第47話 疑惑
おはようございます^ ^
47話、出来上がりました!!
また読んでいただけたら嬉しいです。
「著者……え、カイ所長!?」
タイトルの下にはカイ所長の名前がはっきりと書かれていた。
「カイ所長がその論文を出したのは4年間の空白期間中だ。
最初は俺も驚いた。
カイ所長が医療クローニングに携わっていたなんて聞いたことがない」
「私だって聞いたことがありませんでした。
カイ所長は脳科学をずっと研究している人だと思っていたので」
「そこが問題だ。
俺たちキーラボの人間はきっと誰もカイ所長が医療クローニングに携わっていたとは知らないはず」
「ということは、カイ所長はその事実を隠したかった?」
「さあな。
ただ単に話していなかったという可能性もあるが……いずれにせよユーゼンがこの論文の存在に気づけば、カイ所長に接触を図ろうとするだろう」
ユキトは深くため息をついた。
「カイ所長は医療クローニング技術を持っている。
明らかに喜美が食いつきそうなネタだな。
俺の親父のように何か恩恵を受けるためユーゼンに協力する事や、何かやむを得ない事情があってユーゼンに協力するしかないという事もあり得るわけだ」
「そんな……。
それじゃあカイ所長が内通者?
だって、ヤヨイさんと一緒にユーゼンの調査をしてたんじゃ……」
「この調査を始めてしまった以上、俺たちはユーゼンにとって邪魔者同然だ。
邪魔者を消すためにはその懐に入り込む方がいいに決まっている。
クソッ!!
ヤヨイは利用されたんだ!」
「でも……でも、カイ所長はっ!!」
マオは声を荒らげた。
カイ所長との思い出が頭の中を走馬灯のように駆け巡る。
常に周りのことを考えて冷静で、頼りになるカイ所長がヤヨイを利用するような真似はする訳がない。
いや、そう考えたくはなかった。
「今思えば、ヤヨイとカイ所長が一緒に調査をしていた時点で疑うべきだったんだ。
なぜヤヨイだけいなくなって、カイ所長は無事なのか。それはカイ所長が内通者だからだと考えれば辻褄が合う。
そしてヤヨイに何かあった時、調査を引き継げる人間は誰か、カイ所長はきっとそこも考えるだろう。
気をつけろ、俺たちもマークされているかもしれない」
「カイ所長が……そんな……」
狼狽えるマオの肩にユキトはがっしりと手を乗せた。
「しっかりしろ。
俺たちがやるべきことは他にも山ほどある。
カイ所長が俺たちの動きをどこまで把握してるか分からない限りは下手に動けないし、幸い向こうも俺たちに干渉してきていない。
今はこの状況を利用して俺たちが喜美やカイ所長よりも先手を取って動いていくしかないんだ」
ユキトの言っていることはもっともだ。
自分たちが関わっている調査はあまりにも大きい。
『それまでの生活には戻れなくなる』
ヤヨイが動画の中で言っていた言葉を思い出した。
元々、何が出てくるか全貌が分かっていない調査なのだ。何が出てきてもおかしくはない。
やはりこんな些細なことで一喜一憂していられないというわけか。
「すいません……私、ユーゼンに戻ります」
それだけユキトに告げた後、マオは重い足取りでキーラボを去っていった。
マオが去ったのと入れ替わりに別の研究員がユキトの姿を見つけて声をかける。
「あ、いた、ユキトさん。入口に来客がいるみたいなんですけど」
「来客だと?」
「えぇ。大きな帽子にサングラスをかけた女性で顔がよく分かりませんでしたが、ユキトさんを訪ねて来たって言ってます」
「なんだそれ」
ユキトはソファから立ち上がり入り口へと向かう。
全く今日は……。
アズマに絡まれ、ユーゼンに潜入したはずのあいつは戻ってくるわ、その次は怪しい来客か。
忙しいな。
ユキトは今日の出来事を振り返り鼻で笑った。
「急に押しかけてきて申し訳ありません。
本当はご自宅に伺ってお話しすべき内容だとは思いましたが……」
そう言ってユキトを出迎えたのは、聞いたとおりのの大きな帽子の女性だった。
女優帽、とでもいうのだろうか。
その帽子には決して似合わない大きなサングラスをかけており、小顔な彼女の顔がますますよく分からない。
「誰だ」
ユキトが短く尋ねると彼女は帽子とサングラスを少しだけ指で持ち上げる。
顔が見えた瞬間、納得した。
「あんた、ひょっとしてミコトか?」
その顔はテレビでよく見かける天才ピアニスト。と同時に、何故か自分の婚約者となっている人のものだった。
対面するのはこれが初めてかもしれないとユキトは考える。
帽子とサングラスをすぐ元の位置に戻すとミコトはこう言った。
「そうです。
我儘を言って恐縮ですが、あまり人目のつかない部屋に通していただけたら助かります。
私を知っている人物はこの中にも沢山いるでしょうし……」
ミコトは先程からキーラボの中を見たり、周辺を見渡したりと落ち着かない様子だ。
有名人は辛い。
周りにバレないよう秘密でここに来たつもりなのだろうが、被ってきた帽子とサングラスが間違いだった。
これでは逆に目立ちすぎている。
ユキトはミコトの気持ちを察してとりあえずキーラボの中へ、そして1番奥にある応接室へと通す。
「どうぞ」
ユキトが応接室の扉を閉めると、ミコトは帽子とサングラスを外した。
「ふぅ……。
ここまで来るのは大変でした。
いつもは運転手さんに送迎をしてもらうんです。
でもそれだと目立ってしまうかもと思って自力で来ました」
髪を整えている指が綺麗に手入れされている。
まるで彼女の想いが普段どれだけ演奏に込められているかを考えさせられるようだった。
それを見たユキトは少し胸が締め付けられる。
「で、何故ここへ来た?」
「単刀直入に言います、結婚の話です。
あなたとわたしの。
先日あなたのお父様から結婚は少し待ってくれと連絡がありました。
この結婚についてどう思っているのか、あなたの気持ちが知りたいんです」
「というと?」
「失礼を承知で言います。
もしあなたがわたしと結婚したくないというのであれば、この話は断ってくださって構いません。
あなたにわたしと結婚することのメリットが思い浮かばないからです」
どうやら俺と同じことを考えているらしいとユキトは思った。
向こうには俺とミコトが結婚することで親父がユーゼンから援助を受けられることが知らされていないようだ。
きっと親父もそんなことは口走らないだろうし、相手方も自分達のメリットは明かさないつもりだったのだろう。
このまま素直に結婚を受け入れればいいだけの話なのに、このお嬢様はわざわざ破談になるリスクを背負ってまでこんなことを言い出した。
ミコトの本心を探るべくユキトは静かに答える。
「悪いが、俺に断るという選択肢はない」
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