がいったようだ。
マオが長いこと黙っていたせいで不貞腐れた顔はしているが、これでテロメアが内通者だと疑う気持ちはユキトの中で幾らか薄らぐだろう。
「黙っていて申し訳ない。
まさかマオくんもここまで律儀だったとは。
最近何かとふたりで行動しているようだったから、てっきりユキトくんには話しているのかと思っていた。
まぁ、いずれ知られることだとは思っていたが……」
「すみません、言うタイミングを逃してしまいました。
これからどうしましょう。
私たちもヤヨイさんの家に行ってみますか?
何か手がかりが見つかるかも」
ユキトは口をへの字に曲げ、ため息をついてマオを見る。
話していなかった事を根に持っているようだ。
それに関してはマオも弁解のしようがない。
「その、ヤヨイの部屋にあったという宅配便の段ボール。中に入っていた研究資料はユーゼンの調査と関係があるのか? 送り主は?」
「送り主は分からない。
住所だけ書かれていたんだが、調べたらそこは更地だった。
宅配便は日時指定をしていたからあの日、カイ博士と会うタイミングに合わせて用意した可能性が高い。
そう考えれば、おそらく中身はユーゼンと関係がある資料だ。
まだ段ボールもヤヨイくんの部屋に残っているだろうから調べることはできそうだが」
「よし、なら今からヤヨイの家に行こう。
お前は一度ユーゼンに戻ってクリオネにUSBを渡してきてくれ。
ヤヨイの家には俺とこいつで行く」
ユキトはそう言ってテロメアを睨む。
「えっ……、そんな。
仮にも女性の家ですよ!?
私も行った方が……」
そう言うマオにユキトは手を振って拒絶した。
「暫く一緒に同行して様子を見てくる。
お前はクリオネに状況を説明して宅配便の送り主を探してもらえ」
小声でマオにそう囁いた後、「行こう」とテロメアを促しユキトは所長室を出ようとする。
その時、コンコンと所長室をノックする音が聞こえた。
「失礼します、カイ所長」
部屋に入ってきたのはひとりの研究員。
「先程、見学会に来ていた学生数名がその……良く分からない事を話していまして……」
「戻ってきたのか。
それで何と言ってるんだ?」
テロメアが尋ねると、その研究員は困ったように答える。
「それが……まだ報酬を貰っていないとかなんとか……」
「どういうことだ?
まぁ、いい。学生たちに会ってみよう」
「お願いします。あぁ、それともうひとつ!」
研究員は慌ててテロメアを引き止める。
「管理センターのドアが空いていたので不思議に思い、中の様子を確認したんです」
「それで?」
「何故かPCが複数台置いてあって、その内の一台が水没しているようでした。そばに白衣が脱ぎ捨てられてあったので誰か無断で入ったのかも知れません。
しかもなんだか……焦げ臭かったような」
「分かった、報告をありがとう」
そこまで聞いたテロメアは皺の寄った眉間に手を当てため息をつく。
「君たち、まずどういうことか説明をしてくれ」
そこで初めて、マオとユキトは自分達が白衣を着ていないことに気がついたのだった。
いつも読んで頂きありがとうございます!!
この間、レビューやブックマークを頂けて喜びの舞をひとりで踊っていました笑
本当に感謝です!
『テロメア』ってDNAのはじっこにある物質?らしいですね。細胞のミスコピを防いだり、DNAを保護する役目があるのだとか。
歳を取ると細胞分裂のときにこれが段々と短くなるそうです。イーーーヤーー(´;Д;`)
皮肉な名前ですが、カイ所長を守ろうとするクローンはまさしく『テロメア』なのかもしれません。
ブックマーク•感想•評価などありましたら励みになります!
何卒よろしくお願いします♪




