第43話 ユーゼンの七不思議
おはようございます(^^)
43話目、完成しました!!
ちょっと長くなってしまったかもしれませんが、ぜひまた暇な時間にでも読んでいただけたら嬉しいです。
「うわぁ、すごい!
本当にこれ、簡単に動かせちゃうんだね」
それ以上は言わないでくれ。とマオはクリオネに念を送った。
ブレインスキャナーを頭につけ、クローンボットを自由自在に操るクリオネを見てると少し悲しくなってくる。
自分だってこんなに動かせれば苦労しないのに。
「アリシマさん、ご協力ありがとうございました。
お陰でこれからの参考になりましたわ!
でも本当にこの事はくれぐれも内密に。
私とアリシマさん、ふたりだけの秘密ですからぁ」
シノミヤはまた例の猫撫で声でクリオネに念を押す。
私もこの場にいるのだが、シノミヤにはどうも見えていないらしい。
「ありがとう。
じゃあまたねー!」
クリオネはシノミヤに手を振りながら研究室を後にする。
今まで緩んでいたシノミヤの表情ガラッと変わり、鋭い声でマオに言った。
「いい?
アリシマさんを連れてきてくれた……というか、連れて来られてきてくれた事には感謝するわ。
でもね、アリシマさんは忙しい人なの。
だからあまり迷惑をかけないで頂戴。
それと、あの人は誰にでも優しい人なの。
あなたもちょっと優しくされたからって勘違いするような真似はやめてよね?」
「え……? はぁ……」
これで釘を刺した、という事なのだろうか。
警備員アリシマの正体なんてとてもじゃないけど言えないが、あの男だけはやめた方がいいとマオはそう思った。
「さて、ひとつ問題が消えた事だし。
少し休憩にしましょうか」
マオはその言葉を聞き、仕分けを行なっていたデスクへ戻る。
給湯室でインスタントコーヒーを淹れ、それをデスクでゆっくりと飲むと妙に溜まっているストレスも緩和されるようだった。
「どう?
シノミヤさんは。結構キツイでしょう」
そこへ先程の気の良さそうな研究員がそんなことをマオに話しかけてくる。
「いえ、まぁ……。
心配いただいてありがとうございます」
確かにシノミヤはまず、キーラボにはいないタイプの人間だ。
本来ならいえ、そんなことないですよ。なんて気の利いた言葉でフォローするのが新人として妥当な対応なのだろう。
だが今は敢えて経歴に見合う高飛車な雰囲気を出している最中だ。まぁ、これはあくまで自分のコマイさんのイメージなだけなのだが。
「いやぁ、コマイさん……だっけ。
すごい経歴の持ち主が来るって聞いてたんだ。
医療クローニングも勉強したみたいだね?」
興奮気味に喋る研究員から羨望の眼差しが向けられる。
「あぁ……まぁ……。
ユーゼンでは医療クローニング技術を応用した研究ってまだ行われていないんですね?」
これは少々鼻につくような言い方だったろうか。
いや、今私はコマイさん。なら仕方がない。
マオは申し訳なく思いつつも会話の中で探りを入れていく。
確か喜美は医療クローニング技術者と交流があるはず。
それがずっと頭の中に引っかかっていた。
「今のところ、そんなハイテクな研究はやってないと思うよ。
ここで最先端の研究と言ったらやっぱりクローンボットじゃない?」
特にコマイさんとしての言動を気にするわけでもなく研究員はそう答えた。
「そうですか……」
マオが相槌を打つと、別の研究員が会話の中に入る。
「それ、ユーゼンの七不思議のひとつだよなぁ。
ひとつ、最先端の研究と謳われるクローンボット。だが喜美所長は医療クローニングを使った実験を既に始めているらしい。ってやつだろ?
