第49話 アロマとアラート
おはようございます(*´ω`*)
今日も投稿させていただきました。
また読んでいただけたら嬉しいです!
再び戻ってきたユーゼンは夕日の光を受けてより一層、威厳のある姿で立っていた。
マオはコマイさんの変装をし直して、また建物へ入る。
今朝、シノミヤと最悪のご対面を果たした中央のホールからは何やらいい香りが漂っていた。
そういえば今朝も微かに同じような匂いがしたかもしれない。
ここまで濃い香りではなかったので気にも留めていなかったのだ。
甘く、さっぱりとした匂いに鼻をくすぐられる。
嫌いな匂いではない。
「なんの匂いだろう……?」
マオがそう呟くと、すぐ横で誰かの声が聞こえた。
「柑橘系のアロマだってさ。
いい時に帰ってきたね、マオちゃん。
これ、凄いよねぇ。
なんだか高級ホテルのロビーみたいじゃない?」
声のする方へ振り向くと、クリオネが相変わらず似合っていない警備服を着て横に立っていた。
「クリオネさん、ここで何してたんですか?」
マオの問いかけにクリオネは腕を軽くまわしながら答える。
「キミを待ちながら休憩中だったところ。
研究と警備のやりすぎは気分が張り詰めちゃうから、このホールでは定期的にアロマを焚いてるんだって。
建物を出入りする時に通る場所だから、いろんな人の鼻に残りそう。
基本的には緊張や怒りを抑える柑橘系の香りみたいだけど」
「へぇ。それはシノミヤさんにもぜひ嗅いでもらいたいくらいです。
でも匂いが苦手な人は大変そうですね」
「苦手な人は地下の出入り口を使って出入りしてるよ。例えばサカキサンとか」
「サカキってあの幹部の……」
「あたり。
この施設は地下にも出入り口があって1階と地下、その他フロアで空調が分かれてるみたいだから、地下に1階のアロマは届かない」
「凄い。人が嫌いな匂いまで調べられるんですか?」
「あぁ、それはさっき巡回の時に仲良くなった事務の可愛い女のコから聞いたんだ。
サカキは頑固で小心者。
変なところへのこだわりは徹底していて、例え死んでも曲げない。ちょっと変わった人だっていう噂と共にね」
シノミヤの手懐け具合といいクリオネは職業柄なのか人の懐、特に女の懐に入るのが得意のようだ。
マオは尊敬を通り越して呆れすら感じた。
「つまりアロマを焚いてる間、ここにいればサカキと鉢合わせることはまずない。
でもこのホールだって四六時中アロマを焚いてるわけじゃないし?
焚き終えて香りが完全に消えたらサカキもこのホールを通るかもしれない。だから今のうちに始めよう」
「始めるって何を?」
マオが咄嗟に尋ねるとクリオネはニヤッと笑う。
「今から合図したらサカキのPC識別番号を見てきて。
デスクのところのPCにシールがついてると思うから。そしてはい、これ」
クリオネは手早くマオにUSBメモリを渡して続ける。
「これをサカキのPCにつけてデータを抜き取ってきて。高性能だから3秒もあればPCの全データをここにコピーできる」
「そんな無茶な……!
私、お披露目会の時に一度サカキと会ってるんですよ?
変装しても会えばすぐ気づかれるでしょうし、そもそもサカキがデスクにいたら……ちょっと無理があります」
「それは心配ないよ。
キミはサカキとは会わない。
なぜならオレがサカキの行動を操るから」
「操る……どうやって……?」
「簡単だよ、こうするのさ!」
そう言ってクリオネは近くにあった非常用ボタンを勢い良く押した。
たちまちホールにはジリジリジリとけたたましい警告音が響く。
「ちょっと、何してるんですか!」
慌てるマオにクリオネは楽しそうなウインクをした。
それはもう、ホールにいた人々が揃いも揃って何事かと辺りをキョロキョロ見渡すくらいの事態だ。
そんな事態になっても、いやそんな事態の時こそ彼はいつも楽しそうだ。
「さぁ、これでサカキの行動パターンは限られてくる。
オレがサカキのいるフロアをカラにしてからがマオちゃんのオシゴト」
クリオネはマオの耳に付いているイヤホンを指でトントンと叩く。
「オレの合図があるまでここで待ってて。
合図したらすぐ階段でサカキのいるフロアへ。
オーケー?
必ず階段でね。
エレベーターを使うとサカキや巡回中の警備員とかち合うから」
「分かりました」
果たして本当に上手くいくのだろうか。
仮にもしクリオネがふたりいて、ふたりで実行するというのなら問題はないだろう。
今ひとつ自分に自信が持てないマオであったが、これはもう腹を括るしかない。
その頃、警備室では慌てふためく警備員たちの様子が窺えた。
「警備長、非常用ボタンが押されました」
「そんなこたぁ分かってるよ。
何処だ、何処で鳴ってる」
「確認中です」
「監視カメラの様子はどうだ」
「監視カメラ、異常見当たりません」
「非常用システム、エラーのためかボタンが押された場所が特定できません」
「なぜ突然システムエラーが?
火災感知器はちゃんと動いてるのか」
「正常には動いてますが、火災は感知されていません」
「なんだそれは。火事でなければ泥棒か悪戯か?
とにかくユーゼンのマニュアルに従う。
下層からエレベーターを使って巡回点検だ」
「泥棒だとすればまだ中に犯人がいるかもしれません。
出入り口、封鎖しますか?」
「よし、出入り口を封鎖する。配置につけ」
「了解!」
警備長は無線器を取り、手短に指示を出す。
「現在、非常用ベル作動中。
全警備員は配置につき、作動場所の特定と室内にいる全員に待機を要請」
「りょうかーい」
自分の腰につけた無線機から聞こえる警備長の指示に、クリオネは間伸びした返事で応答する。
「やっぱ予想通りの動きをしてくるなぁ」
手のひらに収まりきるくらい小型の端末を片手に、クリオネは走る。
その端末からは警備室の様子、音声がリアルタイムで確認できるのだ。
こんな事もあろうかと警備室に隠しカメラをつけておいて正解だった。
他の警備員が下層階へ急ぐ中、クリオネは指示に逆らって上へ登って行く。
この警備員たちが下層階から巡回し、中央のホールまで辿り着く時間はせいぜい5分。サカキのいるフロアまで10分。そこから上層階までは5分。
次にクリオネはマオの事を考える。
彼女はこういう事に関しては素人だ。
作業時間を伸ばすため撤退時に上層階を経由したとしても、20分で全て終わらせなければならない。
監視カメラの映像はすり替えた。
自分たちがサカキのいるフロアで何かしていてもそれは映らない。警備員連中に気づかれることはないだろう。
非常用システムもこの煩い警告音が止まれば全て正常に作動するようプログラムを書き換えた。
後は時間との闘いだ。
クリオネはこのスリル満点なゲームに密かに心を躍らせていたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます(ノД`)
最近、新しい話を書く時に前の話を見返したりするのですが誤字脱字に気がついてちょこちょこ直していってます……。申し訳ありません!!
その他誤字脱字に気がついた方おりましたらすぐ改稿させていただきますのでよろしくお願いします。
評価•ブックマーク•感想などいつもありがとうございます!
では、また最新話書きたいと思います。




