第6話 クローンボットお披露目会
こんにちは( ´ ▽ ` )
最近、更新のタイミングを試行錯誤中です。
また暇つぶしに読んで頂けたら嬉しいです!
「皆様、本日はクローンボット完成による特別お披露目招待会にお越し頂き誠にありがとうございます。
既にメディアで取り上げられてはおりますが本日は選ばれた皆様の目で直接、当社の力作をご覧いただければと思っています。
では、早速ではございますが登場してもらいましょう!」
ステージ上で司会の男の挨拶が始まり、この会場にいる招待客に期待と緊張が走る。
マオの隣に座っているヤヨイからもゴクリと生唾を飲む音が聞こえた気がした。
アルビノの為、もともと視力が弱く日光にも弱いヤヨイは先程まで屋外でかけていたサングラスをいつの間にか外していた。
そして今、千切れんばかりに目を凝らしながらステージを見つめている。
「きっとこの後クローンボットと一緒にウシオさんも登場するはずよ!
こんなチャンスまたとないわ!
ほら、マオちゃんもちゃんと見てなくちゃ」
と、マオに小声で耳打ちしてくるヤヨイ。
うん、彼女はただ単に視力が弱いから目を凝らしていたわけではなかった。
ただのミーハー女子としてのファン魂が、この瞬間を絶対に見逃すな! と騒いでいるだけのようだ。
ところで今の時代のこの国では、場合によるが弱視の者の視力が確実に回復するという薬が開発されている。
毎日コツコツと瞼に塗って寝ると、少しずつ視力向上が見込めるという優れものだ。
ヤヨイはそのおかげで日常生活に困ることは無くなったと以前話していたことがあった。
時代とは、進歩するものだ。
あともうひと越えしてくれれば、全盲でも視力回復が見込めるような薬が作られるだろう。
そんなことを考えていたマオは突然、聞こえた悲鳴にビックリして体が反応した。
いや、違う。これは悲鳴ではない。
女性招待客の黄色い声だ。そう分かるまでにあまり時間はかからなかった。
「キャー!
ウシオさん、頑張ってー!!」
皆、何か口々にクローンボットを操縦しながらステージに登ってくるウシオに声をかけている。
クローンボットはテレビで見たのと同じものを使っている。
もちろん、この間のマネキンのような頭も健在だ。
お決まりの黒髪をかき分ける仕草をし、自分を見ている招待客に対して手を振りながら登場する姿はすっかり売れっ子アイドルという雰囲気だった。
やはりマオにはどういうわけかウシオがテレビで見たときと同じ、どこにでもいそうな感じの人に見えて仕方がないのだが……。
それは今はあえて言わないことにする。
「皆さん、来てくれてありがとう。
ボクがゲストのリポーター、ウシオです!
今日はこの最新式ロボットの仕組みを説明しながら皆さんと動かしていきたいと思います。
まぁ、この間の番組中にボクのコーナーを見ていてくれた人はもう知ってるかもしれないけどね」
あちこちから知ってます、見てました! と言った声が上がった。
そんな群衆を静かにするためかゴホン、と咳払いが聞こえた後、司会者が口を開く。
「えー、特別ゲストのウシオリポーターがクローンボットと共にお越しくださいました。
説明も交えながら皆様にもぜひ動かしていただきたいと思いますので早速、順番にこちらへお並び下さい」
司会者が手で示した場所へ、皆がぞろぞろと列になり移動する。
マオとヤヨイは他の皆にならって列に加わった。
「ここにクローンボットがもう一台あります。
まず、このクローンボットはブレインスキャナーという人間の電気信号を読み取る電極がついた輪を頭につけて動かします。
いいですか、自分の手や足を動かしていると思って皆様の脳で考えてください。
そうすればいつも動いているようにクローンボットが動いてくれるという事です。
難しいようでしたら、ブレインスキャナーをつけて皆様が動いていただくと同時にクローンボットも動きだします」
司会の男の話を聞いた招待客が再びざわめき出した。
本当にそれだけで動くのか、頭に変な機械をつけても安全なものなのか。
会場からはそういった疑いの声が聞こえてくる。
「ご安心ください。新しいものを目にした時は誰しも期待と不安が入り混じるものでしょう。
なにせ、国内では我が社が初となるクローンボットお披露目会なのですから!
これは体の動かない方も、お忙しい方も自由に動くことができる自分の代わりになるものです。
商品化までにはクローンボット内部にAIを導入する予定ですので、学習を重ねれば皆様がブレインスキャナーをつけずとも簡単な行動……例えば買い物に行ってくれたり掃除をしたりするようになるモードも追加されます。
本日、ここにいらっしゃる皆様はその時代の先駆者となることができるのです」
自分の代わり、か。
なるほど。さすがは司会者、口が上手い。
忙しい自分の代わりをしてくれる、動けない人の為に動くことができる、時代の先駆者となれる。
どれもオイシイ言葉だ。
招待客達はそれならば、と喜んで頭にブレインスキャナーをつけることだろう。
そしてそれを商品化をすることで利益を出す。
もちろん都合の悪いことは一切表に出さずに、だ。
こうして企業がどんどんと儲かっていく手法は知っている。
しかし今回のお披露目会がそういった目的とは限らない。
少なくともこの場ではクローンボットやウシオに罪はないのだから楽しむべきだとヤヨイも感じているはずだ。
並んでいる列が少しずつ前に進み始めた。
群集心理が働いているのだろうか。
ひとり勇気のある招待客が最初にブレインスキャナーをつけてクローンボットを操縦すると、それを見た他の招待客が興奮しながら自分の順番を待っているのだ。
いつの間にか最初の疑いは殆どなくなり、寧ろ興奮しすぎなくらいに会場は温まっていく。
「ちょっと、今の見た!?
あの子、ウシオさんのクローンボットと抱き合ってる!!」
ヤヨイが口をヘの字に曲げて膨れ顔でマオに耳打ちしてきた。
どうやら1人だけ、違うところで温まっている者もいたらしい。
「別に、クローンボット同士で抱き合ってるだけだからいいじゃないですか」
「いえ、ダメね!!
いいなぁ。ワタシも早く操縦したい……」
マオのささやかなフォローにもヤヨイは釈然としない様子のようだ。
今、への字の口になっているヤヨイならウシオのクローンボットに何をするか分かったものではないので、呆れながらも一応釘を刺しておくにする。
「いくらクローンボットだからってヤヨイさんもああやって暴走したらダメですよ。
みんな見てますからね」
「あれ、マオちゃん……。
クローンボットだからって?
さっきと言ってることが逆な気がするんだけど!?」
「あれ、そうでしたっけ?
あ、ほら。次はヤヨイさんの番ですよ」
「もう。話逸らしたわね。
じゃあお先に行ってきます!」
マオの前に並んでいたヤヨイは怪しい笑顔で司会者が誘導するステージに登った。
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