表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/164

第55話 ステージの上のペテン師

おはようございます(^^)


本日も投稿させていただきました!

また暇な時に読んでいただけたら嬉しいです。




 「おはようございます。

 如何ですか?

 第二の人生を迎えることができた感想は」


 「第二の人生って……。

 私が? 何も変わってないような気がするけど」


 頭に得体の知れない機械が刺さっていたとは思えないくらい女性は元気だった。


 寧ろ、先程よりも元気が良すぎる気がする。

 雰囲気が何か違うような。


 マオは女性とサカキのやり取りに違和感を覚える。


 「いえ、あなたは変わりました。

 私の質問に答えていただければ分かるはずです。


 まずどのような病を患っているのか、具体的に教えてください」


 女性は目を丸くしてこう答えた。


 「は? 病気……?


 私は普通に健康ですけど。

 強いて言うなら時間に追われるストレスを抱えているくらいですかね。


 毎日忙しくて……。

 1分、1秒たりとも無駄にしたくない。


 そんな考え方に疲れちゃって、このストレスから解放されたいとすら思ってる。


 でもそれこそ病気になって何も出来ずに人生を終えるくらいなら、やるべき事をやれる時にやろうと思う自分もいたりして。


 いっそのこと第二の人生を始めたら何か変わるのかもと思ってたけど、私変わりました?」



 「皆さん、彼女の言葉を聞きましたか。

 もう病に侵され苦しんでいたかつての彼女はいません。


 その証拠に今はこんなにも自信に満ち溢れている。


 彼女の願い。それは病を忘れ、余生を大切に過ごすことでした。


 トレースバースで脳の情報を書き換えたことにより彼女の願いを叶えることができたのです!


 まだ第二の人生が始まったばかりで記憶が混乱しているようですが、それは彼女が新しい思考能力と価値観を身につけて間もないからでしょう。


 今の彼女ならきっと1秒たりとも無駄にせず、余生を大切に過ごしてくれる!

 私はそう信じています。


 ご協力ありがとうございました。

 もうお帰りいただいても構いません」


 サカキが女性をステージから下りるよう促す。


 「ちょっと、え、私の願いは!?」


 女性は慌ててサカキの腕を掴んだ。

 その手をやんわりと払いサカキは小声で何かを女性に伝える。


 直後、女性は大人しくなり真っ青な顔で会場から立ち去って行ったのだった。


 「一体、何が起こったんだ。

 なぁ、アンタもアレをする気なのか?」


 状況が飲み込めず、ユキトは隣に座っていた恰幅の良い角刈りの男性に話しかける。


 「え、ボ、ボク!?

 も、も、も勿論だよ。


 そのために……き、君も来たんじゃないのかい」


 「まぁ、そうなんだが……。

 あんな得体の知れない機械をいきなり頭に刺されて黙っていられるか?


 ましてや、さっきと思っていることが180度変わってしまうなんてこと考えられないだろう」


 「かっ、管理人さんは、す、すごい人だよ!

 あれを頭に刺すだ、だけでぼ、ボクのきっ、吃音も治してくれるって、電話で……」


 「さて、次に"生まれ変わり"たい方はいらっしゃいますか?」

 

 サカキの呼びかけに角刈りの男性が手を挙げた。


 「あなたですね。

 どうぞ、ステージへ」


 「ボ、ボクは行くからき、君も早く、う、生まれ変わった方が良い」

 

 「あぁ、そうだな」


 会話の途中で角刈りの男性が席を立つ。


 吃音を治したいそうだが、あれはすぐに治るものではない。


 またこの席に戻ってきた時、それが完璧に治っているというのならトレースバースも偽物ではないのだろう。


 先程の女性はサカキと口裏を合わせていたのではないか。


 女性が自分の病気を忘れたという演技をしている可能性だって捨てきれない。少なくともユキトはそう考えていた。


 「よし、解析完了っと」


 「さっきから何してたんですか?」


 不意に発したクリオネの一言にマオがそう尋ねる。


 「サカキが女性に何か言ってたみたいだけど、声が小さすぎてマイクでも音を拾えてなかったからさ。

 何て言ったのか口の動きを読んでた」


 「別に何だって良いだろう」


 ユキトが言うとクリオネは間髪入れずに答えた。


 「良くないよ!

 あの人、サカキの言葉で顔色が真っ青になってた。

 

 口話はあんまり得意じゃないけどたぶん、『君の願いはとうに叶っている。すぐにストレスから解放されるよ』って言ってたと思う」


 「何だそれ、どういう意味だ?」


 「さあね。

 本当にトレースバースで新しい記憶と価値観を貼り付けられて、自分が病気だって忘れちゃってるのかな。


 で、受け入れて間もない脳の情報に戸惑う女性に向けた言葉がそれだった。そうだとしたら辻褄は合ってるけど……」


 マオはクリオネとユキトの会話を聞いているうちに、あるひとつの可能性が頭に浮かんだ。


 脳の書き換え、コピーアンドペースト、他の脳情報。


 急に背筋が寒くなる。


 「もしかすると私たち何か勘違いしてるんじゃ……」


 「何を?」


 「あの人は、もし自分が病気にならなかったらっていう"if"の記憶とこれまでとは違う価値観を脳内に入れられて第二の人生が始まったのだと。


 その頭の中は今までの自分の脳とトレースバースによって加えられた新しい情報で成り立っているものだと、そう思ってましたけど」


 「そうじゃないのか?」


 クリオネとユキトの考えをマオは静かに否定した。


 「いいえ。

 それよりも、もっと納得のいく考え方があります。


 例えばユキトさんの脳内にクリオネさんの脳情報を上書きできるとします。


 すると体はユキトさんのはずなのに人格も記憶も、性格も、好みも全てクリオネさんになってしまう」


 「うえぇ。なんか気持ち悪い。

 つまり姿は違うけどオレがふたりになるってこと?」


 「あのなぁ、俺だってお前みたいなやつ脳内の片隅にも入れたくない」


 まずい、このままでは言い合いになりそうだ。

 マオは慌ててふたりに弁解する。


 「ごめんなさい、今のは完全に私の例えが悪かったです」


 「だが仮にトレースバースがそんなことを実現できる道具だとして、あの病気の女性の脳情報はどこへ行ったんだ?」  


 ユキトの問いにマオは答えた。


 「トレースバースの中です。

 そう考えた方がしっくりきませんか」

 

 「なるほどなぁ、ちょっとぞっとする話だね。


 つまり第二の人生だなんだと言っておきながら結局はまるごと中身を他人に入れ替えただけ。


 本当にそうだとしたらサカキはとんだペテン師だよ」


 クリオネが吐き捨てるようにそう言った時、まるでその言葉をかき消すかのようにサカキがステージ上で嘯いたのだった。


 


 

 




 

 

 

いつも読んでいただきありがとうございます(^^)


一昨日から、2年前くらいに出てたシドの新曲を初めて聴いて中毒になりました笑笑


ずっと頭から離れなくて困り中……。


今日も電車の中で聞いて出勤するので二胡の音や「あの日のままで〜」ってサビが永遠に音漏れしてたらたぶん私です、すいません!!


評価•感想•ブックマークありましたら励みになります。何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