第40話 初めての潜入
今日も一日お疲れ様でした^ ^
エヴァンディール、また投稿させていただきましたので宜しくお願いします。
いざ、潜入!
――――また朝がやってきた。
マオはいつものように支度を整え、出勤の準備をして電車に乗る。
だが電車の進む方向はいつもとは違った。
そう、これから出勤するのはU-zen株式会社だ。
キーラボには暫く有給休暇を申請しておいたので、後はユキトが上手く誤魔化してくれるだろう。
問題は自分がコマイという人物になりきる事が出来るかどうかだ。
ユーゼンの最寄り駅で電車を降りるとマオはすぐさま化粧室へと向かった。
鏡を見ながらポニーテールを作り、それをウィッグの中へしまい込む。
後は無線通信機を耳に、小さなマイクを服に、縁なしの牛乳瓶のように厚いメガネをかけたら完成だ。
鏡の前にはセミロングでカールのかかったメガネ女子が立っている。
伊達メガネではあるものの、いまいちしっくり来ない。
誰だ、これ。
いつもとはだいぶ雰囲気は変わったが、それでも本物のコマイさんを知るものがあればそう思った事だろう。
さらにクリオネがこの姿を見たら腹を抱えて笑うはずだ。
マオは憂鬱な気分で無線通信機のスイッチを入れた。
「クリオネさん、聞こえてますか?」
「おはよう、マオちゃん。
ふふ。朝だけど感度良好だね。
準備はオーケー?」
この人が言うと、何だか別の意味に聞こえて仕方がない。ただでさえ憂鬱な朝だと言うのに。
クリオネの言葉に思わず目が冷ややかになる。
「とりあえずは。
でも本当にこんなチープな変装で大丈夫でしょうか」
「んー。
一応、履歴書の写真もマオちゃんに寄せて多少顔をいじってあるから」
「そうですか」
少し安心材料ができてほっとするマオ。
「あ、でも気をつけて!
もちろんユーゼンは幹部も普通に研究室へ出入りできる。
もしそのタイミングで幹部達と出くわしたらバレるかも……」
「え。じゃあ、出会ったらどうすれば……」
どうやらユーゼンには幹部と呼ばれる人たちがいるらしい。
そんな偉い人達が頻繁に研究室を出入りすることなんてあるのだろうか?
マオの安心材料が一気に崖から谷底へと落ちていった。
「もし出会っちゃったらなるべく話さない、顔を見られないようにする。
それでも、もしバレそうになったら潜入は中止。
全速力で施設の外へ走って逃げて」
「わ、分かりました!」
「頼んだよ」
危険と隣り合わせなのは間違いない。
だが、キーラボにはユキトが残った方が絶対に都合が良い。管理センターの勝手も分かっているだろうし。
クリオネは外で私たちの状況を確認して、得られた情報をパズルのように組み合わせる。
それをもとにこれからの行動を見極め、指示を出すのだ。
当然、自分にそんな分析能力はない。
クリオネもユキトも、ヤヨイも、コマイさんだってそうだ。
周りには優秀な人物ばかりで時々、何も出来ない自分が嫌になる。
だからこそ今は自分が出来ることをやるしかないのだと、マオは自分に言い聞かせた。
化粧室を出てユーゼンへ歩みを進める。
地上へ出ると、何平米もある広い敷地内に大きな建物がどんとそびえ立ちマオを威圧した。
外には守衛がふたりもいる。
その先には、まるで改札機のような機械が何台も並び行手を阻むのだ。
あの改札機に社員証をかざして通るシステムだろう。
もし何か不具合があれば、外にいる守衛に呼び止められることは間違いない。
ユーゼンに出勤する者は皆、その間を当たり前のように潜り抜け守衛に挨拶をしてそれぞれの持ち場へ向かうのが日常のようだった。
「到着しました。
これからユーゼンに入ります」
マオは服についたマイクに向かって小声で話しかける。
「分かった。堂々とね。
その改札機みたいなのを抜けたら中央のホールで待ってて。
お迎えが来るみたいだから」
「はい」
マオはクリオネの指示通り堂々と社員証を出して改札機へかざす。
お願い、通って!
ピピッ。
その音を聞き、マオは無事にユーゼンへ入れたとこに安堵した。
「おはようございます」
ひとまず守衛に挨拶をして中のホールまで進む。
特に不審がられてはいないようだ。
「と、通れました!」
安心した声でクリオネに伝えるマオ。
「当たり前でしょ。
本物の社員証だもん。
今のところはなりすましがバレてないみたいで良かったけどね」
クリオネはそんなマオの反応を見て若干楽しんでいるようだった。
少しの間マオがホールで待っていると、あるひとりの女性がこちらへ向かって歩いてくる。
カツカツとホールにこだまするヒールの音。
その音の主は、白衣を着こなし、長いブラウンの髪を後ろで結ってお団子にした妙齢の吊り目の女性だ。
「はじめまして。あなたがコマイさん?」
「は、はい。
よろしくお願いします」
「私はシノミヤ。今日からあなたの教育係だから」
コマイと呼ばれて少しドキッとする。
シノミヤと名乗る女性の声には棘がありハキハキとした口調から、マオはかなり高圧的なものを感じた。
「履歴書を見させて貰ったけどあなた本当にコマイさんなのよね?
何だか想像していた人物像とはかけ離れている気がするけれど……」
まずい、早速バレたのだろうか。
シノミヤが人を値踏みするような目でこちらを見ている。
マオは背中から冷や汗が流れるのを感じた。
落ち着け。今、自分はコマイという人物なのだ。
誰もが羨むような輝かしい経歴を持ち、自信に満ち溢れている。プライドもきっと高い人物であろう。
となると、シノミヤに返す言葉はこうだ。
「そもそもあなたとは今日が初対面ですよね?
なのにそんな値踏みするような目で見られても困ります」
その言葉を聞いたシノミヤはパッと意地の悪い笑顔を浮かべた。
「あら、ごめんなさいねぇ。
そんなつもりはなかったのだけれど。
ただ、あまりにもあなたが履歴書通りの経歴を持っているように思えなくて。
写真ではもう少し賢そうに見えたからかしら?
でも実際に対面してみると至って普通の、どこにでもいそうな平凡な子で安心したわ」
「随分と口が達者なようですが、あなたは研究者ではなく営業の方なのでしょうか?」
ふたりの間に静かな火花が散る。
早速、初日から上司らしき人に喧嘩を仕掛けてしまったようだがこの先、こんな嫌味な人が教育係で潜入に支障がないだろうか。
マオは少し心配になる。
「まぁ、いいわ。ついてきて頂戴。
早速あなたに仕事を任せたいの」
シノミヤは踵を返しマオについてくるよう促した。
マオもシノミヤの後ろを黙ってついていくことにする。
どのような仕事を任せられるか分からないが、まずは何とかユーゼンに入る事ができたのだ、それでよしとしよう。
だがしかし、マイクは音声をきちんと拾っていた。
会話の一部始終を聞いていたクリオネはよしとはならなかったようでボソっと一言、
「うわぁ。女ってこわっ!」
と呟いているのがハッキリとイヤホンに伝わってきたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
現在41話作成中です。
少々お待ちください。
ブックマーク•評価•感想がいつも大変励みになっています!(ありがたや〜)