喜美所長が医療クローニング技術師と会うのを見ていた人がそう言ったとかって」
「あぁ、そんな話あったね。
随分と突拍子もない話だけど」
研究員同士の間にはそんな噂が出回っているらしい。
火のないところに煙は立たぬと言うが、喜美が多くの研究員に内密で進めている事が噂として伝わってきているのかもしれない。
喜美が内密で進めている事。
それはやはり『新人類』の研究なのだろうか。
だとすると、『新人類』に医療クローニング技術が使われている可能性が高い。
ユーゼンの七不思議を全て聞いてみる価値はありそうだ。
マオは推測を胸の内に秘め、こう尋ねた。
「何ですか、その七不思議って。あと6つは?」
「へぇー。コマイさん、そういうのに興味あるんだ。意外。
よし、残り6つも教えてしんぜよう!」
まるで仙人が長い顎髭をいじるかのような仕草をして、その研究員は続けた。
「ふたつ、幹部の誰かが熱狂的なカルト教。で、ユーゼンは知らない間にそのカルト教に取り込まれようとしている。
みっつ、右から3番目の仮眠室のベッドからはいつも加齢臭がする。
よっつ、この施設のどこかには兵器を作っている場所があって時々、機械の唸るような音が聞こえてくる。
いつつ、研究室のデスクにアメ玉を置いて誰もいなくなると、帰ってきた時になぜかアメ玉が無くなっている。
むっつ、クローンボットはイクシナ騒動後、感染症対策のために作られたロボット。表向きはコミュニケーションツール。でも実は世界中の人間から脳派データを集める目的で作られている。
ななつ、ユーゼンには亡霊が出る。その亡霊は…………」
突然、その言葉を遮るかのように研究室の電気がチカチカと素早く点滅して消えた。
「わっ、て、停電!?」
マオはすぐさまあたりを見渡す。
どうやらフロア全体が停電しているらしい。
いくら七不思議と言えど所詮、ただの噂話だ。
まさかこれが亡霊の仕業なんてことは……。
非科学的すぎるにも程がある!
そうこうしているうちに、何事もなかったように停電が解消された。時間にしてほんの数十秒といったくらいか。
パッと電気がついてほっとしたマオは、咄嗟に近くにいた研究員たちの顔を見る。
しかし、誰しもが落ち着いている。
その異様な光景に頭の中で疑問符が浮かぶマオだったが、それを打ち破るかのように中断していた話が再開した。
「ななつ、ユーゼンには亡霊が出る。その亡霊はいつもこのくらいの時間帯に停電を起こし、何かを訴えてくる。停電が解消された後には誰かの大切なものが無くなってしまうらしい。
って言う七不思議なんだけど、七つめは今みたく最近頻繁に起こるようになったから、もう誰も驚かなくなった」
「随分、ばかばかしい話をしているのね。
こっちとしては停電前に大方の仕事が片付いて良かった、くらいにしか思わないけど。
どうせ電力不足か電気系統の故障でしょう。
コマイさんをからかうと後で痛い目みるわよ!
さぁ、休憩時間はもうおしまい」
何処からかヒールの音と共に現れたシノミヤがピシャリと言い放った。
皆、それぞれが気だるげな返事をして仕事へ戻って行く。
「あーーーー!!」
そこでひとりの研究員が叫び声を上げた。
「なにっ!?」
不機嫌そうにシノミヤが反応する先を見ると、小太りのメガネをかけた研究員の肩がわなわなと震えている。
「ぼっ、ぼぼぼ……僕のチョコ饅頭が!!」
小太りの研究員の目線を辿ると、食べかけのお菓子がひとつ、床に転がっていた。
「コンビニ限定の……まだ一口しか食べてなかったのに!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ彼は、よっぽどそのチョコ饅頭とやらが大切だったのだろう。
「うるさい、仕事に戻って」
シノミヤの一喝でその研究員はしょんぼりとデスクへ戻ってゆく。
それを見たマオは噂話もやぶさかではないなと苦笑するしかなかった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
最近は仕事でトラブルが発生して残業の毎日……(*´-`)
書いてる時とバキのくれは先生見てる時が楽しみです笑
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