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第59話 5人目の幹部

こんばんは^ ^


今日もまた投稿させていただきました。

また暇な時に読んでいただけたら嬉しいです!




 「明日、また学生向けの見学会と講演がある。

 カイ所長はそこで講師をする予定のはずだ」


 「それならラボの研究室を離れる時間がありますね。

 その隙に……?」


 「あぁ、管理センターに入る。

 カイ所長が見てないなら止めようもないだろう」


 「ユキトくんもなんだか情報屋らしくなってきたね!


 じゃあオレはその間、カイ所長の動きをしっかり見張っておくよ」


 「私も管理センターに入ります。

 ユキトさんひとりだと無茶なことしそうですし……」


 「そうだね。あとマオちゃんにはヤヨイサンのデスクを調べて欲しいんだ。


 あの人、大事なデータは大抵ユキトくんが作った隠しファイルか自前のUSBに入れてあるはず。


 でもキミたちはまだ()()を見ていないんだよね?」


 「アレって……?」


 「ふふっ、やっぱり。その様子だと知らないみたいだ。

 ならUSBに入れてるのかな。

 ヤヨイサンのデスクでUSBを見かけたら持ってきて欲しいんだよね」


 笑って誤魔化すクリオネにマオは首を傾げる。


 「何のUSBなんだ、それは」


 目を細めてユキトも尋ねるとクリオネはこう答えた。


 「これから切り札になるかもしれないUSBさ。


 悪いけど内容はまだ言えない」


 声のトーンを少し下げ、まるでこれ以上は聞くなと言わんばかりだ。


 マオとユキトは黙ってお互い顔を見合わせたのだった。


 

 同じ頃――――――――


 会場の片付けを女性に任せ、(サカキ)は長いこと電話をしていた。


 「はい、えぇ。

 申し訳ありません。喜美所長」

 

 「私は500人の被験者が必要だと言った。

 499人では話にならないな!


 AIが正確に演算する為には正確なデータが必要なのは分かっているだろう。あと1人足りない、君はいったいどうするつもりだ」


 「逃げた男性の顔は見ませんでしたが大至急、探すように手配いたします。


 なにぶん、このようなことは初めてでして……」


 「さっきから言い訳ばかりだな。聞き飽きた」

 

 「も、申し訳ありません……」


 電話でも分かるくらいの喜美の圧力に榊は押し黙る。

 いつの間にか額からはブワッと汗が噴き出していた。


 「今からその男性を探すのはあまりにも効率が悪い。

 まったく、プランBは順調に進んでいると言うのにプランAがこれでは…………」


 「すぐに代わりのものを探し出して、今日中にはデータを取れるようにします」


 「是非ともそうしてくれ。

 代わりのものがいなければ君でも構わない。


 例の同意書は既に提出済みだろう?」


 「……えぇ、そうですね、承知致しました。

 早急に対応します」


 震え声で電話を切った榊は「クソッ!」と呟くと壁に拳で何度か八つ当たりをする。

 

 そうして暫くその場に座り込んだ後、冷静になり

「少し出てくるから後は頼む」


 と女性に言い残してその場を離れた。


 外に出た榊は傍らに誰もいないのを確認して再び電話をかける。


 相手は喜美とは別の男性。


 声をひそめて電話口の男性に淡々と状況を説明するが、電話口の若い男性は至って相槌が適当である。

 あまり榊を快く思っていないようだ。


 「頼むよ、生天目(ナバタメ)君。

 同じ幹部の仲だろう?


 この間、君が連れてきて処理場に閉じ込めたふたりのうちどっちかで良いんだ。


 私に貸してはもらえないだろうか」


 「何度も言ってるでしょう。

 あれは喜美所長から連れてくるように依頼された被験者です。

 それを使おうだなんて正気ですか?


 まして片方はアルビノ、もう片方は脳科学者兼医療クローニング技術師。


 もちろん私も詳細は知らされていませんが、どちらも優秀で希少価値が高くプランBに必要なんです。


 プランAの責任者はあなただ。


 ならプランAで起きた問題はご自身で解決してください」


 「はっ! よく言うよ。

 優秀な遺伝子ばかり集めたところで脳みそひとつ、まもとに作れやしない連中のくせに」


 「お言葉ですけど榊さん。

あなただって被験者をきちんと管理できていないから逃げられるんです。


 だから代わりにこちらの被験者を貸してくれ、なんて都合の良いこと許されるはずがない」

 

 「いいか。あのふたりがエヴァンディール計画をどこまで知っているか突き止めたのは、()()5()()()()()()だ!


 そのおかげで今まで君が行ってきた非人道的な実験がまだ公になっていないのは分かるな。


 そして彼は以前、私の信頼できる部下だった。


 なら君はその上司に恩を返すべきなんじゃないのか?」


 無理やりすぎる屁理屈に生天目は一瞬、凍りつく。

 榊が何とかして失態を取り返そうとする様が痛々しい。


 「5()()()()()()ではなく正確には元幹部でしょう。

 彼は懲戒解雇されてもう居ないんですから引き合いに出されても意味はありません。


 それに非人道的なのはあなたも同じだ」


 「私? 私が??

 これでもトレースバースの実験は人道的にやってるよ。


 集まった被験者の多くが実験終了後には感謝の言葉を述べて帰っていく。それぐらいには人道的だ。


 皆、喜んでトレースバースを受け入れているよ」


 「相変わらず口だけは達者のようだ。

 そんなに信頼できるのであれば彼に頼むのが一番良い」


 「それは無理だ。

 喜美所長は彼のラボにエヴァンディール計画を知る者が他にもいると考えている。


 彼を手駒にして探させる気なんだろう。


 そうなると私が彼を動かす為には喜美所長の目とあのラボの連中の目、両方を誤魔化す必要がある。


 喜美所長の邪魔をして自分の失態を埋め合わせするのは本末転倒だ。


 そしてラボの連中からこの計画が公になれば喜美所長も彼も、君だってただではすまない」


 「それはあなたも、でしょう?」


 榊は生天目の質問に咳払いをして続けた。


 「とにかく彼に頼ることは避けたい。

 水乃くんは何を考えてるか分からないし……。


 生天目君の協力が必要なんだ」


 ため息をついた生天目は吐き捨てるように言う。


 「…………分かりました。

 もうすぐで今日が終わります。


 つまりそれまでに被験者となる人を見つければあなたは首の皮一枚繋がる、そう言いたいのですね」


 「あぁ、そうとも!


 私に貸しを作ったと思ってくれていい。

 ひとつよろしく頼むよ」


 「……それにしても喜美所長がまだ彼のことを気にかけていたなんて。


 得体が知れませんね」


 「彼もまた、問題はあれど優秀な人材だった。

 喜美所長はそういう人物を手元に置いておきたいのだろう」


 「例えそれが人殺しだとしても……?」


 生天目の次に続く言葉を榊は慎重に選んで答えた。


 「私は何も知らない。

 真相は闇の中だ」


 暫くの沈黙が続き、やがて生天目が電話を切る。

 

 榊は頭上の星空を何となく眺めて何事もなかったかのようにホテルへと戻った。

 

また読んでいただきありがとうございます。


いつも嬉しい感想や宣伝を皆様にしていただけるのでまた頑張ろうと元気が湧いてきます!!


本当に感謝ですᕦ(ò_óˇ)ᕤ


よし、明日からの仕事も頑張ってきます……笑


また続きを作成中ですのでぜひ読んでいただけたら嬉しいです!



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