第58話 第二の人生
こんにちは(^ ^)
お昼の合間にまた投稿させて頂きました!
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです♪
「こりゃいったい誰なんだ!?」
「ヨシダマサキ、だろうな」
「あの免許証の写真のやつか?
何でおれがこいつになってるんだ。
おれは……何処へいった!?」
「今頃は他のやつがあんたの身体を見て同じことを考えてるかもな」
「そりゃぁ、ねーぜ……」
公衆便所から戻ったリョウイチは混乱していた。
ユキトはリョウイチの質問に一通り答えた後、胸ポケットからタバコを取り出して火をつける。
「おれの第二の人生はヨシダマサキか……。
てっきり偽の身分証か何かを与えられて帰されるものだと思ってた。
まさか身体ごと取り替えられちまうなんて」
「それは残念だったな」
ユキトの言葉にリョウイチはフッと笑った。
「いや、そうでもないさ。
実際若返ったんだ。
こいつは金持ちみたいだし。
その……願ったり叶ったりってやつだな。
なんだか不老不死にでもなった気分だ」
「不老不死、か……」
確かに彼の言う通りだ。
これと同じことを定期的に繰り返せば不老不死も実現できるのかもしれない。
最もその方法だと、身体はずっと同じでいることはできないが……。
サカキの狙いは不老不死の実現、なんだろうか。
それがエヴァンディール計画にどう関わってくるのかがいまいち掴めない。
ユキトはため息をつき、タバコの火を消した。
「とにかくあんちゃんのおかげで状況も呑み込めたし。
この身体と金でまた一から会社でも起こしてみようかな。
名付けてリョウイチ•ペインティング株式会社だ!
これは儲かるぞ、ハハハっ!!」
「元の身体はどうする?
未練とかはないのか?」
「そりゃあ誰が使ってるのか興味はあるよな。
だからって今さらどうこうする気はない。
あんまり良い見た目じゃないし、こんなに若くはなかったし」
「でもあんたの身体を待ち望んでいた人だっているだろう。
なにせあのイベントは今までで500人は参加してるらしいからな」
「すげぇ……!
そんなにいるのか。
ならもしおれの身体を見つけたら声かけてみてくれよ。
あなたは良い第二の人生送れていますか? ってな。
そしてその結果をおれに教えてくれ」
ニヤッと笑うリョウイチにユキトは少し戸惑う。
当の本人が良いと言っているのだからこれ以上考える必要はない。
しかし本当にこのまま、身体が取り替えられたままで良いんだろうか。
考えたところでそれは今の俺たちにはどうすることもできない問題なのだが。
「分かった。呼び止めて悪かった」
ユキトは脳内の考えを振り払いそう答えた。
「おう。あんちゃんと話ができて良かったよ。
おれはもう行くぜ」
ベンチから腰を上げたリョウイチは公園を軽い足取りで後にする。
途中、思い出したように踵を返し笑って大声でユキトに告げた。
「あ、そうだ!!
リョウイチ•ペインティング株式会社、覚えといてくれよ。
あんちゃんの車塗装依頼なら喜んで引き受けるぜ!」
「俺はバイク乗りだ!!!!」
ユキトが大声で返すとリョウイチはそうか、と大口を開け笑って言う。
リョウイチが公園を離れた後、ユキトはまたタバコに火をつけた。
こんな話をした後だ、タバコでも吸わないと落ち着かずにはいられない。
「良いんですか?
ユキトさん。リョウイチさん行っちゃいましたけど」
それまで口出しをせずに成り行きを見守っていたマオ。
クリオネが共有した公園の監視カメラ映像と通信機の音声で話は一部始終把握している。
ユキトは彼女が言わんとしていることが何となく分かった。
「大体話は聞いたからな。
あの会場にいるよりずっと意味のある時間だった。
でもおまえも本当にこのままで良いのかと疑問に思ってるんだろう」
「そうですね……。
身体と脳がバラバラのまま生き続けるのは難しいと思います。
だってそれまでヨシダさんとして生きてきた身体を、今はリョウイチさんが使ってるって事ですよね。
その生活、周りの人が受ける印象、生きてきた環境とか全てが今までとは違うんです。
私には今の彼がヨシダさんなのか、リョウイチさんと呼べば良いのか分かりません」
マオは困った顔をする。
現に吃音混じりの話し方だったヨシダという男はリョウイチの脳情報を入れられたことにより吃音がなくなった。
それまでヨシダの周りにいた人たちは今までの彼とは違うことに驚き、疑問を持つだろう。
「うーん……。
確かに不便ではあるよね。
誤魔化すにも限界があるし……」
クリオネがポツリと呟く。
「だからと言って俺たちがどうこうできる問題じゃない。
後は第二の人生という甘い言葉に食いついた奴らの問題だ。
皆、良い方向に人生が進んでくれると良いんだがな」
全員が、というわけにはいかないのかもしれない。
ユキトは煙と共に息を吐く。
「それにしても第二の人生って言うぐらいならサカキも新しい身体と身分証を作ってあげれば良かったのにね。
そこに今まで生きてきた人間の脳を入れた方がよっぽど便利に生活できる」
そこでマオは初めて気がついた。
「新しい身体……。
もしかしてユーゼンが医療クローニング技術を必要としてるのはその為じゃないでしょうか?
新しい身体をまるごと作るのは違法ですけど、ユーゼンぐらい大きな組織なら簡単にできるはず」
「なるほどな。
ならこのイベントはとんだ茶番だ」
ユキトはタバコの火を消し、吸い殻をパンパンになった携帯灰皿に押し込む。
深まる夜の涼しい風が灰皿に伝わる微かな熱を冷ました。
「あるいは実験中なのかも。
トレースバースを試す為だけに違法行為を何度も重ねる訳にはいかないからね」
「そんな……。ひどい……。
みんな知らないでそれに付き合わされてたなんてこと…………」
クリオネの理に適った推測にマオは言葉を詰まらせた。
「そうだなぁ、事実を確かめなくちゃ。
餅は餅屋って言うしね。
いるじゃない。ユーゼンと医療クローニング、その両方に詳しそうな人が。
『医療クローニングの社会的有用性と今後の発展について』なんて大層な論文まで出してる」
クリオネがそう言うと、場には微妙な空気が漂い始める。
「……カイ所長、ですね」
「……カイ所長か」
マオとユキトがほぼ同時に声に出した人物。
もはや彼が何も関わっていないと考える者は誰もいなかった。
いつも読んで頂きありがとうございます(*´Д`*)
応援も嬉しい限りです!!
最近風が強いですね。
この間も歩いていた時に飛んできたビニール袋がずっと足にへばりついて取れませんでした。
ちょっぴり恥ずかしい笑笑
そんなこんなでなんとか生きています。
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