第65話 切り抜かれた真実
おはようございます^ ^
つい何時間か前にも投稿させて頂きましたが、今回は流れが続いていたのでまた投稿します!!
ぜひ暇な時に読んでいただけたら嬉しいです(●´ω`●)
この映像にはどう考えても不自然な点がある。
それはトップベントシステム、ようは駐車場の換気扇だ。
少し見ただけでは何の変哲もないただの地下駐車場が映っているようにも見える。
しかし駐車場に取り付けられた換気扇のプロペラが一瞬、止まったかと思ったらかなりの勢いで逆回転を始めたのだ。
この動き方は尋常ではない。
さらに防犯カメラは音声付きのもので、男性が何かを叫んでいるような声が記録されていた。
何と叫んでいるのか。
プロペラが止まった時点からの映像をクリオネは逆再生して確認した。
『やめろ!! 彼女には』
そうか。なるほど。
この映像は編集をする時に、どうしても残ってしまう音声を隠そうと倍速で巻き戻されている。
映像の編集に不慣れな人物の仕業だろう。
そしてその後、何事もなかったかのように数分前からの映像を流してループさせ誤魔化したんだ。
出来上がった映像はそれまで正常に動いていたプロペラが一瞬止まる。それから勢い良く逆回転したかと思えば男性の短い叫び声が聞こえる。その後は静かになりプロペラもまた正常に動き出すという不自然なものになる。
素人が映像を編集したのなら、本来の映像は完全に消されていないかもしれない。
だから作業工程を元に戻すことができれば……。
「よし、できた」
クリオネは涼しい顔でそう呟くと、露わになった本来の映像を確認した。
「何が映ってる?」
しかしユキトの問いかけにクリオネは呆然として答えられない。
「なにこれ?
え、どうゆうこと??」
地下駐車場に着いた白いワンボックスカーから降りてくるユーゼンの幹部、生天目。生天目が抱えているのは気を失っているヤヨイだった。
『やめろ!!
彼女には手を出すな。無関係だ。
連れて行くなら私だけで充分だろう』
叫び声と共にワンボックスカーから降りてきたのは紛れもない、カイ所長だ。
『困りますね。
喜美所長にはおふたりとも連れて来いと言われていますから。
ユーゼンの周りをコソコソと嗅ぎ回って無事でいられると思いますか?』
生天目はヤヨイを抱えたまま、片足で車の扉を閉める。
『君たちが良からぬ事を計画しているのは分かっている。
その証拠もこちらにある。
でも君はまだ若い。
残りの人生を全て棒に振る気か?
引き返すのなら今のうちだぞ』
『証拠……?
あぁ、これのことですか?』
ヤヨイに被さった上着のポケットを探り、小さなチップを取り出した生天目はそのチップを床に放り投げた。
ケースごと床に転がったチップは生天目の足元で踏み潰され粉々になってしまう。
『これであなたの言う証拠とやらも無くなってしまいましたね。
では早く一緒に来てください。
いくら私が男性と言えど、人ひとり抱えていられる時間は限られています。
腕が疲れますから』
柔らかい丁寧な言葉遣い、色白でスラッとした長身。
しかし生天目の行動からは迫力が感じられた。
『もし私がひとりで逃げたら?
証拠はこの他にもコピーがあるとしたら?
こんな事をしても意味がないだろう』
『おや、あなたが逃げれば彼女は廃人となりますよ。
これは便利な道具ですが、凶器にもなることを忘れてはいませんか?
脳情報をコピーするだけではなく、吸い出すこともできる。そんな優れものですからね』
ヤヨイの頭にはトレースバースが刺さっている。
このせいでカイ所長も迂闊に動く事はできない。
それに生天目はカイ所長の説得にも動じていない。
長めの前髪で少し隠れてはいるが、凍るような目つきだ。
それがカイ所長へと向けられる。
『分かった、君と一緒に行くからヤヨイ君には何もしないでくれ』
カイ所長が大人しく歩き出すと、その後ろからヤヨイを抱えた生天目が監視するように付き添う。
3人がいなくなると地下駐車場には再び静寂が戻った。
「おい、クリオネ!
何を見たんだ!?
