第53話 無意識の表現
こんばんは(´∀`)
また投稿させていただきました。
ぜひ暇な時に見ていただけたら嬉しいです♪
真っ白い部屋。家具も壁も天井も全て真っ白。
その中で上から吊るされた照明の灯りだけが淡い黄色を放っていた。
部屋にはいつの間にか、ふたりの人物がいる。
クリオネとヤヨイだ。
お互い真剣な表情で口を動かしているが、何かを話している最中なのだ。
何を話しているんだろう。
意識をふたりへ向けると声が聞こえてきた。
「彼女、やっぱりまだ思い出せない?」
「仕方ないわ。
あれだけのことがあったんだもの。
ショックを受けるのも無理ないでしょ!」
「参ったなぁ。
彼女は全て知ってるはずなのに」
クリオネが困った顔で笑う。
「時間はまだあるんだから。
無理やり記憶を引っ張り出してはダメ。
ゆっくりでも少しずつ思い出してくれたら、それでいいじゃない」
色素の薄いブルーの眼差しがこちらへ向けられる。
ヤヨイさん!
よかった、生きていたんですね!!
そう言おうとしたが声が出せない。代わりに口から出てくるのは泡。その泡がポコポコと上へ登って溶けていくのだ。
ここは水の中……?
いや、大きなカプセルの中に水と一緒に閉じ込められている。
苦しいっ、溺れる!!
そう思った時、声が出ないはずなのに何処からか自分の声が聞こえた。
「早く。思い出して、思い出して、思い出して、思い出して…………」
マオはびっくりして飛び起きる。
今までそこにあったはずの白い部屋も、自分を閉じ込めていたカプセルと水も、全て目の前から消えていた。
クリオネとヤヨイももちろん、そこにはいない。
「夢か……」
なんともおかしな夢だった。
夢は無意識の思考を表すと言うが、水で溺れそうになる夢が意味するのは不安、不満、疲れか。
確かに疲れているのかもしれない。
シノミヤが2階の仮眠室に運んでくれたところまでは覚えているが、その後はぐっすり眠っていたようだ。
時計を見ると既に19時45分。
通信機が耳と服についていることを確認し、マオはクリオネに連絡を取る。
「あの……クリオネさん。聞こえますか?」
「マオちゃん!
おはよう。身体はもう平気?」
「平気です。ごめんなさい、私……迷惑をかけました」
「それぐらい気にしないでよ。
マオちゃんがサカキのPCを調べてくれたおかげで色々と分かったんだから。
あとはユキトくんに任せてオレ達はゆっくり見物してよう」
「ユキトさん?
そういえばさっきクリオネさんがオーシェントホテルに行くように言ってましたね。
もうすぐで約束の20時ですけど……」
「ふふっ。ちょっとマーライオンのヘソを見てみてよ、マオちゃん!」
「え……?」
マオは例のオカルト掲示板を携帯で確認する。
そこには先日と変わり映えのしないことが書き連ねてあったが、今朝の管理人からの発信はひと味違っていた。
『管理人:皆様のおかげでたくさんの経験、知識を得ることができ感謝しております。
貴方の脳を活性化させます!
第二の人生始めませんか?
突然ですが、本日20時に行うイベントをもちまして最後とさせていただきます。
本気で気になる方はお電話ください。
※スマートなコーディネートをお願いします。
ご協力いただきありがとうございました』
「見た?
実はユキトくんの名前を借りて電話しておいたんだ。
どうやら掲示板に書かれてる※の後が合言葉になってるらしい。
イベント会場に入る前に必要になるんだってさ」
「まさかユキトさんをこのイベントに参加させるつもりですか!?
こっちからの連絡は避けて、ユーゼンに見つかるリスクを減らすんじゃ……」
「そのまさか、だよ。
サカキのPCデータをまだ全て見たわけじゃないけど、彼は確かにエヴァンディール計画に同意していた。
この計画ってたくさんの人の思考やら記憶が必要になるんでしょ。
サカキがマーライオンのヘソを運営しているのはそれを集めるためだ」
「そうか、その方法なら不特定多数の人物に呼びかけることができる!」
「そう。サカキのPCデータ内には500までの番号が振られた人物リストがあって、その中にユキトくんが入っていた。
おそらくオレがユキトくんの名前でイベントに申し込んだからだろうね。
つまりユキトくんを入れたら今日で500人目、サカキ的にはこれで目標が達せられるってことなんじゃない?」
「何を基準にした目標なのか知りませんけど、マーライオンのヘソから集めた人達にサカキが何をしているのか知ることができるのは今夜が最後ってことですね」
「あたり。
調べるのはやっぱりハイリスクハイリターンだけどね。
オレとマオちゃんじゃあ気づかれる心配もあったしユキトくんに行ってもらおうと思って。それに……」
ユキトくんのダサいカッコってどんなのか見てみたいし。
いけない。こんなことをマオちゃんに言ったらふざけるなってまた怒られそうだ。
クリオネは喉元まで出かかったその一言を飲み込んで、手元の小型端末から映像を確認する。
事前にホテル周辺の監視カメラをハッキングしておいたものだ。
わざわざユキトのダサい格好を見るために。
「あ、ユキトくんが来たみたい!」
クリオネの言葉と共にマオの携帯が鳴った。
マオは自分の携帯を開く。
「映像、共有してあげる。
ぶははっ!!!!
ユキトくん見てあげてよ。
すごいカッコしてるよ!!」
クリオネは思わず吹き出したようだった。
そんなユキトはまさか自分が笑いものにされているとは知らずにホテルの前へやってくる。
クリオネに言われた通りダサい格好でこんなところまで出向いたが、これから何をさせられるのかは全く知らされていない。
「おい、ホテルの前に着いたぞ」
「あはははは!!
分かってるよ。でもなーに、そのカッコ。
キョーレツだなぁ」
「なんだと!?
お前がダサい格好で来いと言いだしたんだろう」
指摘されて改めて自分の格好が恥ずかしくなった。
こんなに馬鹿にされると癪に触る。
ユキトはクリオネが近くにいたら一発殴ってやろうかと思い、キョロキョロと辺りの様子を伺いだす。
「ざんねん!
近くにはいないよ……ふふっ」
クリオネはまだ笑っているようだ。
「クソっ!
後で覚えていろ」
怒った顔のユキトと想像を遥かに越えた理解のできない服装がマオの携帯にも映し出される。
「ユキトさん……何でこんな服持ってるんですか……!」
まるで時代に乗り遅れた海賊が着ているかのような黒い上着。その下に隠された梅干しのようにしわしわの赤いポロシャツ。さらにスパンコールが少量散りばめられた年代物のチノパンをゆったりと履いており、もはや何がしたいんだか分からない。
携帯に映された映像がいつの間にかポロシャツへ向かってズームされていく。
おそらくクリオネの仕業だろう。
どうやらポロシャツの中央にはワンポイントがあったようだ。
小さく明朝体のカタカナで書かれた『フライアウェイ』の文字が見えた瞬間、マオは笑いを堪えきれなくなった。
いつも読んで頂きありがとうございます(´∀`)
無意識のうちに自分を表現していることって、もしかするとけっこうあるのかもしれませんね笑
評価•感想•ブックマークもいつもありがとうございます!
また続きを書いてきますのでよろしくお願いします。




