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第60話 弱点

おはようございます^_^


ゴールデンウィーク休暇で時間が取れたのでやっと投稿ができました。


また見ていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします♪


 翌朝。体調もすっかり良くなり、マオはキーラボへ向かっている最中だった。


 家を出る前になんと、あのシノミヤが大事を取って休むよう連絡してきたので今日一日はユーゼンの仕事に拘束されることはない。


 案外、悪い人ではないのかもしれないとマオは内心思ったのだ。


 研究員と学生たちの朝は早い。


 ひとつの学校を相手に月2回行う見学会と講演。

 

 マオは自分が講師を務めた私立翼蘭中学校を思い出す。

 この学校が来るとすれば次は来月。


 今日キーラボへ来るのは別の学校の高校生だ。


 午前中から講師を務めるカイ所長はもう既にラボにいるはず。

 見つからないようにしなければ。

 

 キーラボについたマオが周りを気にしながら管理センターに直行する。

 

 ドアを静かに開けるとユキトがPCの前に座って不機嫌そうにしているのが見えた。


 「おはようございます、ユキトさん。

 いつから来てたんですか?」

 

 「さっきだ。

 それよりここへ来る時、カイ所長には見つかってないよな?」


 ユキトが目を鋭くさせてマオに確認を取る。


 「もちろん大丈夫でしたよ。

 誰にも見られてません」


 「ならいい。本題に入る。

 お前はクリオネが言ってた『sideB 研究記録』を覚えているか?」


 「はい、カイ所長がUSBに残してあるっていう記録ですよね?


 sideBなんてものがあるならsideAの記録もありそうだなと思っていたので。よく覚えています」


 「その予想はあながち間違いではなさそうだ。

 データの痕跡を辿っていくと『sideA 研究記録』と『sideB 研究記録』のデータふたつが交互に見られている事が分かった。


 どちらもカイ所長のPCで夜遅い時間に、だ」


 「その……研究記録の中身をここで見ることはできるんですよね?」


 「できる。できるんだが……これは思ったより時間がかかりそうだ。

 カイ所長は随分、慎重に行動しているらしい」


 やはり不機嫌そうにため息をついて、ユキトは指で机の上をコツコツと叩く。


 ユキトが不機嫌な理由はこれだ。


 せっかく手がかりとなる研究記録がA、B両方見つかったというのに、その中身をすぐ確認できないというもどかしさから来るものなのだとマオは予想する。


 「あの……ユキトさん。

 やっぱり推測通りカイ所長がエヴァンディール計画に関わっていたとして、それを調査しているヤヨイさんに協力するフリをしていたら……どうしますか?」 


 ユキトはゆっくり目を閉じて言う。


 「そうだな。

 ぶん殴ってでもヤヨイの居場所を吐かせるか、そのまま警察に連れていくか……。


 だがヤヨイを誘拐したという確実な証拠もない。エヴァンディール計画なんて突飛な話も警察は信じちゃくれないだろう。


 カイ所長を動かすにはまずこちらが相手の弱みを掴んで交渉を持ちかける、が正解だな」


 「それは……その、カイ所長の弱みを掴んで脅して従わせるってことですか!?」


 不安でたまらないといった表情のマオを見て、ユキトは眉間に皺を寄せた。


 「他に方法があるか?


 実はこの間、ミコトに会った。


 彼女から聞いたが、カイ所長はカイ博士と呼ばれる医療クローニングの第一人者だったそうだ」


 「えっ、ミコトさん?

 ラボに来てたんですか?」


 「あぁ。お前がユーゼンに戻った後すぐにな」


 「ミコトさんはカイ所長のことを知っていたんですか?」


 「カイ所長は〈最初で最後の超一流技術師〉と呼ばれるぐらいの腕を持っていた。

 そんな凄腕のクローニング技術師に診てもらいたいと親父さんのツテを頼ってあちこち探し回っていたそうだ」


 「まさか……あのカイ所長が……?

 専門的な論文を書いてるだけじゃなく、そんなに高度な技術まで持ち合わせていたなんて」


 「ところがカイ所長は何年も前に突然、医療業界から姿を消した。

 行方は誰も知らない。俺たちを除いては」


 「カイ所長に何があったんでしょう」


 「知らん。

 だが俺はそこがカイ所長の弱みになると考えている。


 何とかしてこちら側についてくれれば、ミコトを治療してもらえる可能性だってあるしな。


 手始めにA、B両方の研究記録を見たいところだが内容の復元にはもう少し時間がいる。


 お前はその間にヤヨイのデスクへ行ってUSBでも見つけてきたらどうだ?」


 「あぁ……そういえば……」


 これから切り札になるかもしれないUSB。


 クリオネがそう言っていたが、中に入っているデータについてはどんなにマオとユキトが追求しても何も教えてもらえなかった。


 ヤヨイのデスクを漁ってUSBを探しているのがカイ所長に見つかったら、面倒なことになるのは間違いない。

 

 確かにカイ所長がいないうちに行動した方が得策だろう。


 「そもそもズィファイルにそんなデータは入っていなかったし、あいつの()()()()()からUSBが出てくるとも思えんが……」


 ユキトは少し表情を緩め鼻で笑った。


 「ユキトさんは一緒に来ないんですか?」


 「俺はここでデータの復元を待つ。

 カイ所長が書いたあの論文を読みながらな」


 きっと触らぬデスクに祟りなしとでも思っているのだろう。


 紙だらけでゴミ屋敷のようなヤヨイのデスクを思い出してマオはげんなりする。


 あの中からUSBを見つけるのは、宇宙のどこかで落としてしまったピアスを見つけるくらい至難の業だ。


 面倒事を自然に押し付けられた感じが否めないマオはユキトを横目でチラッと見つめて無言で管理センターを出る。


 ヤヨイがいなくなってもう4日も経つというのに、キーラボは相変わらずだった。


 皆、自分たちの研究に集中しており、まるでヤヨイなどという人物は最初から存在しなかったかのように感じられる。


 しかしヤヨイのデスクだけは圧倒的な存在感を放っていた。いなくなってしまった彼女の代わりに主張しているのかもしれない。


 その光景だけはある意味、相変わらずだ。


 マオは再びヤヨイのデスクに積み上げられた書類の山を見上げている。


 乱雑に置かれている書類のせいで引き出しを開けるのにも一苦労しそうである。

 

 USBのように小さくて大事なものであれば普通は机の上に堂々と放り投げる真似はしないだろう、普通は。


 きっと引き出しに入れておくはずだ……普通は……。


 「まずは引き出しが開くまで片付けるのが先か」


 そう考えたマオは重い腰を上げてブツブツと独り言を言いながら片付け始めた。


 

いつも読んでいただきありがとうございます!


最近、仕事が立て込み始めて投稿が遅くなってしまいました(*´Д`*)


悔しいので少ないゴールデンウィーク休暇を存分に楽しみたいと思います笑


評価•感想•ブックマークなどありましたら何卒宜しくお願いします。

そして、いつも感想をいただきありがとうございます!

大変励みになっております。


では早速続きを書きにε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘


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