早く言え!!」
ユキトの強い語気でクリオネは我に返る。
「ヤヨイサンと……お宅の所長が……ナバタメに連れて行かれた」
「ナバタメだと?
あのユーゼンの幹部か。
それでどうなったんだ!?」
「…………分からない」
「本当にカイ所長も一緒に連れて行かれたのか?」
「あぁ。所長さんだ、間違いない!
ヤヨイサンを人質にとられてナバタメに脅されていた。
映像はそっちに送れないけど音声だけなら持ち帰れそうだよ」
クリオネは言うが早いか、防犯カメラの音声データのコピーを始めた。
「そうか。
助かった、もうカイ所長の足止めはいい。
後は俺が話をつけにいく」
「話をつけに行くって……?
ユキトさん、何か分かったんですか」
マオは驚いてユキトを見る。
「全て分かった」
吐き捨てるように言い残してユキトは部屋を出て行く。
「ちょっと、待ってください、ユキトさん!!
ああもう、いつもひとりで勝手に突っ走って!!」
マオは慌ててユキトの後に続いた。
「さて。これとヤヨイサンが持ってるUSBでユーゼンとどこまで渡り合えるかな。
なんか面倒ごとも増えた事だし。
はぁ……。そろそろ手を引くべきか……」
音声データのコピーを終えたクリオネは珍しく険しい顔をしていたのだった。
同じ頃――――――。
ユーゼンの所長室にはただならぬ空気が流れていた。
「君にはガッカリだよ。
あれだけ大口を叩いたわりに何の成果もないままここへ戻ってくるなんて」
「申し訳ありません、喜美所長。
生天目君が協力してくれると話していたのですが、まだ代わりの者を見つけていないようでして……。
もう目星はつけてありますのですぐに声をかけます」
そうは言ったものの、榊の額には汗が滲んでいた。
代わりの者の目星なんてつけてあるわけがない。
見つからないから生天目に協力をお願いしたのだから。
「いいや、約束は昨日までと言ったはずだ。
生天目君!」
喜美に呼ばれて所長室へ入ってきた生天目は床を見下ろす。その視線の先で榊は土下座のように深々と頭を床につけうなだれていた。
「お呼びでしょうか、喜美所長」
「聞いていたか。
君はこの状況をどう考える?」
「状況、ですか。
彼のせいで計画に狂いが生じているかと。
そればかりかプランBの被験者、白鷺ユキトをプランAにも起用しようとした。
白鷺ユキトはユーゼンの重要な協力者、白鷺優吾氏のご子息です。
幸い大事には至りませんでしたが今後、彼の軽率な行動のせいでユーゼンの信用に傷がつくのは避けたい。
ましてや全て私のせいにして嘘までつき自分を守ろうとする男だとは……」
榊は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「何を言ってるんだ、君は。
分かったとあの夜言ったじゃないか。
それで私が首の皮一枚繋がるとも……」
「分かった、と言ったのはあなたの置かれた状況について理解したという意味です。
私はあの時、手を貸すとは一言も言っていません」
「生天目ぇ!!
私を裏切る気か!?」
「都合の良い解釈をしたのはあなたです。
また人のせいにして自分を守るおつもりですか?」
床から鬼のような形相で生天目を見上げる榊とそれを冷たい目で見下ろす生天目。
喜美は口を挟まずにふたりの様子を眺めていたが、やがて苦々しい顔をして言った。
「もういい!
榊には責任感が無かったようだ。
プランAなどという大役を任せた私が間違っていたな。
君は処理場でゆっくり休むと良い。
せめて被験者500人目として尽力した君の名前はこの計画に残してあげよう」
「ひっ!!!!」
榊の顔がみるみるうちに青ざめてゆく。
これから何が起こるか、彼には良く分かっていたのだ。
「生天目君、すまないが彼を処理場まで連れて行ってあげてくれ」
「承知しました」
生天目は榊の腕を乱暴に掴んで立ち上がらせると部屋の外へと引っ張り出す。
「やめてくれ、頼む、頼むよ!!
喜美所長、喜美所長、喜美所長っ――――!!」
榊が半狂乱で叫ぶ声も虚しく、喜美の心に届くことはなかった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
皆様に本当に感謝です♪
サカキさんが大変なことになってしまいました。
頑張れ、サカキさん!!
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