第66話 苦い間違い
おはようございます^ ^
今日もまた夜中に投稿失礼します。
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
「全て分かったってどういうことですか?
Bの研究記録は誰が書いたのかも、カイ所長が何をしたかったのかもあまり書かれてなかったのに……」
小走りでユキトの後ろをついていくマオはカイ所長についてずっと考えていた。
ユーゼンと繋がりがあったのは間違いない。
それは何がきっかけだったのかは分からないが、誰かを守ろうとしていたことは事実だ。
果たしてカイ所長は本当に内通者だったのだろうか。
「クリオネは確かに言った。
ヤヨイと所長がナバタメに連れて行かれたと。
その話が本当ならカイ所長は今、ユーゼンにいないとおかしい」
「え?
でもカイ所長は今、ここで講演中ですよね?
じゃああれは一体、誰だっていうんっ――――ぐっ!」
ユキトが突然、歩みを止めた。
後ろから追いかけていたマオは予期せぬ行動に止まりきれず、ユキトの背中に突進してしまう。
「ちょっといきなり止まらないでください。
痛いじゃないですか」
「静かにっ!
カイ所長が戻ってきた」
ユキトの視線の先にはぐったりとした顔で所長室に入っていくカイ所長の姿があった。
「行くぞ」
「待ってください、行ってどうするんですか?」
「真実を確かめる」
そう言ってユキトが向かった先は給湯室。
さっぱり分からないが、何か考えがあるのだろう。
適当にコーヒーを作りそれを持って所長室の前に立つ。
「カイ所長、コーヒーをお持ちしました」
ユキトがそのまま所長室の中へ入りそうだったので、すぐにマオもその後ろから続いた。
「あぁ、ユキトくん。
いつもすまない。テーブルに置いてくれ。
今日はやけに熱心な学生たちばかりだった。
質問攻めにされてなかなか帰してもらえなくてね。
思ったより時間がかかったよ」
たった今、講義を終えたばかりで所長室に戻ってきたのだろう。
疲れた顔をして、最近あまり寝ていないのか目の下にクマができている。
それ以外はいつものカイ所長だ。
特に変わった様子はない。
マオはカイ所長の顔をまじまじと見つめる。
「マオくん!
有給休暇中ではなかったのか。もう大丈夫なのか?」
「えぇっと……その……」
なんて言おうか。
マオが返答に迷っている間、カイ所長は先程ユキトがテーブルに置いたコーヒーカップに手をかけ口元へ運ぶ。
顔色ひとつ変えずに中身を飲んだカイ所長を見て、ユキトはため息をついた。
「やっぱりな……」
「ユキトくん、どうかしたのか?」
ユキトは確信したようにカイ所長に向けて言い放った。
「あんたは一体誰なんだ!?」
「本当にどうしたんだ、突然。
君は何を言っている……?」
驚いて目を丸くするカイ所長に、ユキトはもういいとばかりに首を横に振る。
「いや、聞き方を変えよう。
あんたはAかBか、一体どっちなんだ!」
しばらく沈黙が続いた後、やがて観念したかのように目の前の男が笑った。
「あの研究記録を見たのか。なぜ気がついたんだ?」
「ヒントは他にもあった。
もちろんあの研究記録にも、ユーゼンの防犯カメラにも、あんたが残した論文にもな。
何よりヤヨイが失踪してからのあんたはいつもと様子が違っていた。
まるで最初から原因を知っていたような、自分が関わっていると言いたげな行動をしていただろう」
「私の論文まで見ていたとは……。
きみもとことん追求したがる性格のようだな。
やはりきみたち相手に全て隠し通せはしなかったか」
男はコーヒーカップを眺めて、ため息をついた。
「このラボの所長は〈最初で最後の超一流技術師〉、そう謳われるくらい腕の立つ医療クローニング技術師だった。
おそらくその時、世に出したであろう論文はキーラボを守るために使われたんだ」
ユキトの推測に男が口を挟む。
「『医療クローニングの社会的有用性と今後の発展について』か。昔はともかく、今のカイ所長はその在り方を否定している」
「だろうな。
そうじゃなきゃ医療業界から消えたりはしない。
論文にはこう書かれていた。
『医療クローニングは失った希望を取り戻すことができる最高の技術だ』と。さらにこうも書いてあった。
『現在、医療クローニングで全身を複製することは法律で禁じられている。
それは人をひとり作り上げるのと同じ行為であって、倫理に反するからだ。
でもよく考えてみてほしい。それは我が子を産むのと同じ事ではないだろうか。亡くなった者にまた会いたいという願いや希望を医療クローニングに託す者もいるはずだ。
そこには倫理観を超えた、人としての慈愛や敬慕の気持ちが存在している。
強い思いや願いを法律で縛る事は難しい。
なぜなら人類はいつも、誰かの強い思いや願いによって発展してきたのだから』
カイ所長は作り上げてしまったんだな、自分自身の複製を」
「そうだ。あれほどの技術があれば全身を複製するのは容易い。彼も若かった。自分のクローンを作ることがどれだけ恐ろしいことか想像もつかなかったんだろう」
「著者が論文の中で違法行為を助長するわけにもいかない。
だから論文にある研究内容は自分ではなく、あくまでも第三者の研究内容として記してあったんだな。
『全身を複製し、自分をもうひとり作り上げたとする。これは多くの分野においてメリットが大きい。
研究者、医者、技術者、経営者……。皆がその利益に着目するだろう。
研究はより一層奥が深いものになる。
手始めに私は味覚の好みについて調べることにした。
全く同じ遺伝子を持つふたりの人間でも生活環境や考え方の違いによって味覚の好みが変わるという興味深い海外の記事を見つけたのだ。
例えばコーヒー。同じ遺伝子を持つふたり、つまりは一卵性の双子だ。それぞれが違う環境で育ったとしよう。そのうちの片方、Aはブラックを好んでいるのに対してもう片方、Bは砂糖をたっぷり入れたものを好む。
Aの育った環境はコーヒーがありふれた飲み物で、砂糖を入れるという習慣が無かった。だがBの育った環境ではそもそもコーヒーを飲むこと自体が無かった。
だからBは飲み慣れていない味を苦痛に感じた。
この結果はよく考えれば当たり前の事かもしれない。
だがこの当たり前に疑問を持ち、突き詰めることこそが私の美学でもある』
カイ所長はよくブラックコーヒーを作って飲んでいた。
今、俺があんたに渡したコーヒーには大量に砂糖が入っている。
ここにいるのが本物のカイ所長なら顔をしかめて飲むのを止めていただろうな」
「なるほど。確かにユキトくんのいう通りだ。
だがいくらブラックが好きでも、たまには甘いコーヒーを飲みたくなる時だってあるだろう?」
「あぁ、そうだな。俺の親父も昔はそうだった。
だけどあんたは俺がコーヒーを持ってきた時、『いつもすまない』と言った。
実はカイ所長にコーヒーを作って持って行ったのはこれが初めてだ」
ユキトはニヤッと笑って目の前にいる男を見つめた。
「研究者は実験のとき、何かにつけてAとBを多用する奴が多い。もし俺たちがいつも接していたカイ所長がAだったのなら、あんたはBか?
教えてくれ、あんたは俺たちの味方なのか……?」
いつも読んでいただきありがとうございます♪
この数日間、扁桃炎になってしまい喉痛いの咳がひどいので苦しめられました笑
小さい頃からよく奴らには世話になってるので、今日はもうやけくそで激辛鍋のつゆを飲み干してお返ししてやりましたよ!
扁桃炎め、覚えていろ( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
こんな感じで戦いはまだまだ続きそうです……。
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